転生したらダンジョンだった。退屈なので入ってきた冒険者を実況中継する
続・転生したらダンジョンだった。退屈なので入って来た冒険者を実況中継する。
前作『転生したらダンジョンだった。退屈なので入って来た冒険者を実況中継する。』
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の続きです。
ダンにちわ〜!!!さて今回もやっていきます、転生したらダンジョンだった男がお送りするダンジョン攻略生実況、略して『ダン生』!
世間的にはもう真冬らしくってね、ここエインフェリナスも一歩外に出ると大吹雪で視界ゼロなんですけども、そんな天気の中やってきた命知らずどもがいたわけです。
一体何が彼らをダンジョンへと駆り立てるんでしょうね。機会があれば聞いてみたいものです。
さーではそんな感じで本日もやってきましょう!
『だんなまッ!』(バンク)
さ、と言う事でまずは挑戦者紹介のお時間です。今回はなんと二人組ですね〜。やはりパーティの人数は戦力に直結しますからね、これは相当腕に自信アリって事ですよ。
それでは早速見ていきましょうか。一人目はこの方!
(テッテレテー)
でかぁあああいッ!見上げるような巨体を板金鎧に包んだ半巨人族の重戦士!『黄金門』のカーク!
巨人族は大地の精と縁深く、その巨体と怪力、再生能力で以て前衛最強とも噂される種族です。加えて彼は二つ名の由来でもある黄金の魔剣から力を引き出す事で、飛躍的な能力向上が可能ッ!まさに最強の槌であり盾!今宵はどんな活躍を見せてくれるのか!?早速ですが意気込みをどうぞ!
「あー寒みッ。俺こう見えて末端冷え性なんだよね〜」
て言うかこっちの声聞こえてませんね!ハイ次!
青白い肌を覆うのは虹を反射する美しい鱗、腕や脚の一部からは鰭。手にした三叉鉾からは常に水が滴り落ちる。水棲人の女魔闘士!『水流紋』のシュッケ!
うって変わって、水に適応した種族ですね。海中に棲まい、その一生を水の中で過ごすと言われますが、稀にこうして地上で生活する者が現れます。彼女達はいざ戦いとなれば槍と水魔法を自在に操る、恐るべき魔法戦士となるのです!それでは聞こえてないですかこちらも意気込みをどうぞ!
「………?カークよ、今なんぞ言うたか?」
「末端冷え性って言った」
あれ?ちょっと聞こえてる?魔法の適正高いし、水中で意思疎通出来るし、テレパシー的な感覚器官を備えてるのかもしれませんね!
それではダンジョン攻略生実況、今回はこのお二人で始めていきます!
『だぁ〜んなまッ!』(バンク)
さ、という訳で今回は第十二階層からお送りします。第十二階層は『天壌焦がす焔の赤窟』。その名の通りここは火山洞窟の様相を呈しています!蟻の巣穴のように広がる洞穴と、至る所に存在する亀裂から吹き出す灼熱の炎が冒険者達に牙を剥きます!
狭い洞窟内ではカークの大剣が邪魔になり、高熱の炎はシュッケの水を蒸発させる!この二人には分が悪い勝負に見えますが、果たして挑戦者、どうやって切り抜けるのか!!炎上必至の迷宮攻略、スタートぉおおおォッ!!!
ぶぉおー(脳内法螺貝)
さあ始まりました!赤々と照らされた洞窟内にまず姿を現したのは半巨人のカーク!少々肩身を狭そうにしながらも落ち着いた表情です。続いて暑さに辟易とした表情のシュッケさんも登場です。
おや?早速ですがシュッケが何やら呪文を呟いて鉾を一振り、これは水流障壁の魔法ですね。二人の周囲を透明な水の膜が覆います。これで暑さも不意の炎も防ぐ算段ですね。これは地味ながらクールなプレイですね。さあ隊列を維持したまま二人が歩を進めます。
戦闘力は問題なさそうですが斥候職の不足をどう埋めるかが肝になりそうですね、おやカークさんが何かに気付いたようで足を止めて注意を促します。おおっとォ!踏み出そうとしていたその一歩先の地面が突如弾け飛んだ!これは《溶岩線虫》だ!半巨人にも引けを取らない太さの大蚯蚓、その表面は岩石の如し!地面を突き破って奇襲を仕掛けてきたようです!
