第16話(2)
忍者ロバスとヤタが地上に出ると、
ロバスは確認するように語った。
「ヤタ、
ミズとヌエにも声掛けを頼みます。
2体の巨大なゾンビを連れ去ったあの男、
何か事件を引き起こすやもしれません。
2人掛かりで奴を調べさせて下さい。」
「分かった。」
ミズとヌエ、ロバスの部下の呼び名だろう。
ヤタもそうだが、本名ではない。
本名を堂々と語れるのは上忍、
もしくはマスターという称号が得られた者のみだという。
ヤタたち3人のくノ一は御庭番に所属する実力者でありながら、
上忍には至っていないらしかった。
「あ、今日はもう遅いですから、
明日からでいいですよ。
しっかり休んで体調を万全にして下さい。」
「相変わらず過保護じゃな。
ミズはともかく、ヌエは怠け癖が倍化するぞ。
…ああ、そうそう。
ミズと言えば、ようやく訓練から解放されたらしい。」
「ああ!
そういえばケイトのお父さん、
ヴェスター殿の部署にいる方に指南してもらっていましたね。」
「あのミズが、あの女は正真正銘の化け物だとこぼしてたわ。」
「彼女は女王護衛団“白銀”の筆頭とは聞いていましたが…
ま、丁度良いですね。
その成果を見せてもらうとしましょう。」
朝。
ケイトがベッドから起き上がると、
黒猫フレイアはまだ熟睡していた。
いつもならあたしより早いのに珍しいわね…ん?
部屋の窓の四隅に呪符が貼ってある?
ドールが貼り付けたのかしらと思っていると、
コンコンと扉がノックされた。
「ケイト様、おはようございます。」
「あ、ドール。
この呪符って…」
「はい、昨晩何処かは分かりませんが、
大量の魔素流出を確認いたしました。
地下の錬金術工場にあります魔素タンクに無駄なく流し込む為、
少々フレイアにご協力いただいた次第です。」
それで爆睡してたのか。
どうせ大量の魔素を独り占めしようとして、
コッソリ起きたところをドールに見つかった
ってオチなんでしょうね。
「じゃあ今頃母さんは…」
「はい、かなり喜んでらっしゃいました。
呪われた土地の魔法街とはいえ、
あれだけの魔素を一度にかき集めるのは不可能でしょうから。」
母さんにかかれば、呪われた土地も大量の魔素も
素材の一つに過ぎない、か。
ヤダヤダ、おっかない。
ケイトはそう思いながらベッドから出る。
「ドール、朝食終わったら付き合って。
朝イチで王宮魔法陣…ポーラのとこに行くわよ。」
「かしこまりました。」
依頼してきたバーバラ婆ちゃんの話が本当なら、
エルフの国…マハラティーニ国の貴族に裏切り者がいる。
だけど、単に情報不足な理由で誤った判断をしていた可能性も
否定できないわ。
更に可能性を挙げるなら、国の組織と邪教集団ラハブ、
そのどちらも一枚岩ではないおそれもある。
つまり、どちらにも裏切り者またはスパイがいる。
もしくは一人で二重スパイしている奴がいるという事だ。
私はスージー魔法騎士団次席からの書面を見せてもらったけど、
書面は本当にあれだけだったのか、ポーラに問い質す必要がある。
もし、もう一部、別な組織からの書面があれば、
何かしら仮説が浮かび上がるはず…なんだけど。
「あまり良い仮説は期待できそうにないかなぁ。」
ケイトは身なりを整えると、独り言をボソッと言いながら
ダイニングキッチンに向かうのであった。
そしてケイトは朝食時に、
妹キャサリンから衝撃的な事実を聞かされる事になる。




