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第105話 あれ、お父さん。ちょっと、痩せたんじゃない?

 私たちを乗せた馬車は、メルギルの町を見下ろす丘の上の古びた洋館の前で止まった。


 ルーカスさんが最初に馬車を降り、他の近衛兵のお兄さんたちと安全を確認した後、アレン、私、ユッテの順で馬車を降りる。


「おお、これはアレン様。遠いところをよくおいでくださいました」


 お父さんとお母さん、それにレオンさんの三人も玄関の前で待っていたようだ。


「ハーゲンさん、しばらくの間お世話になります。それと、今回は大事な用があってまいりました」


「わかっております。長旅でお疲れでしょうから、話はあとにしてまずは中にお入りください。夕食まで少し時間がございますので、それまで部屋で休まれたらいかかでしょうか。さあ、レオン、アレン様をご案内してくれ」


「畏まりました。アレン様、どうぞこちらへ」


「それじゃ、ティナ。あとでね」


 アレンとルーカスさんは、レオンさんと一緒に屋敷の中に入って行った。


「お父さん! お母さん!」


「「ティナ!」」


 アレンを見送った私は、人目をはばからずお父さんとお母さんに抱き着いてしまった。


「あれ、お父さん。ちょっと、痩せたんじゃない?」


 なんだかお父さんのお腹の周りが減っているような気がする。


「そうかい? 医者からは太り過ぎだと言われているから、痩せてたら嬉しいんだが……まあ、慣れない土地だからね。すぐに元に戻るんじゃないかな」


 お父さん、お仕事忙しいのかなぁ。そういえば、お母さんのお肌も荒れているみたい。


「二人ともあまり無理しないでね。あ、紹介するね。エリスの代わりに来てくれることになったユッテ。私と同い年なんだ」


「ハーゲン旦那様、アメリー奥様、初めまして、ユッテと申します。これからよろしくお願いします」


 ユッテはお父さんとお母さんに対してカーテシーをして挨拶している。


「おお、君がユッテかい。ティナからの手紙に書いてあったよ。王都の生まれなんだろう。遠くまでよく来てくれたね。こちらではメイドがなかなかいなくて困っていたんだ、助かったよ」


「初めましてユッテ。ティナのことよろしくね。あとからメイド長のアンネを紹介するから、屋敷のことは彼女に聞いてもらえるかしら」


 アンネさんはカチヤの時からいるベテランさんだ。御者をしているご主人と一緒にメルギルまでついて来てくれたんだよね。

 しかし、こちらにはメイドさんが少ないんだ。……もしかして、メルギルは王国に編入されてからずっと王家の直轄地で、メイドさんを必要とする貴族の人がいなかったからかな。ただその場合でも、商人のお屋敷があったらメイドさんを雇うことがあるはずなんだけど……


「さあ、二人とも中に入ろう。それと、近衛兵の皆さんもお疲れでしょう。部屋を用意しておりますので、準備が済みましたらお知らせください。ご案内いたします」


 お父さんは馬車の荷解きをしている近衛兵のお兄さんたちに声をかけ、お母さんと一緒に私の手を取って屋敷へと案内してくれた。








 メルギルのお屋敷は、カチヤのお屋敷よりも少しだけ大きく部屋数が多いようだ。二階に上った私の目に、廊下の窓の反対側にいくつも並んでいるドアが見えた。


 お父さんは、その中で階段からほど近い一室の前で立ち止まった。ここは他の部屋よりも幅が狭いようだから一人部屋なんだろう。


「ここが私の部屋?」


「ああ、アレン様も間もなくこの家に住まれることになるが、ティナと一緒になるのはまだ先だからね。寂しいとは思うが、しばらくはこの部屋を一人で使ってなさい」


 そう言いながらお父さんはドアを開け、私に入るように促した。


 アレンがお父さんから書類をもらって、それを王都の記紋院に提出することでアレンは正式にカペル家の養子(仮)になることができる。正式なのに(仮)が付いているのは、養子に入ったのはいいけど行った先の家と折り合わずに帰って来ることがあるらしく、入ってから半年間はいつでも元の状態に戻せるようにするためみたい。それが婿養子の場合でも例外は認められていないため、当然その間は結婚生活を送るわけにはいかないというわけだ。子供ができてしまったら、残された赤ちゃんがかわいそうだからね。


「それじゃ、ティナ、あとでね。ユッテは私について来てくれるかしら。早速アンネところに行きましょう」


 ユッテは畏まりましたと言って、私を部屋に一人残してお母さんたちと一緒に出ていった。


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