しかしそこは大地の民であるカーク、しっかりと察知していたァ!さて奇襲失敗した溶岩線虫ですが、伸び上がったその巨体をそのまま二人に叩き付けようと———「《水流破》!」———ここでシュッケが鉾を突き出して短縮詠唱、大量の水流が破城槌のように溶岩線虫を打ち据えたぁ!!たまらず仰け反るその隙をカークは見逃さない!黄金の魔剣を一閃!!これは素晴らしい!光の軌跡に沿ってあの巨大な溶岩線虫が一刀両断だぁ!!!
ピピィーッ!!!(脳内ホイッスル)戦闘終了ッ!
戦闘時間僅か6秒!しかもかなりの余裕を持った試合運びでした。さすがにこの階層に二人で挑戦するだけの「格」をお持ちですね〜、カークだけに!ガハハ!!!
………さ、気を取り直して探索再開ですね、見ていきましょう。意気軒昂に歩みを進める挑戦者、ここで第一チェックポイント、炎の大河に到着だ!
道が崖によって途切れ、下は炎の海。何の準備もなければここで引き返す事必至な自然のトラップ!さぁこれをどう越えて行く!?
おやこれはカークが黄金剣を崖の手前に突き刺して何やら詠唱していますね………
「我ガ後方二退路ナシ 我ガ前方ニ道ハ有リ………《大地成形》!」これは黄金剣に秘められた魔法を解放したようですね!この大剣、大地の力を宿しており地面や岩に干渉する能力を持っているとの事です!
今回は地面を操って即席の橋を作ったようですね!まさに地に足の付いた対処法と言えるでしょう!さあ挑戦者、安全に橋を渡りますが———そうは問屋が卸さないッ!!
下に流れる炎の河より一斉に飛び出したのは火焔海老!全身のバネを活かして高く飛び上がり、甲殻の隙間から炎を吹き出しながら回転する様はファイアボール!!逃げ場のない橋の上の獲物達に、無慈悲に襲い掛かるゥーーー!!!
いや、これは挑戦者、一歩も引かない!?大剣が描く光の軌跡が複数の火焔海老をまとめて薙ぎ払い、鋭く繰り出される三叉鉾が二人に直撃するコースの海老だけを正確無比に貫いていく!数えるのも馬鹿らしい程の火焔海老を、斬り下ろし、突き上げ、薙ぎ払い、打ち下ろし、斬り上げ、貫、おおっとォ!ここでシュッケが被弾!火焔海老の一匹が、吹き出す炎により空中で軌道を変えた模様です!大きくバランスを崩したシュッケが橋から足を踏み外し、炎の海に真っ逆さま———にならない!掴んだ!咄嗟に大剣を手放したカークがその手首を辛うじて掴みました!しかしここで動けない二人に火焔海老が殺到していく!さあどう切り抜けるッ!?
おっとここでカーク、シュッケを掴んだ腕を大きく振って「どおおおおおォォォッせいッ!!!!」な、なななんと、投げたぁぁぁあ!?その怪力で以て一気にシュッケを対岸まで放り投げました!!
目標を見失った火焔海老が虚しく一瞬前まで彼の居た場所を通り過ぎて行きます!さあこの隙にカークも大勢を立て直し、一気に走り出した!攻めの手が薄くなった状態で大丈夫なのか、いや対岸から安全圏を確保したシュッケによる《水弾》の援護だ!火焔海老近付けない、火焔海老近付けないーッ!!!
そして、今———渡り切りました!第一チェックポイント通過ァアア!!!
いやーヒヤっとする一瞬もありましたが上手くリカバリーしました。一瞬の判断が生死を分ける、まさにダンジョン攻略の醍醐味ですね!
………おや、渡った先で挑戦者、小休止するようです。せっかくなのでズームしてみましょう。貴重なお話などお伺いしたい所ですね!
