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出来上がった婚約破棄がこちらになります

「アニエス・バフェット!お前は公爵令嬢という立場を利用し、卑しくもイザベラを学園内でいじめていたことはわかっている。そんな女は私の伴侶にふさわしくない!婚約を破棄する!そして私の新しい婚約者としてイザベラを迎えることとする!」


 賑やかだった卒業記念パーティーは、エドモン王子の発言により一気に静まりかえった。


人々の目は名指しされた艷やかな銀髪の少女へと一斉に向けられた。


(・・・ああ、≪彼≫の言っていた通りになったわ。殿下、こんな記念すべき日に婚約破棄を宣言するなんて。あなたは本当に私が嫌いなのね)

友人との歓談を楽しんでいたアニエスだったが、無表情で声の主へと振り返る。


そこには王族の証である金髪をきらめかせながらも、アニエスを憎悪に満ちた目で睨みつけるエドモンがいた。

そして エドモンの隣には、ローズピンク色の髪をした儚げな少女が寄り添うように立っている。

 いかにも小動物のような雰囲気の少女イザベラ・ウィンターズは、エドモンに護られるように抱き寄せられ、アニエスを怯えた目で見つめている。


その姿を冷ややかに見つめながらアニエスは頭痛がする頭をおさえた。


「…殿下、大変申し訳ございませんが、今なんとおっしゃいましたか?見に覚えのないことを言われた気がしたのですが」

「はっ、白々しいぞアニエス!お前がイザベラに行ってきた証拠はすべて揃っているぞ。この悪女め!お前は知恵は回るようだが、この私から隠し通せるとでもおもっていたのか。愚かな女だ!」

「本当に見に覚えのないことを言われても何も言えませんわ…」


 公爵令嬢として、王子の婚約者として規律と節度を学園で一番守ってきたと自負できるアニエスにとっては侮辱でしかない。

思わずため息が出てしまったのだが、エドモンはその姿が癪に障ったようだ。


「あくまでもしらを切るつもりか。忘れているならば、私が教えてやろう!お前はイザベラが自分より位の低い男爵令嬢だからと毎日のように暴言を吐いていた!また、夜会では私がイザベラに送ったドレスを貶してワインをかけたこともある!更にはイザベラを階段から突き落とし、怪我を追わせた!……さぁ思い出しただろう?このような悪行を行っておいて忘れたとは言わせぬぞ!」

「いえ全く見に覚えがないです。わたくしではありませんね」


たしかにエドモンの婚約者として、イザベラに礼節を求めたことはある。

しかし、それは貴族としての当然の常識でしかないのだ。

あまつさえ王子の婚約者として貴族の手本となるべきアニエスが、人に手をかけるようなことは絶対に行わないと学園の誰もが知っていることだ。


 周囲もエドモンの発言を聞き、ざわめいていた。

アニエスの普段の立ち振る舞いを知っている貴族たちは彼女に対して同情的になっている。

 むしろ婚約者がいるにも関わらず、男爵令嬢と節度のない関係を持っているエドモンと、一国の王子に対しての礼節のない男爵令嬢のイザベラに冷ややかな視線が集まっていく。


しかし、そんな場の雰囲気を無視するようにエドモンの腕に抱かれながらイザベラは涙を浮かべて叫んだ。


「ひ、ひどいです!アニエス様どうして嘘をつくのですか!?今ここで私に謝ってくれたら許してあげるのに!」

「イザベラ様、わたくしは貴族の礼節を説いたことはありますが、いじめなど行っておりません。バフェット家の名誉に誓って否定いたしますわ」

「嘘よっ!アニエス様は私がエドモン様に愛されているのが妬ましくて私をいじめていたじゃない!エドモン様に愛されないからってひどいわっ」

「かわいそうなイザベラ!あぁ泣かないで。私が君を守るよ。私が愛しているのはきみだけなのだから!」

「エドモン様!私も愛しています!」


イザベラは堪えられないと言うようにエドモンの胸に顔を埋める。

エドモンもイザベラを守るように強く抱きしめ返していた。


(本当になにこれ。つまらない劇を見ている気分だわ)

