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魔女の秘薬

作者: 木崎 咲

本編

N「故郷である鞍馬の者に認められるために、ある薬を求めて旅をするカンラとその従者。彼等はある町で魔女の存在を知った。

人間がダメならば魔女だ。そう考えた彼等は情報を集め、魔女の所在を掴むことに成功した」


カンラ「ここが、町で聞いた魔女の住む家か」


従者「町からそう離れていませんでしたね。しかしこれは、本当に人が住んでいるのでしょうか?」


カンラ「家が半ば木と同化してるな。魔女の家らしいじゃねぇか」


従者「……なるほど。そう捉えることもできますね。何にせよここで13件目。今度こそ、『あの薬』ができると良いですね。カンラ様」


カンラ「ああ。……中に入るぞ」


SE扉の開く音


カンラ「噂の凄腕の魔女―――プラシェイヴってのはお前だな?」


魔女「な、何の事でしょう? ……こほん。ノックもなしに入るなんて非常識な方達ですね。貴方達は」


カンラ「作って欲しい薬がある」


魔女「……は? 薬?」


カンラ「ああ。空を飛べるようになる薬だ」


魔女「……はぁ? いや、そんなの作れるわけがないじゃない」


SEお金の詰まった袋が置かれる音


従者「ここに金貨が50枚あります」


魔女「作りましょう!」


従者「そうですか! ありがとうございます」


魔女「ええ。この凄腕の魔女プラシェイヴに任せなさい!」


カンラ「それは心強いな!」


従者「いや~、どこの薬屋行っても『そんなものはない』と追い返されてしまいましてね。ほとほと困っていたのですよ」


魔女「早速隣の部屋で調合に入るわ。ただし、絶対にこの扉は開かないこと。良い? 絶対だから。絶対よ!」


扉閉まる。


カンラ「流石は凄腕の魔女だ」


従者「調合方法……。カンラ様。知りたくありませんか?」


カンラ「……扉を開かなきゃ良いんだよな? 窓くらいあるんじゃねぇか?」


従者「………流石はカンラ様。では、行きましょうか」


魔女視点に。


魔女「あああぁぁ。ど、どうしよう……。作るって言っちゃった……」



魔女「そもそも、何で私が魔女ってことになってるのよ。明らかに放置されてた空き家があったからお邪魔してるだけなのに。私だって、お金があればちゃんとした家に……お金……お金か……」



SE じゃらじゃら



魔女「フフフフフ。凄い。本当に全部金貨だわ」


魔女 (モノローグ)「これだけあれば、もうそこら辺の草とかキノコとかじゃない。普通の食事だって……」


SE、木の枝が折れる音


カンラ(off)「あ」


魔女「あ」


従者 (off)「どうしました? カンラ様」


カンラ(off)「バレたわ」


SE窓を開ける音


魔女「見るなって言わなかった?」


カンラ「あー、えっと……」


従者「ええ。貴女は扉を開けるなと言いました」


魔女「ええ。そうね! ちゃんと言ったわよね!?」


従者「ですので私たちは、扉は開けていません。貴女の提示した指示には従っています。扉を開けず、中を覗いただけです。何も間違ったことはしていません」


魔女「…………屁理屈って知ってる?」


従者「ハハハ。何のことやら。ところで魔女様。薬は? こうして中を覗いて見たところ道具も見当たりませんが?」


魔女「覗くなって言ってるのに……。はぁ。まだよ。いくらなんでも気が早いんじゃない?」


従者「おや。そのわりには金貨を見る余裕があったようで」


魔女「な、何の事かしら~」


従者「……右手に金貨を持ったままですよ?」


魔女「こ、これは……そう! 金貨が本物か確認していたのよ。ええ。詐欺だったら堪らないもの」


従者「正真正銘。全て金貨ですよ」


魔女「そのようね」


従者「ですから、薬をお願いしますね? 凄腕の魔女である貴女にとっては余裕なのでしょう?」


魔女「え、ええ。薬なんて余裕よ余裕! 夕方前にはできるわね! 何せ私。凄腕の魔女様ですので」


従者「それは良かった。もし『やっぱり作れません』なんて言われたら、貴女を消すところでした」(冗談っぽく笑いながら)


