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第55話 外を見ててもエリスから怒られない!

 一週間後、クラーラさんに呼ばれたエリスの付き添いで、王宮に行くことになった。


「調べることができたらいいんだけど」


「クラーラ様がおられましたら、難しいかもしれないですね」


 今日はデュークがアレンさんの中に入った時に、私とどれくらいまで離れることができるか実験しないといけないのだ。


(デューク、クラーラさんがいてもいなくても、またアレンさんの中に入ってね)


(うん、分かっている)


 デュークによると、デュークがアレンさんの中に入ったことによって、アレンさんの体の時間が動き出した可能性があると言った。そのせいかどうかは分からないけど、アレンさんをこのままにしておいたら次第に衰えていって、最終的に死んでしまうかもしれないみたいなのだ。これを避けるためにはデュークが定期的にアレンさんの中に入る必要があるようなんだけど、正直これはデュークが言っているだけの事なので、本当かどうかは分からない。でも、アレンさんの中に入ったことがあるのはデュークだけなので、そんなことは無いと言って無視するのは危険だと思う。もし、アレンさんが死んでしまったら取り返しのつかないのだから。







 馬車は、貴族街のさらに東にある王宮へと向かっている。今日はエリスの付き添いなので、侯爵家の馬車ではなくて使用人用の馬車に乗っている。エリスは侯爵家の馬車じゃなくて申し訳ないって言うけど、地球では一般の庶民だったのだから、別にそんなことは気にしない。まあ、乗り心地がいい方がいいけど、王都は道がいいからそんなに気にならない。それに、


「いつもこの馬車がいいかも」


「どうしてですか?」


「だって、外を見ててもエリスから怒られない!」


 そうなのだ、この馬車には貴族が乗ることは無いので、窓を閉めて走っていたら怪しまれるらしい。だから、今日は出発してからずっと王都の景色を楽しめている。これぞ快適な馬車の旅というものだ!


「その代わり、ティナ様にそのような物を着ていただくことになってしまい、不甲斐のうございます」


「ううん、この服、とても動きやすくていいよ」


 今日の私の服は、お忍びということで普段エリスが着ている服を借りている。地球で見たことがあるメイド服に似ていて、あちらこちらにフリルが付いているんだけど、下はスカートではなくてパンツなのだ。あ、パンツと言ってもショーツの事じゃなくてズボンのパンツね。だから、歩くときも気にしなくていいので安心感があっていいよね。

 馬車にしても服にしても、貴族は決まりごとが多くて困ってしまう。ほんと、堅苦しくていけないよ。




 王宮に到着した馬車は、いつも謁見の時に入る正門を通り過ぎ、お堀に沿って作られた並木道を北に向かって進んでいる。そちらには裏門があって、その先に今日の目的地の使用人用の入り口があるのだ


「何の木だろう」


 お堀の周りには、同じような木が等間隔で植えられていた。

 うーん、桜っぽい感じもするんだけど、正直夏の桜の木ってあまり印象に残っていない。どんな木だったっけ? というか、こっちにあるのかな。


「春には桃色の小さなきれいな花をたくさん咲かせるみたいですよ」


 春に咲く、桃色の小さなきれいな花ならやっぱり桜の可能性もあるな。カチヤでは春の間は部屋から出ることができなかったから、春の花をほとんど見れなくて残念な思いをした。次の春が楽しみだよ。


 裏門からお堀を渡り、使用人用の入り口前で馬車を降りた私たちは、衛兵さんの身体検査を受け、入り口近くの部屋の通された。


「迎えが来てくれるんだよね?」


「はい、クラーラ様のお手紙にはそのように書いてありました」


 侍従さんでも来るのかな。





「失礼するよ。おや、ティナも一緒だね」


 しばらくしてドアを開けて入ってきたのは、赤い髪の背が高い男性だった。


「エルマー殿下!」


「クライブじゃなくてすまないね。あいつは今、客人が来ていて手が離せないんだ」


 侍従さんと言いつつ、いつものパターンならクライブかなって思っていたけど、皇太子殿下が迎えに来るとは予想してなかった。


「いえ、侍従さんが来られるのかと思っていました」


「君たちに会って以来、アレンの調子がいいだろう。私もクラーラもクライブも、君たちが来るのを楽しみに待っていたんだ」


 アレンさんの調子がいいのは、たぶんデュークが中に入っているからだけど、そのせいで命の危険に晒されるようになっているとか言えない……。


「エルマー様、申し訳ございません。私が心細かったので、ご了解もなしにティナ様について来ていただきました」


「ティナが来てくれるのは大歓迎だから、いつでも来てもらって構わないけど……、それにしてもティナのその格好はどういう理由なの?」


「はい、今日はエリスと一緒にアレンさんのお世話をするために参りましたので、動きやすい服装にしました」


 私はエルマー殿下の前でくるりと回って見せた。


「あはは、アレンも喜ぶよ。それじゃ、早速ついて来てくれるかな」


 私とエリスはエルマー殿下に連れられて、アレンさんの部屋まで向かった。


☆補足

王家の使用人の中で王家の生活空間に入れるのは侍従、執事、メイドです。さらに私室まで入れるのは執事とメイドのみになります。

また、衛兵は王宮の各出入口で不審者がいないか目を光らせ、近衛兵は王族の身辺警護を行っています。

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