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【完結】男爵令嬢になった私となぜか一緒に憑いてきた守護霊体質のあいつと始める辺境領地の暮らし方  作者: 高坂静
目覚め

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第2話 キリストさんってどなたでしょうか?

 ということで、エリスにお水を飲ませてもらい詳しい話を聞いてみる。


「ありがとう。つまり、私は5年以上眠りっぱなしだったというの?」


「はい。事故に遭われて、お目覚めにならないお嬢様のお世話係として私が雇われておりました。そして、お仕えさせて頂いて昨日で丸5年になります」


 ティナって子は今から約5年前に木から落ちて、それから一度も目覚めることが無かったらしい。事故の時に目立ったケガはなかったということなので、この体が動かないのは、5年以上動かしていない筋肉が衰えているせいかもしれない。

 その証拠に、エリスに握られている右手は全く動かないというわけではなく、ほんの少しだけど握り返すことができている。


(ねえ、言ったでしょう。ボクは何もしてないって)


(あんたはちょっと黙ってて!)


 しかし、さっきからティナ、ティナって言われるけど、私、そんなにティナって子に似ているのかな? 名前からしたら西洋風だよね。


「エリスさん。鏡ってありますか?」


「えーと……鏡はお持ちできますが、びっくりされないでくださいね」


 エリスは、ベッドの横に置いてある家具の引き出しから豪華な装飾が施された鏡を取り出し、私の目の前に差し出した。


 エリスの助けを借りながら右手で鏡を握り、自分の顔を見てみる……


「こ、これは……」


 誰? 金色の髪を短くした女の子で、かわいそうなほどにがりがりと痩せている。それに鏡を持っている右手を改めて見ても、全く肉がついていないから骨骨しいったらありゃしない。


「お、お嬢様。今はお痩せになっておられますが、食事をとられるようになったらすぐにふくよかになられますよ」


 5年もの間寝続けていたとしたら、食事はどうしていたんだろう。


「それは、お医者様から点滴をしていただいておりまして、栄養はそこからとっておられました。でも、今度からは美味しい料理を食べていただきますね」


 そういえば、左腕から管が伸びている。その先は布団に隠れて見えないけど、腕に針が刺さっているのかもしれない。


 しかし、ここはどこだ? それに私は誰だ?

 誰ってティナだろうって言われても、全く心当たりがないんだよね。


「ねえ、エリスさん。今は西暦の何年なの」


 起きる前の記憶では2020年だったから、5年も寝ていたのなら2025年になっているはずだ。


「お嬢様、私のことはエリスとお呼びください」


「わかった。そのかわり、私のことをお嬢様と呼ぶのもやめてもらいたいな」


 お嬢様なんて、少女漫画の中でしか見たことないよ。


「そんな、お嬢様はお嬢様で……」


「エリス」


 ジッと、エリスを見つめる。


「わかりました。お嬢……いえ、ティナ様」


 ティナ……様か……仕方ないか。


「それで、ティナ様、西暦ってなんですか?」


 あれ、西暦がわからないの?


「キリストさんが生まれた年から数える暦のことだけど……」


「キリストさんってどなたでしょうか?」


 これはもっと情報を集めないといけないみたいだぞ。






 エリスに聞いてわかったことは、今日は王国歴835年の4の月の8日。これからいろんな花が咲いてきれいですよって言っていたから、季節は春なのかな。

 そして私がいる場所は、レナウス大陸の西に位置するリビエ王国の中でも一番西側の港町、カチヤにあるカペル男爵家の邸宅。さっきいた中年の男女がカペル男爵夫妻なんだって。


「ティナ様はこの家の一人娘であらせられます。将来はこの家をお継ぎになる旦那様をお迎えしないといけません」


「それって、私の結婚相手がこの家を継ぐってことなの?」


「はい、ティナ様は今年で16才になられます。年齢的にもすぐにでも決めないといけないはずです。旦那様は、ティナ様がお目覚めになるのをずっと待っておられましたから」


 16才と言えば私が目覚める前の年齢と一緒だけど、5年も寝ていたとなるといろいろとつじつまが合わない。かといって、ぼんやりとしていたら自分が置かれている現状を把握できないうちに、物事が進んでいきそうな気がしてきた。


「ちょっと、考えたいから一人にしてもらえるかな?」


「わかりました。ただ、ティナ様をお独りにしないように申し付けられておりますので、そばで控えさせて頂きますね」


 エリスはベッドの横の椅子に座り、棚から本を取り出し読み始めた。たぶんこれまでも、私の世話がないときはこうして近くにいてくれたんだろう。


 改めて思い起こしてみる。

 ここで目覚める前の記憶は大体ある……と思う。小さい頃の記憶は曖昧(あいまい)だけど、お父さんとお母さんの顔や名前も思い出せるし、学校の友達との思い出もある。ただ、はっきりとしないのは、ここで目覚める前の事。朝、高校の入学式に出席するために家を出たと思った次の瞬間あいつの声がして、そのままここで目覚めたという感じなのだ。きっと、そこで何かが起こったんだと思うけど、それが何なのかはわからない。


(ところで、あんたはいつまでここにいるの?)


 この幽霊、姿は見えないけど気配はずっとあるんだよね。


(ボク? ボクはずっとユキちゃんの近くにいるよ)


(いや、だから迷惑だって言っているんだけど)


(ごめんね、離れられないみたいなんだ)


 離れられない幽霊って、地縛霊なのかな。それじゃ、私が移動しないといけないのか。

 ん、移動と言えば、


「エリス、お願いがあるんだけど、トイレに行きたいの。手伝ってくれないかな?」


 静かに本を読んでいるエリスには悪いんだけど、今の私が一人でトイレに行くなんて無理な話だ。


「ティナ様。お手洗いに行くのはまだ(あぶ)のうございます。いつものようにそこでお済ませください」


 そこでって……あれ、この感覚って……そっか、ずっと寝っぱなしだったもんね。ということは……


「エリスがいつも?」


「はい、ティナ様のことなら何でも分かります!」


 思ったよりも体がきれいなのは、この子のおかげなんだ。でも、甘えてばかりはいられないな。


「トイレは……しばらく仕方がないとしても、動けるようになりたいんだ。手伝ってくれるかな」


「はい!」


 なまっている体を動けるようにするのは大変かもしれないけど、元の自分に戻る方法は自分で探すしかないみたいだし、そこにいる得体のしれない地縛霊とも離れたいからね。

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