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第128話 わ、わかった。行くから、今日行くから。許して……

「お、おはよう、ティナ……」


「おはよう! ……アレン、どうしたの?」


 翌朝、食堂に現れたアレンの様子がなんだかおかしい。


「どうしてだかわからないけど、体のあちこちが痛くて……」


 体が痛いって……


「……もしかして筋肉痛じゃないの?」


 昨日あれだけ船を漕いだんだから、そうなっていてもおかしくないと思う。私だって、馬に乗り始めた頃は太ももとかがパンパンになってたもんね。


「えっ! そんなに力を入れてたつもりはないんだけど……」


 きっと、体全体を使わないと船をうまく動かすことができなかったって言うことじゃないかな。


「でも昨日は、アレンが頑張ってくれたおかげでクリスタともたくさん話せたよ。ありがとう」


「どういたしまして。ボクも港を作る候補地の参考になったから行ってよかったよ」


 クリスタに潮の流れとか海底の深さとか聞いていたのは、ハンス船長に教えるためじゃなくて港を作る場所を探していたってことなのかな。


「港か……港ができたら王都まで船で行けるようになるの?」


「たぶんね、カチヤ沖を通ることになるから時間的には馬車とそう変わらないかもしれないけど、たくさんの荷物を運べるようになるはずだよ」


 ということは交易が盛んになるってことだよね。そうなったら領内も潤ってくるから、みんなも喜んでくれるはずだ。


「準備ができたら、すぐに作るの?」


「そう簡単に行けばいいんだけど、漁師さんたちの意見も聞かないといけないと思うんだ」


 そうか、港を作るっていうことは海岸の形が変わる可能性がある。魚や貝が獲れなくなるかもしれないんだから、反対されることもあるだろう。


「先は長そうだね……」


「うん、でも、時間はあるから少しずつ進めていこう」


 そうだね、私たちはまだ10代だし、これからアレンと結婚したらきっと子供だって生まれるはずだ。もし、私たちの時に間に合わなくても次の世代に任せることができたらいいと思う。慌てる必要なんてないよね。


「おはようございます! アレン様、ティナ様」


 食堂に朝の準備を終えたエディがやってきた。


「「おはよう、エディ」」


「アレン様、今日は領内の視察に連れて行ってくれるんですよね。早く朝が来るように昨日の夜もすぐに寝ちゃいました」


 そういえば、朝の馬の世話の時からエディはそわそわしていた。理由はこれだったんだ。


「ね、ねえ、エディ、視察は次の機会にしない?」


「えっ! どうしてですか、アレン様。次っていつですか? 僕、楽しみにしていたのにー」


 痛みですぐには動けないアレンにエディは徐々に近づいていく。


「エディ、ちょっ! そ、そこ触らないで」


 アレンはとうとうエディに腕を掴まれてしまった。どうやら、触っただけで痛いみたい。


「アレン様、どうされたのですか? どこか痛いのですか? 大丈夫ですか?」


 あーあ、エディったら事情を知らないからアレンの体をベタベタ触っているよ。


「わ、わかった。行くから、今日行くから。許して……」


 あはは、エディの粘り勝ちかな。

 頑張れアレン、筋肉痛は少し動いた方は楽になるはずだよ。たぶん……


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