 二人だけの世界に入ってしまった姿にアニエスは呆れながらも、ホールの隅でずっと様子を伺っていた協力者の《彼》に合図をした。


そろそろこの茶番を終わらせる必要がある。


「う、ううん」

周囲を置いてけぼりにしながら絶賛メロドラマを堪能中の二人に向けて 、咳払いをするとエドモンに呼びかけた。


「エドモン殿下。要件を纏めるとわたくしとの婚約は破棄し、イザベラ様と婚約を結ぶということですわよね?」

「ふん、大体はあっている。しかし、お前は自分の罪は認めぬのか。忌々しい女め。」

「・・・・・・・・」


(いや、やってないことを認めるとかありませんから。馬鹿なの?)

アニエスは思わず心の中で毒づく。


二人だけの世界に横槍を入れられたエドモンは不満そうにアニエス睨みつけた。

「父上には私から話をするので問題ない。その際にお前の罪も話しておこう!追って処罰は通達するので待っているがいい。せいぜい己の罪を反省しているんだな」


やりきった感を出しながら声高々に言うエドモン。

そしてエドモンに抱かれながらもイザベラもニヤリとアニエスを笑う。

2人からしたら、アニエスという悪女を力を合わせて打倒した感動的な場面なのだろう。

彼らの思い描く未来はハッピーエンドになっているに違いない。


2人を冷静に見つめながらアニエスは告げた。


「そのお話なのですが、こちらで準備済みでございます」

「は?」

「え?」


ポカンとする2人をよそにアニエスは続ける。


「エドモン様がわたくしを疎んじていたことは昔から存じています。そしてわたくしとの婚約破棄について計画していたことも存じておりました。ですので…」


合図を受けてアニエスの隣に立った《彼》から手渡された書類をエドモンに差し出す。

≪彼≫はニヤリと笑うがエドモンたちに話しかけることはなく黙ってアニエスの傍に立つ。

金髪の≪彼≫の登場にエドモンたちや周囲がざわめくが気にせず続ける。


「わたくしの方で皇帝陛下と貴族院に話を通しておきました。すでにわたくしとエドモン様の婚約は破棄されておりますのでご安心くださいませ」

「なんだと!?」


≪彼≫の登場に呆然としていたエドモンは慌てて手渡された書類を確認すると、そこには『婚約破棄同意書』と記されていた。

すでに婚約破棄同意書には婚約者双方の両親である皇帝と公爵のサインがされており、貴族院の認定も受けている。

そして婚約破棄同意書と共に2枚の用紙が手渡されたことに気づいた。


「これは・・・婚約認定書と爵位贈呈決定の通達・・・?」

「左様でございます。長年婚約者として共に過ごした殿下へ、わたくしからのささやかなプレゼントでございます」


そこにはエドモンとイザベラの婚約を認めると記されていた。

しっかりと皇帝のサインも書かれている本物だ。


「殿下はわたくしに『愛嬌と面白みのない女。せめて王子の婚約者として、常に役立つように気を配り、役に立て』とおっしゃっていましたよね?10歳から婚約者となり、殿下のお役に立てるよう公務も代わりに努めてまいりましたが、わたくしでは力不足だったようですね。わたくしたちは政略結婚のために婚約をしました。しかし、いつかは殿下と穏やかな関係になれるかと期待していました。将来を共にする唯一のお方として殿下を慕っておりましたが、それも無駄なことでした・・・」


