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第16話(1)

 深夜。

 当然の如く、ケイトは爆睡していた。

 そして当然だが、ケイトの部屋の窓は

 もちろん閉じられている。

 しかし机の上に置かれていた書物は、

 風を受けたかのようにパラパラと

 数枚めくれていった。

 黒猫フレイアは一緒のベッドには寝ず、

 その下に用意されている専用クッションの

 上で丸くなって寝ている。

 そのフレイアが、ゆっくりと起き上がり、

 フーッと大きく伸びをしたかと思うや、

 扉の下にあるフレイア専用の小さな扉から

 廊下に出た。

 廊下には人形娘ドールが立っている。

「フレイアも気付かれましたか?」

 フレイアは、小声でアーと短く鳴いた。

「念の為、家の周囲に結界を張ります。

 お手伝いをお願いいたします。」

 フレイアが後退りするように部屋に

 戻ろうとするが、途中で動けなくなった。

 人形娘ドールのスキル“人形使い”は、

 使い魔の黒猫にすら有効。

「お手伝い…して頂けますね?」

 言葉遣いは丁寧ながら、ノーと言えない

 圧を感じたフレイアであった。

 部屋から出るタイミングを見誤った…!

 地獄の黒猫も、この家の者たちには敵わない。

 人形娘ドールは尚更に。


 人形娘ドールと黒猫フレイアが

 感じ取っていたのは魔素と呼ばれるものだ。

 魔素が溜まり、

 人や宝石などの石に宿ると魔力と呼ばれる。

 簡単に言えば魔素は魔力の元なのだ。

 ちなみに宿った石などを特殊な外殻で囲うと

 コア(核)と呼ばれる物になる。

 人形娘ドールの身体にはコアがあるし、

 黒猫フレイアが身体に宿す魔素の量は

 人の数倍はある。

 だから外部に存在する魔素には敏感であった。

 魔法使いでもない一般国民が大量の魔素を

 浴びると、途端に具合が悪くなる。

 眩暈、吐き気、食欲不振、下痢、発熱など、

 症状は多岐に渡り厄介だ。

 だから一般的に『魔素流し』という結界を

 張り、家に溜まらない様にするのである。

 だが、それはあくまでも

 一般的な回答に過ぎない。

 少なくともこの家は魔法一家。

 一般的な結界で済ませるわけがなかった。


 その魔素は4番の宝物庫から溢れ出ていた。

「ギャアアアアアア!!!!!!」

 若い男たちの断末魔が地下に響く。

 追い剥ぎ共がお宝欲しさにやって来た結末は

 全員即死。

 レックス(恐竜)に匹敵する、瞬発力のある

 突撃は“あの姿”になっても可能なのか。

 忍者ロバスとヤタの2人が息を呑む。

 それは、アンデッドと化した巨大アリクイの

 おぞましい姿であった。

 まるでドラゴン・ゾンビ。

 それも2体いる。

「どうするのじゃ、殺るのか、あれを。」

 ヤタの声にロバスが頷いた時、

 妙な気配が突如として増える。

「お客が1人、増えたようです。」

「ぬ…人…か?」

 そこそこ長身でスリムなシルエット。

 右手には営業用の鞄を持つ若い男は、

 ロバスとヤタの存在など意に介さぬ感じで

 呪文を詠唱しだした。

「な、なんじゃこの言霊は…

 これはまるで…!」

「封魔術ですか。」

 王国内ではケイトの妹キャサリンを含め、

 7人しかいないと言われている封魔術。

 その詠唱が終わると、突如として

 2体は何処かへと消え失せた。

 ヤタが思わず一歩前に出て叫ぶ。

「なんじゃ貴様!

 今、何をやりおった!!」

 すると若い男はヤタとロバスに向かって

 丁寧に一礼し、マントを翻したかと思うと

 一瞬で消え失せていた。

 …いや、地面に木彫りの人形が落ちている。

 ロバスはゆっくりと近付いてそれを手に取り、

 ボソリと呟く。

「“身代わりの術”…いや、

 “転移の依り代”ですね。」

 ヤタがそれを聞き蒼白と化す。

「なんじゃと?

 それは我ら忍者の秘術じゃぞ!?

 それをなんであんな若造が…!!」

「ヤタも十分若いでしょう。

 …もしかしたら、魔法使いなどの魔道具

 (マジックアイテム)に似た物があるかも

 しれません。

 明日、ケイト殿に確認してみましょう。」

「魔道具…

 まさか玩具屋が絡んではいまいな?」

「それは無いでしょう。

 その点も含めて確認してみますが…」

 語っていると、また別の気配が近付いてきた。

「む、3人…いや4人か?

 ずいぶんと息が上がっておるようじゃ。

 盗賊の類とは思えん足取りじゃな…。」

「ちょうどいいですね。

 ヤタ、この場を離れますよ。

 死体の後処理は彼らに任せましょう。」

「そうじゃな。

 場所が割れた以上、

 ここはいつでも調べられる。」

「ヤタには明日、ここではなく、

 別に調べておいてほしい事があります。」

「8人目の封魔術師がいるかどうかじゃろ。」

「ええ、未登録者となればモグリ。

 外部からの入国者なら、入国手続きに

 申請しなければなりません。

 国際法にも引っ掛かります。

 皇王の陣が管轄している

 入国管理も当たって下さい。」

「…ああ。

 ワシらを舐めくさった青ガキの正体を

 引き釣り出してくれるわ!」

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