プロローグ
まだストーリーは序盤の序盤です!
いつもと同じ夢の中だった。だがオリエッタはその日、自分が転生者であることを知った。
そしてこの世界が『エデルの恋人』という乙女ゲームの世界であることも。
オリエッタの生きた国は『日本』と呼ばれる国だった。彼女は山田律花としてそれなりに平穏に、楽しく毎日を過ごしていたと思う。
彼女は小学校の教師、、、のはずだ。だがオリエッタに律花の教師としての記憶はなく、どうして死んだのかも分からない。思い出すのは家族、友達との記憶、そして彼女が生前まさにプレイしていた『エデルの恋人』というゲームだった。
ゲームの説明だが、結論から言うとクソゲーである。攻略対象者のビジュの良さに一時人気を集めたもののあまりの酷さに精神を病んだ者がいたほどだ。
ゲーム自体は普通の乙女ゲームなのだが、攻略対象が酷い。メンヘラ、暴君、どう考えてもまともに恋ができない相手ばかりなのだ。
攻略対象が酷い乙女ゲームなど恋愛ゲームではない。なぜなら攻略したいと思わないからだ。そもそも会話がまともに成立しないのにどうやって攻略するというのだろう。
それでも律花がゲームを続けられたのは、ひとゆえにこのゲームのプレイキャラであり、攻略対象の愛を一手に引き受ける主人公リエルがあまりにも尊すぎたからである。
(いや待て、、、なんであの子はあんなにも可愛いんだ?!小動物かなにかの類なのか?にしても尊すぎる。もはや天使では??いやだめだ天使だとしたらどこかへ飛んで行ってしまうかもしれない。
ふわりと漂う金の髪は彼女の神々しさとを示し、緩やかにウェーブを描いて彼女の方にかかる。柔らかな金の瞳は優しさを示し、彼女が振り向くと花が咲いたように場が華やいで、彼女が涙を流す姿は見知らぬ人でも思わず声をかけてしまう儚さがある。傲慢でわがまま、深紅の髪に黒の瞳、儚さなどかけらもない妖美な体に笑み、誰もが彼女を恐れている。まったく、悪役令嬢も彼女を見習って欲しいものだ。)
そこまで考えて律花は気づいた。
このゲームの悪役令嬢の名はオリエッタ・エバンヌ公爵令嬢。他でもない彼女自身であるということを。
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「ぬぁっ?!」
まったく、ひどい寝覚めだ。
「、、、お嬢様。お風呂の準備をしております。本日は薔薇でよろしいでしょうか?」
「いいえ、、、柚子がいいわ」
「、、、柚子?恐れ入りますが柚子とはなんでしょう?」
オリエッタは柚子が何か知ってる。だが柚子がこの世界にないことも知っていた。まて、この世界とはなんだ?別の世界があるのか?
「?!?!?!」
オリエッタは全て思い出した。昨夜の夢の内容も、自分が何者であるかも。当たり前だが柚子なんて存在しないことも。だがまだ頭は混乱していた。
(律花は私、オリエッタも私。ここはゲームの世界。私は悪役令嬢。悪役令嬢は、、、死ぬ。死ぬってどうゆうこと?!とりあえずこの場を切り抜けないと不審がられてしまうわ。ここはナチュラルに誤魔化さないと。)
「、、、ごめんなさい忘れて。薔薇でいいわ。ありがとう。」
その瞬間、侍女は雷にあたったかのように固まった。
(待って全然ナチュラルじゃなかったっぽい。なんであの子はあんなに驚いてるの?!)
「、、、お嬢様。今、ありがとう、、、と? 待ってください、それよりごめんなさいとおっしゃいました?!」
「え、ええ。」
「なんと?!奥様と旦那様に報告をしなければ!!!奥様ー!!旦那様ー!!」
そう言って何故か侍女は一目散に走ってどこかへ行ってしまった。なぜか目を潤ませながら。
(なにかやらかしてしまったのかしら。)
お嬢様って難しい。
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