 途中で声が震えてしまい、言葉に詰まってしまった。

幼いころからエドモンに『政略結婚の相手』として邪険にされているのを知っていた。

それでも、物語で見るような情熱的な愛情はなくても、いつかはお互いを尊重しあえる関係になれるのではないか。

エドモンのサポートをして、役に立ち、彼と会話を重ねていけば関係が改善されるのではないかと期待をしていた。


だが現実は冷酷だった。

エドモンは学園で出会った天真爛漫なイザベラに惹かれ、婚約者としての務めすらも果たさなくなった。

そしてなお、エドモンはアニエスに面倒な公務は押し付け、イザベラと華やかな世界を楽しんでいた。


贈り物なんて一度ももらったことはない。

アニエスの誕生日がいつなのかもエドモンは覚えていない。

パーティでエスコートされた回数は片手で足りる。

アニエスはエドモンに利用はされても尊重されたことは一度もなかったのだ。


今までのずっと抑えていた感情が思わず吹き出しそうになり、目じりに涙がうっすら浮かぶ。

その姿を隣で見ていた≪彼≫はアニエスの肩を抱き、優しくたたくと囁いた。


「アニエス嬢。大丈夫ですよ。みんなあなたの味方です」

「・・・王弟殿下。ありがとうございます。」


アニエスを支えてくれる≪金髪の彼≫―――アラン王弟は愚かな甥であるエドモンを静かに睨みつけていた。

アラン王弟に支えれながらアニエスは言葉をつづけた。


「わたくしはエドモン様のお役に立てなかった。だから最後だけでもエドモン様に喜んでいただきたかったのです。この国でエドモン様とイザベラ様の結婚に異議を申し立てるものは誰もおりません。お二人は永遠に一緒に過ごすことができるのです。決して分かれることもなく。・・・エドモン様、わたくしはエドモン様のお役に立てたでしょうか。」

「アニエス・・・」


イザベラを抱きながらエドモンは複雑そうな顔でアニエスを見つめていた。

少しはアニエスに対して情が動いたのだろうか。


だがエドモンの口からでた言葉は違った。

「・・・余計なことをしたな。お前が手配しなくても、私が父上にしっかり話を通せた!お前は私がこの程度のこともできない人間だと侮っていたのだな! どうせ父上に話すときにも同情をひくように伝えたのだろう。卑しい女が」

「エドモン!」


エドモンの言葉はアニエスの心に冷たい刃となって突き刺さった。

アラン王弟が咎めるがエドモンは続ける。


「叔父上は黙っていてください!珍しくパーティに参加していたと思ったら、こんなことに付き合っていたのですね。叔父上はご存じないかもしれませんが、アニエスはイザベラを苦しめていた悪女なのですよ!叔父上は騙されているのです!この女は外面をごまかしているにすぎません!さらに、まるで私が無能のように余計なことをして・・・心の中で嘲笑っているのです!」

「いい加減にしろ!エドモン!!」

「アラン王弟殿下。もう大丈夫です」

(もういい・・・エドモンに対する心残りはなくなった。完膚なきまでこの2人は堕ちてもらうわ)


エドモンの言葉にかすかに残っていた情も消えたアニエスは、2人を見据える。


「話がそれてしまって申し訳ございませんでしたね。エドモン殿下。もう一つの書類についてもお話しておきます。それは皇帝陛下よりエドモン殿下へ男爵位を贈呈されたことの通知書でございます」

「なっ!?」


それは結婚後に皇太子になるはずだったエドモンに対する廃嫡宣言だった。

さらに通常、皇室の人間が継承権を放棄した際には公爵・侯爵になるのが通例である。

しかしエドモンは、通常では考えられない貴族の中でも一番地位の低いとされる男爵の爵位が与えられた。


今まで空気と化し事の成り行きを見守っていた周囲の貴族も思わずざわつく。

「エドモン殿下が男爵位に・・・!?」「前代未聞の事態だろ」「それってエドモン殿下は後継者として・・・」「皇帝陛下が見捨てられたのですの?」


確定していた皇位継承者が男爵に封じられるという一大スキャンダルに貴族たちはひそひそと話しながら事の成り行きを見守っていた。


「なおエドモン殿下は北の辺境の一部を領地として治めることとなりました。北には敵対国家が接していますが、辺境伯もいらっしゃるのでご安心いただけると思います。・・・以前の小競り合いで未だ領地の一部が焦土となっておりますが、才能あふれる殿下なら復興できると信じておりますわ」


