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第22話 私は皇太子のエルマー・ランベルトだ

「ここは軍務省、この国の軍事を司る場所で私の職場だよ」


 軍務省は王宮のすぐ隣にあって、石造りの重厚(じゅうこう)な雰囲気の建物だった。


(うわー、かなり古そう。それにあまり近寄りたくない気がする)


(威圧感たっぷりだね。それに、門番さんも厳つい人たちだよ)


 コンラートさんが手を上げると扉が開き、その間を強面のお兄さんたちに見守られながら入って行く。


(あれ、思っていたのと違う)


(居心地よさそう)


 内部はすべて木で作られているようで温かみのある感じがする。それに何よりも明るい。窓からの灯りだけでなく、日の光が届かないところにはランプが掛けてあり、それがまた優しい雰囲気を出していた。外観を見て、刑務所みたいなところを想像していたから驚いてしまった。


「ティナ、準備にしばらくかかるから、会議が始まるまでここで待っていてくれないか」


 コンラートさんは、私を一階入り口の脇にある応接室に案内して、すぐに出ていってしまった。


「ふうー」


 おっと、思わずため息が漏れちゃった。ずっと緊張していたから仕方がないよね。


(ユキちゃん、お疲れさまでした)


(疲れたー。でも、何とかうまくいってよかったよ)


(ほとんどユキちゃんが喋っていたでしょ。ボク感心しちゃった)


(昨日デュークが言ってくれたから、なんとか出来ただけだよ)


 そうなのだ、何とかしなきゃって思ったら口から言葉が出ていたのだ。


(それじゃ、これからの作戦会議も大丈夫かな?)


(うう、それはいまいちよくわからないところがあるから、デュークさんよろしくお願いします)


(はーい)


 その時ガチャっとドアが開いて、赤みがかった茶色い髪の青年が入って来た。


「おや、先客がいたのか。構わないかい?」


「あ、はい、どうぞ」


 その青年は『ありがとう』と言って、私の前のソファーに座った。


 この人もガタイがいいなー。ここの軍人さんかな。あれ、誰かに似ている気がするけど……うーん、誰だっけ。まあいいか。そのうち思い出すだろう。

 年はいくつくらいかな……見た目は若そうだけど意外といっていたりして。


(ねえ、デュークはこの人いくつくらいだと思う?)


(……)


(どうしたの?)


(あ、ゴメン。ティナはいくつくらいだと思うの?)


(30才ちょっとと予想してみる)


(ボクは36才かな)


 デュークのやつ、えらいピンポイントで指定してきたな。


 おっと、いけない。お兄さんもこっちをじっと見てきたぞ。


「君はもしかして、今日の御前会議で話をした女の子かな」


「は、はい、ティナ・カペルと申します」


「そうか! 父上から聞いたよ。期待の新人現るってね」


 父上? もしかして……


 コンコン!


「入れ!」


「失礼いたします! エルマー殿下、ティナ・カペル様。軍務大臣がお呼びです。会議室までお越しください!」


「わかった。すぐ行く」


 殿下ということは……


「初めましてティナ。私は皇太子のエルマー・ランベルトだ。よろしく頼むよ」


 王様に引き続き皇太子様にまで、エリスはなかなか王族にはお目にかかれませんよって言っていたのに……





 エルマー殿下に手を引かれ、階段を上っていく。

 しかし、参ったよ。階段に着くなり手を差し出してきて『どうぞ』って、殿下にこういうことをさせていいのか戸惑ってしまった。でも、今日は歩きすぎていて階段を上るのが辛そうだったら甘えさせてもらいました。


「エルマー殿下、ありがとうございます」


「困っている女性には優しくしないとね」


 うわ、こういうことを言われるとあいつがうるさいんだよなー。


 そう思いながら歩いているんだけど、なぜか何も言ってこない。


(どうしたの?)


(何が?)


(何がって……いや何でもない)


 さっきから調子狂うな。ほんとにどうしたんだろう。


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