魔女「え"」


カンラ「流石だな! 期待してるぜ!」


魔女「……も、もちろん。ハハ……。えっと、念のためにもう一度言いますが、絶対に覗かないでください」


従者「理由を聞いても?」


魔女「その……。こほん。薬の製作に影響が出るからよ。空を飛ぶ薬だもの。調合だけじゃなく環境や状況も整える必要があるの。もし次覗いたら……」


カンラ「覗いたら?」


魔女「の、覗いたら……。な、何か、凄いことが起こります!」


カンラ「何っ! どんなことだ!?」


魔女「えっと……。こ、ここら辺が、空の彼方へ、飛んでいく……とか?」


従者「ほう?」


魔女「う、運が良かったんですからね? もしさっき私が作り始めていたら、今ごろみんな星になっていたんですからね!」


SE窓とカーテンを閉める。


魔女「……け、消すって何? え? どうなるの?」


以下魔女の妄想

魔女「お薬作れませんでした(笑)」


従者「そうですか。貴女は約束を守れない悪い魔女だったのですね。悪い魔女なら討伐しなければなりません。ね? カンラ様」


カンラ「そうだな! 悪い魔女は滅ぶべきだな!」


魔女「え?」


カンラ「やっちまうか!」


従者「やっちまいましょう」


カンラ・従者「「ハハハハハハ」」


N「かくして、人を騙す悪の魔女は討伐されてしまうのでした」

妄想終わり


魔女「まずいまずいまずいどうしようどうしよう。消されるって、殺されるってことよね? とにかく、な、何でも良いから、作らなきゃ。……何で私は夕方前にできるとか言っちゃったかなぁ!」



時間がとんで、夕方



魔女「完成したわ!」


カンラ「おお! ついにできたか!」


従者「流石は凄腕の魔女ですね。それで? 実物はどこに?」


魔女「……こ、これよ」


SE。小瓶を置く音


従者「……見る角度で色が変わる。……ドロッとしたきも……不思議な液体ですね。何をどうすればこのようなものに……」


魔女「いろんな雑そ……薬草とかキノコをレッドブ……あ、赤い牛のエキスに入れて、煮込んだものです。あ。か、簡単に言えばね! 過程はけっこう、その、ふ、複雑ですからね?」


カンラ「今は作り方より薬の効果だ。早く試そうぜ」


従者「そうですね。この場で試しても?」


魔女「えぇっ! っとぉ。外でお願いします」


従者「あぁ失礼。飛ぶんですから、当然外でしたね。いやぁ、私も興奮が押さえきれていないようで、お恥ずかしい」


魔女「あ、あはは……。そ、それじゃあ薬は渡しましたので、私はこれで……。(あ。念のため(小声))薬の効果には個人差が―――」


従者「せっかくですから魔女様にも見てもらいましょうか」


魔女「―――あります、の……でぇ?」


カンラ「それは良いな。作った本人がいれば万が一もねぇからな!」


魔女「ちょっ。それだと私逃げら―――ぅぐぇっ!?」


カンラ「しゃあ! 行こうぜ!」


魔女「ちょっ! 引っ張らないで~」



魔女 (モノローグ)「あああぁぁ~。薬渡したら出てこうと思ってたのに……どうしようどうしよう」


従者「あの小瓶の中身を全て飲み干して良いんですね? 私達に大抵の毒物は効きませんが、食べられない物を入れたりは?」


魔女「え? ど、毒? いえ、ないわ(……たぶん(小声))」


SE瓶を開ける


カンラ「うぐっ。……匂いすげぇな」


魔女「味も酷いんじゃないかな~。あはは……。ま、まぁ。良薬は口に苦しとか言いますから。……む、無理して今飲む必要もないですからね?」


従者「もし何かあったら、魔女様の責任ですね~」


魔女「え。ちょっと待っ―――」


ごくり。とカンラは薬を一気飲みする。


魔女「ああああぁぁぁ……」


カンラ「ぐっ。ぉ、お、おおおおお!」


従者「お、おや? 苦そうですね。カンラ様ー。大丈夫ですか~!?」


魔女「……あ、これチャンス? 今なら誰も見てない。いける! 逃げられる!」(小声)


カンラ「……あぁ。行ける! 今なら、飛べる!」


魔女・従者「「……はい?」」


カンラ「は、ははははは。やった。やったぞ! ついに飛べた! 飛べたんだー!」オフ 大声


従者「えぇ~……。(っと、いけない、いけない(小声))こほん。いや~めでたい。ついに念願が叶いましたね。いや~長かった」


魔女「…………うそぉん」


従者「いや~流石は凄腕の魔女。素晴らしい成果です」


魔女「……え、あ、はぁ。ど、どうも?」


従者「ところで、あの薬もどき―――失礼。秘薬に名前は付けますか?」


魔女「……うぇっ!?」


数日後。カンラ達が住んでいる町。


カンラ「魔女の薬はすげぇな。あんなに悩んでいたことが一発で解決だ。これでようやく認められる……」


従者「えぇ。これで誰も文句は言わないでしょう。主人は立派な大人になりました」


カンラ「ああ。これで俺も――― 一人前の天狗だ」


カンラ・従者「はははははは」


カンラ「そういや。あの薬。名前は何て言うんだ?」


従者「あれに名は無いそうですよ。必要でしたら付けても良いと」


カンラ「じゃあ。偉大な名を付けようか」


従者「どのような?」


カンラ「魔女の名だ。秘薬『プラシェイヴ』」


従者「フフッ。ん"んっ……失礼。実に良い名かと」


N「カンラは空を飛べるようになった過去を語る時、必ずかの薬の効果を話す。プラシェイヴの効果である、と。実物を確認したものは当事者しかいなかった。


魔女の名は後に訛りながらも薬の効果の名として現代にも伝わっています。


プラシーボ効果と」


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