更にエドモンが与えられた北の辺境は人が碌に住むことができないといわれている土地であった。

辺境伯が尽力してきたおかげで少しずつ復興してきている地ではあるが、まだ切りつめた生活を送る他ない土地である。

今まで帝都で華々しく暮らしてきたエドモンにとっては決して住みよい地ではないだろう。


「最初は色々大変かもしれませんが、イザベラ様も一緒にお過ごしいただけますので、きっと幸せな生活になりますわ」


(公務はわたくしに押し付けるくせに、いつも自分の力を過信していたエドモン殿下。これからが楽しみね)


アニエスは薄く笑いながらエドモンを見つめる。


男爵位に封じられ、北の辺境へ移ることの決まったエドモンは顔色が悪くなり声を出すことができずに立ち尽くしていた。


しかし、今まではエドモンの腕の中で震えていたイザベラが突然かな切り声を上げると、アニエスへつかみかかろうとした。


「どうしてエドモン様が男爵になるのよ!!おかしいじゃない!?エドモン様はこの国唯一の王位継承者なのよ!?」

「っイザベラ!どうしたんだ急にっ!?」

「イザベラ様、落ち着いてくださいませ」


突然のことに呆然とするエドモンだったが、慌ててイザベラを抱きしめて抑えようとするが、イザベラは目を血走らせてアニエスに腕を伸ばす。


「落ち着ていられるわけないじゃない!どうしてエドモン様が男爵になんかなるのよお!!男爵になんかなったら私は王宮で暮らせないじゃないっ!私のキラキラな生活はどうなるのよぉぉぉ!!ドレスは?お金は?ふざけんじゃないわよ!!」

「イ、イザベラ・・・?どういう・・・」

「アニエスっ!あんたのせいね!?公爵令嬢としてふんぞり返っているあんたを見下すためにエドモンを奪ってやったのにふざけんじゃないわよぉぉぉ!!このクソ女!!皇后になって苦しめてやるはずだったのにィ!!」

「イザベラ・・・、君は私を愛していたんじゃないのか!?君は私の地位を狙っていたのか!?」


イザベラの変貌に真っ青になりながらエドモンは問いかけるが、イザベラはエドモンを振り払い、アニエスに寄り添っているアラン王弟に駆け寄った。


「アラン様!こんなのおかしいです!アニエスは学園で私をいじめて楽しんでいたんです!!それなのに何でこんなことになるんですか!?助けてくださいアラン様!」

「イザベラ!!」


アランに縋りつくイザベラをエドモンが抑え込もうとするが、イザベラは激しく抵抗をする。


「うるさいうるさいっ!アラン様っどうか私を助けてくださいっ」

「・・・・・」

「アラン王弟殿下・・・」


イザベラはローズピンクの髪を振り乱しながら、アラン王弟に縋りついていた。


(エドモンが止められないみたいだから、わたくしがイザベラを引きはがさないといけないわね)


アラン王弟に隠されるようにして守られていたアニエスは覚悟を決めて、半狂乱になっているイザベラに声をかけようとしたが。


「・・・・いい加減にしたらどうだ。不愉快な女だ」

「ぎゃっ」

地の底から響くように低い声がすると、アラン王弟はイザベラを蹴飛ばした。


「えっ」


予想だにしていない行動にアニエスもエドモンも固まってしまった。

周囲の貴族も息を吞み、アラン王弟に視線が集まった。


「黙っていれば、調子に乗って俺を名前よびするとは・・・。反吐が出そうだ。貴族としての礼儀がなっていないだけも不愉快極まりないが・・・。いつまでそのくだらない嘘を続けるつもりだ」

「嘘って・・・何のこと」

「ふんっ、まだしらばっくれるか。イザベラ・ウィンターズ。お前の証言はすべて虚偽であることは調査済みだ。寧ろ、貴様がアニエスに対して数々の嫌がらせをしていたことを確認している。自分が行ったいじめの内容をエドモンに伝えるとはな。それはそれはリアリティが出ただろうな?」


アラン王弟は暗い瞳でにやりとイザベラをせせら笑った。


「な、なんでそのことをっ・・・」


(アラン王弟殿下はそのことまでしっていたの?私がイザベラに嫌がらせをされていたことを・・・)


