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第14話 あなたはティナ・カペルで間違いないの?

 レオンさんの案内ですぐに門を通ることができた私たちは、王都の中を東に向かって進んでいる。


「ねえ、エリス。窓を開けたらだめなの?」


 カチヤを出てからというもの、窓はエリスが外を確認するときくらいしか開けていない。初めての王都なんだよ、それも異世界。断然気になっちゃうよね。


「カチヤと違って王都では、貴族の方が外を気にするのはあまり好まれません。見られた相手も恐縮しますから我慢なさってください」


 うう、貴族ってほんと面倒くさい。


 しばらくすると、馬車の外の音があまり聞こえなくなった。エリスは少しだけ窓を開けた。


「貴族街に入ったようですね」


 貴族街って、そういうのがあるんだ。


「ねえ、ちょっとだけ見せて貰えないかな」


「ちょっとだけですよ」


 エリスの許可がもらえたので、エリスが少し開けてくれた窓から外を眺める。


「うわー、キレイな街並み」


 窓からは、いくつも立ち並んでいる西洋風の大きな建物とキレイに手入れされている街路樹が見えた。ゴミも見当たらないし、うまく歩けるようになったらこのあたりを散歩したら気持ちがよさそうだ。


「ティナ様、他の方に見られたらおかしいのでこのへんで」


 ……もしかしたら、散歩するのも許して貰えないかも。でもまずは、カチヤを取り戻してお父さんとお母さんを助け出すのが先だな。


 それから間もなくして馬車が止まり、外からレオンさんの声が聞こえてきた。


「ティナお嬢様、ウェリス侯爵家へようこそ」


 エリスが馬車のドアを開け、先に降りて私を待っていてくれる。私もあとを追って馬車を降りようとしたところで、バランスを崩してしまった。


「「危ない!」」(危ない!)


 右からはエリス、左からはレオンさんに支えられ、そして後ろからはデュークに引っ張られたような気配を受けながら、なんとか転ばずにすんだ。


「ティナお嬢様、大丈夫ですか? お気をつけ下さい」


「あ、ありがとうございます」


 その時、とっさに見たレオンさんに驚いてしまった。


 イケメンさんだ!


 デュークが言った通り、背は高くて銀髪でそれに切れ長の目。マンガなら主人公の女の子が恋に落ちちゃうやつだ。


(ユキちゃんしっかりして!)


 おっといけない。思わず見とれてしまっていたよ。


「ティナ様、無理はなさらずに私にお掴まり下さい」


 長い間馬車に乗っていたので、足がうまく動いていないみたい。エリスに掴まりながら、レオンさんが開けてくれた侯爵邸のドアをくぐる。


 すると、玄関ホールのすぐ前にある階段から一人のご婦人が駆け下りてきて、私に抱き着いてきた。


「ティナ! さっきアメリーからの早馬が来て、急いでレオンを迎えに出したのよ。無事でよかった!」


「か、カミラさん? 初めまして、ティナです」


 アメリー母さんによく似ている、きっとこのひとがカミラさんなんだろう。


「以前アメリーからの手紙で目を覚ましたのは知っていたけど、ほんとに記憶をなくしているのね」


 カミラさんは、私の頭を撫でながら話しかけてくれる。


「ごめんなさい」


「謝らなくてもいいわ。怪我してない? そう、大丈夫なのね。よかったわ。レオン早速で悪いけど、二人を私の部屋に連れていくから、お茶の準備をお願い。二人には詳しい話を聞かせてもらうわ」





 カミラさんの後を付いて、エリスと一緒に中央に真っ赤な絨毯が敷かれた木製の階段を二階へと上がる。


「ティナ、足は大丈夫なの?」


「はい、杖をついてですが、やっと歩けるようになりました」


「アメリーから毎週のように手紙が届いていたのよ。ティナは今日はあれができた。明日はこれをやるんだって。そして、この前来た手紙では、もう少しで歩けそうだって嬉しそうに書いていたけど、もう歩けるようになっていたのね」


 知らなかった。お母さん何にも言わないんだもん。


「ここよ。入って」


 カミラさんは二階の右手にある部屋のドアを開け、私とエリスを招き入れた。


 落ち着いた雰囲気の部屋の中央には、ふかふかのソファーと背が低い木製のテーブルがあって、カミラさんはそこへ向かって歩いていく。


「それじゃ、そこに座ってくれるかしら」


 私は指示されたカミラさんの正面のソファーに座り、後ろに控えたエリスの方を見る。


「ティナ様、こういう場合、使用人は傍に控えることになっております」


 なるほど、そういうものなんだ。カチヤでは動けるようになることに一生懸命で、貴族の礼儀とかそう言うところまでは手が回っていなかった。これからはエリスに頼んで教えてもらうことにしよう。


「それで、改めて聞くわ。あなたはティナ・カペルで間違いないの?」


「はい、ティナ・カペルという名前らしいです。目覚めた時に何も覚えていませんでした」


 何もというのはうそだけど、地球のことを知っていると言っても混乱するだけだからね。


「そうね、5年以上眠り続けていたのですからね……これから記憶を取り戻すなり、作り上げていけばいいわ」


 記憶を取り戻すってできるのかな? もしそうなると地球での記憶ってどうなっちゃうんだろう。


「それで、聞かせてくれる。何が起こっているの?」


 私とエリスはカチヤで体験したこと、お父さんとお母さんが自ら町に残ったことを話すことにした。


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