「やれやれ、一瞬ヒヤっとしたぜ」
「すまぬ、世話をかけた。この階層ともなると一瞬たりとも気を抜けぬな」
「おう。さっさと『火蜥蜴の心臓』を手に入れてお館様の所に戻ろうや」
「そうさな。お館様に掛けられた永久氷棺の呪い、我らが解いて見せようぞ」
おやおやおや、お二人の目当てはこの階層に出現する『火蜥蜴』のようです!永久氷棺と言えば犠牲者を決して溶けぬ氷の棺に封じ込める上位の呪術、彼らの主君がその呪いに侵されているという事でしょうか。なるほど氷の呪力と相反する火の精霊力を持つ『火蜥蜴の心臓』であれば呪いも解けるやもしれません。それが外の大吹雪の中彼らがやってきた理由という事ですね!素晴らしい主従愛、是非成就して頂きたいものです!!
さあインターバルを挟み、まもなく第2チェックポイント、蒸気孔地帯に到着です。見上げる程の大きな空洞の床から壁面まで、いたる所に口を開けた亀裂から定期的に高熱の蒸気が吹き出している危険地帯!しかし厄介な事に、この先に進む為の通路はこの無数の亀裂の中に一つだけ!間違えて進もうものなら大火傷は免れません!観察力と判断力が試される!
———おおっと!シュッケが迷いなく亀裂の一つに歩みを進めて行きます、判断が早いッ!躊躇なく覗き込んでいますが蒸気が怖くないんでしょうか………おっとカークも疑問を持った模様ですね、彼女に何やら話し掛けています。
「おいシュッケ、ここはあの湯気みてえの出て来ないのか?」
「此処もそうじゃが、幾つか水の気配を感じぬ穴がある。そのどれかが正解の道筋と見た」
「なるほどなぁ、湯気って事は元が水か、お前ェそういうの分かるもんな」
「湯気ではなく蒸気じゃ痴れ者」
「大して違いねェだろうが。………ちなみにココ、外れだぜッ!!」
うわビックリした!
ご覧下さい、カークが言葉の途中で亀裂に大剣を突き入れました!ゆっくりと引き抜かれた大剣には串刺しになった蒸気蜘蛛!高温の蒸気をモノともしない特殊な甲殻を身に纏う大蜘蛛ですが、今回は飛び出しそうとした所にカウンターを貰った形ですね。
そう!この蒸気穴地帯では、蒸気の噴出する亀裂と、この地帯に生息する彼ら蒸気蜘蛛の巣穴の二種類を判別していく必要があるのです!時間を掛ければ突破は可能、しかし探索に時間を掛ければ他のモンスターの襲撃リスクも高まります!さあどうする、いや迷わない!シュッケが蒸気孔かどうかを判断し、カークがモンスターの亀裂の中に潜む気配を探る連携プレーで、次々と不正解の道を暴いて行く!これは好タイムが期待出来るかぁーッ!?
開始5分でまもなく9個目の亀裂、おっと二人共足を止めた、正解のルートを見付けたかぁ!?顔を見合わせて頷くと亀裂の中に身を躍らせました!二人の姿が闇の中に消えて行きます、果たして結果はッ!?
『ダンナ゛マ゛ァッ!!!』(バンク)
さあここでcameraを移しましょう、ここは蒸気孔地帯を抜けた先、炎の海に突き出た岩場の上、通称『炎の舌』です。何を隠そうここが十二階層の最終ポイント、次の階層への道が続く場所でもあり、階層主である火蜥蜴が待ち構える決戦場でもあります!
挑戦者のお二人が正解の道を引き当てていれば間もなくここに到着しますが果たして———
———キタァァァァァアア!!!
陽炎のように揺らめく熱気を掻き分けて、金色の光を宿すは『黄金門』カーク!蒼い煌めきを放つは『水流紋』シュッケ!二人の勇士がこの決戦場へと姿を現しました!
対するは第十二階層『天壌焦がす焔の赤窟』の階層主!『溶岩火蜥蜴』!眼下に広がる炎の海より、その身を躍らせる!
岩場の上に降り立ったその異様、皮膚は赤熱した岩石、血の代わりに溶岩が流れ、吐き出す吐息は灼熱。またこの個体は階層主という事で通常の倍以上のサイズを誇っています。金冠を戴くに相応しい巨体ですね!
さあ二人はこれにどう挑むのか!?最終局面の火蓋がいま、切って落とされたぁ!!!
仕掛けたのはカークです、黄金剣を手に大地を駆ける!黄金の光の軌跡を描きながら溶岩火蜥蜴の前脚を切り付けたァ!