予想していなかった言葉にアニエスも目を見開き、アラン王弟を見つめた。


「ちょっと聞いただけでもボロボロと出てきたぜ?お前、学園でかなり嫌われていたんだな。いろんな男にちょっかいかけて。おかげで楽しい話がたくさん聞けて良かったよ」

「そ、そんな!!」

「途中からアニエスに対して劣等感を持ち、エドモンに近づいたってことも調べはついてる。エドモンも哀れなものだな。こんな女に騙されるとは。人を見る目を養わなかったのがよくわかる。ちゃんとした目を備えていればアニエスを一人にするなんて馬鹿な真似はしなかっただろうに」


そういってアラン王弟は大切なものを慈しむような眼差しでアニエスに微笑む。


(やだ・・・何でアラン王弟殿下はわたくしを見てほほ笑むの。何でわたくしったら胸がときめくのかしら・・・)


アニエスも今まで感じたことのない優しい眼差しに戸惑い、頬を赤くしてしまうのだった。


アニエスに微笑んだ後、アランは何も言わなくなった2人を見やり、衛兵を指示した。


「・・・さて、もうお前たちの御託に付き合うのは飽きた。衛兵、イザベラ・ウィンターズを連行しろ」

「っイザベラ!待ってくださいっ叔父上!!」

「あー、エドモン。イザベラ・ウィンターズは処罰が決まり次第、お前のもとに戻してやる。愛しい恋人が戻ってくるまで少し待っていることだな。」

「叔父上っ!!」

「・・・本来ならアニエス公爵令嬢を侮辱したお前も取り調べを受けるべきだが、お前は廃嫡の手配もある。大人しく皇宮で沙汰を待っているんだな。」


その言葉にがっくりと膝を落としエドモンはうなだれてしまった。

エドモンの周りにも衛兵が集まり、彼を立たせると静かにパーティ会場を後にした。



イザベラとエドモンがホールを去っても本来は賑やかな卒業パーティはしんと静まり返っていた。

残された貴族たちはアニエスとアラン王弟を静かに見つめている。


(最後の仕上げをしなくちゃね)


アニエスはアラン王弟に目をやり軽くうなずいた。

そして一歩前に出て詫びを述べた。


「皆様の大切な卒業パーティを台無しにしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。アニエス・バフェットが公爵家を代表してお詫び申し上げます。今回の件につきましは公爵家と皇室にて話し合い、後日皆様へご説明をさせていただきます」


礼をしながら目を閉じる。いろいろな思惑を感じる周りの視線から逃げたくなった。

これからのことを考えると頭痛がして顔を上げるのがとても怖い。


様々な視線に刺されてる感覚を感じているとアラン王弟も皆の前で礼をとった。


「私も皆に謝る。我が甥が愚かにもパーティで愚行を働いた。今回の件については王弟として私が責任をもって対応する。ただ一言だけ言わせてくれ。アニエスは何も悪くない。我が甥エドモンとイザベラ男爵令嬢が起こした問題だ。その点のみ理解してくれたら嬉しい」

「アラン王弟殿下!」

「アニエス令嬢。あなたはただの被害者なんだ。どうか思いつめないで」


予想だにしなかったアラン王弟の言葉に驚き顔を上げると、優しく微笑む姿があった。

その優しい眼差しから目をそらせずしばらく2人で見つめあっていると、周囲から拍手が聞こてきた。


「バフェット公爵令嬢は素晴らしかったわ!」「あんなに毅然とした態度で殿下にむかえるとは感動した」「イザベラ・ウィンターズが悪いもの!公爵令嬢は悪くないわ!」「前に私の婚約者にも手を出そうとしていたのよ」「さあパーティを楽しもう!」


色々な声が聞こえてくる中、アラン王弟はにっこり笑うと、アニエスの肩に手を載せ耳元で囁いた。


「今回の協力報酬は後日頂に参ります」



その1週間後、新しい皇位継承者としてアラン王弟がアニエスへ婚約したいと訪れたのだった。


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