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第20話 ティナ・カペル様。国王陛下がお呼びです

 翌朝食事が済んだあと、私はコンラートさんとセバスチャンさんとともに王宮まで向かった。


「この服って、ほんとにカミラさんのなんですか?」


「そうだよ。なかなかのものだろう」


 映画で見るような、きらびやかな衣装を着せられると思っていたんだけど……これは戦闘服の一種ではないだろうか。質素だけど気品があって、それでいて動きやすい……なんというか、甲冑をつけていないジャンヌ・ダルクな感じがする。そういえば、カチヤの家を出るときにアメリー母さんが着ていた服に似ているかも。


「今から戦いに行くみたいな感じなんですが……」


「これはもう戦争なんだということを、みんなに示さないといけないからね。ティナにはそのつもりで話してもらいたい」


 食事の前、エリスに頼んでコンラートさんと話をさせてもらった。デュークの心配はコンラートさんも気にしていたみたいで、作戦の詳細については御前会議の時には話さずに、カチヤに兵隊を送ることが決まってから開かれる、軍事担当のみで行う作戦会議の時に話すことになった。


 それにコンラートさんは、元々数人が声高(こわだか)に反対しているだけで、他の人たちは出兵はやむなしと思っているから、私が『どうか助けて、それにここも危険です』って言ったらすぐ決まるよって言っていたけど、そう簡単に事が進むのだろうか……

 最初の御前会議の時に、王様が兵隊を出さないって決めちゃったら、そこで終わりなんだよな。


(デュークだけが頼みなんだからね)


(任せて!)


 自分でやると決めたことだけど、これからのことでみんなの運命が決まるとか……いや、弱気になったらいけない。私がみんなを助けるんだ!







 王宮の前で馬車を降りた私は、セバスチャンさんの案内で控室まで急ぐ。

 コンラートさんは最初から会議に出席しないといけないので、馬車を降りた後、直接会議室に向かっている。


「会議にはどんな人が出られているのですか?」


 控室には私とセバスチャンさんだけで、ほかには誰もいなかった。特別に招待されているのは私だけなんだろう。


「はい、今日の会議にご出席なさっておられるのは、国王陛下とこの国の運営を任されている評議員の方々になります」


「評議員?」


「ええ、この国には貴族だけでも数百人の方がおられますから、全員が集まりますと何も決めることができなくなります。そこで数人の官僚貴族と各地区を代表した貴族の方を評議員に指名し、その方々が話し合って国の方針を決めることになっているのです」


 なるほど、民主主義というわけではないけど、それぞれの地区を代表する人がいるというわけか。


「コンラートさんは官僚貴族ということでしたよね」


「はい、ウェリス家は代々軍事担当の大臣を任されております。他の貴族の方々のように領地は持っておりませんが、格では負けておりませんよ」


 やっぱり貴族の家柄って格が重要なのね。


「それで、カチヤを助けるのに反対しているのは、どなたなんですか?」


「旦那様からは、王都周辺の貴族の代表のガーランド卿と、東部の貴族の代表のクノール卿だと聞いております」


 王都を守る兵隊を西のカチヤに出すのに、ガーランドさんが反対するのはなんとなくわかるけど、東部のクノールさんはなんでだろう。


「それはですね、東部地区ではいまだに周辺諸国と領土争いが続いております。そのため、相手側に王都を手薄にしたことがわかると、増援がないと判断され攻め込まれるのではないかと心配されているのでしょう」


 やっぱりそれぞれに理由があるんだ。かといって、そのままにしておいたらカチヤは教皇国のものになってしまって、王都だって近いうちに攻め込まれるかもしれないのにね。


(デューク、わかった?)


(うん、たぶんそうだろうって思っていた。とにかくユキちゃんは、王都も危険だってことを伝えたらいいからね)


 みんなまだ他人事(ひとごと)だと思っているんだろうな。


「ティナ・カペル様。国王陛下がお呼びです。ご同行下さい」


 聞いてた時間よりも少し遅めに王宮の侍従さんがやってきて、私の出番を告げる。


「ティナお嬢様。私はここから先には参れませんが、ご本懐(ほんかい)()げられることをお祈りいたしております」


「セバスチャンさん、ありがとうございます。いってきますね!」


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