しかしこれは浅いか、溶岩火蜥蜴の硬質な皮膚に弾かれて十分な威力が出なかった模様です、紙で指先を切った程度の痛手しか与えられていない!いやでもそれ地味に痛いな!?溶岩火蜥蜴も同じ思いだったのでしょうか、煩わしそうに切られた前脚を横薙ぎ、カーク後退してこれを避けるが、避けきれない!リーチの差が響いています!咄嗟に大剣でガードしたようですが派手に吹っ飛ばされましたね、勢いのまま後退するカークをシュッケの《水弾》が援護します、さあ両陣営距離を取って一旦仕切り直しか。
おっと今度はシュッケから動いた、これは十八番の《水弾》か、いやしかしその数が今までの比ではない!十、二十、たくさん!数え切れない程の水の弾丸が彼女の周囲に浮かび上がります、これは《多重詠唱》、しかもとんでもない練度だ!危機を感じ取ったか溶岩火蜥蜴、大きく口を開け灼熱の息を吐き出した!炎の奔流が挑戦者達に迫る、これを《水弾》で相殺するのか、いやカークが動いた!地面に黄金剣を突き刺す、大地が隆起、壁となって炎を横へと流して行く!防ぎ切った、灼熱の息が途切れたのを見計らってカークが壁を解除、そして同時にシュッケの《多重水弾》が解き放たれたァッ!!!
百は越えようかという水弾が溶岩火蜥蜴を滅多打ちにしていく!溶岩を宿した高温の皮膚と水弾がぶつかり合い、凄まじい水蒸気が上がる、そしてなおその中に水弾が撃ち込まれていくッッッ!!!
やったか!?
さあゆっくりと水蒸気が晴れ、その中は———健在!溶岩火蜥蜴、その四本の脚を踏み締めて悠然と立っています!良く見れば皮膚の温度が下がったのか、赤熱していた皮膚は今や黒い地肌を晒しています、しかしそこまでだ!溶岩火蜥蜴の肉体には何ら痛痒を与えていないようです!一体どうすればこの怪物を倒せるのか!?
ん?そう言えばカークの姿が見えませんね、一体どこに………いや溶岩火蜥蜴の脚元だ!水蒸気に紛れて接近、大きく振りかぶっ黄金剣を再び前脚へと叩き付け———こ、これはぁぁぁッ!?溶岩火蜥蜴の前脚が、まるで硝子細工のように粉々に砕け散りました!!!たまらずバランスを崩した溶岩火蜥蜴!そこに容赦なくカークが追撃を加えていくゥ!これはアレですね、一度熱した石を急激に冷やすと割れるとか何とか言うアレですね!あの最初の一当てでここまで戦術を立てたのでしょうか、まさしくCOOOOOOL!!!
ここからはもう完全に挑戦者のターンか、カークが巨体のあちこちを割り砕き、着実にダメージを与えていきます。溶岩火蜥蜴が苦し紛れに炎による攻撃を仕掛けるが水術を駆使するシュッケによってダメージを最小限に抑えられてしまいます!こうなると成す術もなく———カークの渾身の一撃を額に受け、溶岩火蜥蜴の巨体が地に沈みました!いまフィニッーーーーシュッ!!!
ピピィーッ!!!(脳内ホイッスル)戦闘終了ッ!
戦闘時間………3分29秒!長いようで短い、短いようで長い、そんな戦いでした!溶岩火蜥蜴の身体は魔力に分解され塵となって消えていく、そこに残ったモノこそが眩い赤光を放つ宝玉、火の魔力の結晶たる『火蜥蜴の心臓』だぁぁぁぁぁあ!
無事に目的の物を手に入れた二人がハイタッチで健闘を称え合っています!そして長居は無用とばかりに帰還の巻物の魔力を解放、その姿が転移の光に包まれ消えて行きます!あらためてお二人の勝利と、彼らの主人が呪いから解放される事を祈りまして、皆様大きな拍手を!!!
(パチパチパチ)
それでは次の挑戦が現れるまでしばしのお別れ、深魔虚宮エインフェリナスは新たな挑戦者をいつでもお待ちしております!!!See you Next Abyss!!
二人のご主人はやんごとなき血を引くお方で、名前はミド=ブライトヘイヴン。一人で兵士八人分の働きをする『八兵衛士』の他、『風車』『銀華』といった異名を持つ面々とお忍びで世直しの旅をしています。