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第144話 うん、ボクがいなくてもあいつは大丈夫

 翌日指定された時間に王宮に到着した私たちは、侍従の人に案内され謁見の間に通された。

 しばらくして奥の扉が開き、王様とお妃さま、それに皇太子殿下と皇太子妃、そしてクライブ皇太孫殿下とエリス皇太孫妃が現れた。


「この度はクライブ殿下とエリス妃のご成婚、誠におめでとうございます。カペル家一同お祝いに駆け参じました」


 私たちはお父さんの言葉に合わせて、頭を下げる。


「皆、頭を上げてくれ。遠くから来てくれたこと、嬉しく思う。この通りまだ未熟者の二人だ。どうか支えてやってくれないか」


「おお、陛下。もったいないお言葉、恐悦至極にございます。カペル家は王家のためにこれからも尽くさせていただきます」


 私たちは改めて頭を下げる。


「さて、仰々(ぎょうぎょう)しい挨拶はもういいだろう。今日はせっかくアレンが来てくれたのだから少し話がしたい。構わないか?」


 やっぱりそのために謁見の時間を最後にしたんだ。


「もちろんでございます」


「うむ。それではアレン、そしてティナとその子供たちも奥に来るように。カペル卿はすまんが控室で待っててくれ」


 そう言って、王様たちは奥の部屋に向かって行った。


「それじゃ、お父さん、お母さん、行ってくるね」


「二人とも粗相そそうが無いようにな」


 私とアレンは子供たちを連れて、王様たちの後を追った。







「早く! 早く、子供たちを抱かせてくれ!」


 王家の応接室に通された私たちの前には、眉が下がりっぱなしの王家の人たちが並んでいた。王様も王妃様もいつもの威厳はどこにやったのやら……これは確かにお父さんたち、いや王国民には見せられない顔だよ。


「おおー、私の初孫。生まれたと連絡を受けた時に飛んでいきたかったがそれもかなわず、ようやく抱くことができた。この喜びをなんと表現したらいいのか」


 特にエルマー皇太子殿下にいたっては、アレンに返すように言われてもティーファとアルトを抱き上げたまま離そうとしない。これまで持っていた屈強なイメージがどこかにいっちゃったよ。

 まあ、子供たちも嫌がってないようだし、しばらくは好きにさせておこう。めったに会うことはできないからね。


「えっと、改めまして。クライブ、エリス。結婚おめでとう」


 私の隣で王族の方々のそれらしくない姿をあきれ顔で見ている二人に声を掛ける。


「ありがとう、ティナ」


「ありがとう、ティナ様……あっ! ティナ」


 ふふ、エリスったら。


「ごめんね。おじい様たちがあんなで……でも、兄上が幸せそうでよかった」


 クライブは子供たちを巡って争っているアレンと王様たちの様子を目を細めて眺めている。


「クライブたちだって幸せそうだよ。私はエリスのこんなふやけた表情はみたいことないもん」


「ふ、ふやけたって、ティナ!」


「うそうそ、でもほんと二人はお似合いだよ」


 この世界に来てからの大切な友達、二人には幸せになってほしい。


「あーもう、誰もボクの言うことなんて聞きやしない。ティナ、交代」


 こちらにやってきたアレンは両手を広げて降参の構えだ。


「任せて、アレン。エリス、今から私の大事な子供たちを魔の手から取り返さないといけないの。手伝って!」


「魔の手ですか……ふふ、畏まりました、ティナ様。私にお任せください!」


 エリスもノリノリで付き合ってくれる。そして、目の端ではクライブを部屋から連れ出すアレンの姿が見えた。







 私とアレンは、はしゃぎ疲れて寝てしまった子供たちを連れて、お父さんたちが待つ王宮の控室に向かっている。


「うまく話すことができたみたいね」


 アレンと一緒に部屋に戻ってきたクライブは目が赤くなっていたけど、これまで漂っていたどこか幼い雰囲気は無くなったように見えた。


「うん、ボクがいなくてもあいつは大丈夫」


 そう話すアレンもスッキリとした横顔で前を向いていた。


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