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第103話 体はあると便利だけど、こういうのがめんどくさいよね

「アレン様、ティナ様。今偵察の者が戻ってまいりました。この先に広場があるようですので、今日はそこまで行って野営しましょう」


 ギーセン領の東側からカペル領にかけては大きな森が広がっている。道幅も馬車がようやくすれ違えるほどしかないので、野営するためには適当な広さがある場所を探さないといけないのだ。


「わかりました。それでルーカスさん、すぐに出発しますか?」


「いえ、馬をもう少しだけ休ませてからになります。用事があるなら今のうちに済ませておいてください」


「ありがとう、ルーカス。ボクたちは準備ができたら馬車に乗っておくよ」


 ルーカスさんは一礼して他の近衛兵さんのところに向かっていた。


「ティナは大丈夫?」


「さっき、ユッテと一緒に済ませてる。アレンは?」


 単独行動は禁止されているので、用を済ませるときにはユッテと一緒に、あまり遠くないところに行くようにしている。人を見かけることはほとんどないけど、危険な野生動物がいるから気が抜けないんだよね。


「ボクもルーカスたちと一緒に……。あーあ、体はあると便利だけど、こういうのがめんどくさいよね」


 デュークの時は気にしなくてよかったっていう意味なのかな。でも、眠っている間も生理現象はあっていたはずなんだけどね。私の場合はエリスがきれいにしてくれていたし、アレンの場合はメイドさんたちがやっていたはずだ。ただ、これを言うとアレンが恥ずかしがってしまうから黙っておこう。


「仕方がないよ。そういうものだもの。それよりも、三日連続で野宿だよ。そろそろベッドで眠りたいかな」


 ドーリスを出てからここまで道中に町らしい町がなかったので、テントを張ってその中で虫を気にしながら簡易的な寝具で眠る日々が続いている。明後日メルギルに着く予定なんだけど、この調子だと明日も野宿なのかなって思っている。


「うーん、いずれ街道沿いに宿を作らないといけないんだけど、あまり早く作っても誰も使わないし、かと言って何も無いとみんな困るし……」


 アレンが考え事を始めたので、近衛兵さんたちが集まっている方を見ているとユッテが手を振りながらやってきた。


「ティナ様こちらでしたか。お水を貰ってまいりました」


「ありがとう。それじゃアレン、準備できたから馬車に乗ってようか」


 私とユッテはまだ頭をひねっているアレンを引っ張り、馬車に乗り込む。


 ドーリスを出て以来、馬車の中で私たちは三人そろって同じ方向を向いて座っている。この馬車は元々兵士さんが二人座れる位の幅らしいんだけど、私もユッテも女の子だしアレンの体格も横に広くないので、そう窮屈という感じではないんだよね。


「あれ? ふかふかになってない?」


 ここまで私たちのお尻を守ってくれていたクッションが、少し膨らんでいるように見えた。


「さきほどホコリをはたいておきましたから、もしかしてそれででしょうか?」


 いつの間にしてくれたんだろう。エリスにしてもユッテにしてもメイドさんはほんとによく気が付くよ。


「ユッテちゃんありがとう。これからも安心だよ」


 私たちは三人並んで席に付く。


「ねえ、アレン。これから馬車で移動する人も増えるんでしょう。こんな感じのふかふかのクッションを配ったら喜ばれるんじゃないの?」


「クッションを? 配るにしろ売るにしろあったら喜ばれるだろうけど、結局道をよくしないと誰も来てくれなくなるよ。できるだけ早く工事を始めないと…………ん? そうか! 道を作るときには人が必要だ!」


 それはそうだと思う。この世界にはロボットがいないから、命令しただけで道ができてしまうなんてことはありえない。


「アレン、なにか、思いついたの?」


「うん! うまくいけば、宿屋は早く準備できるかもしれないよ」


 おー、宿ができたら女の人たちは特に喜ぶよ。野宿ってやっぱり怖いんだよね。今回の旅には屈強な近衛兵さんたちが近くにいてくれているけど、もし私が次に王都に行く機会があったら、別に護衛の人を雇わないといけないかもって思っていたんだ。


 コンコン!


 アレンがどうぞと声をかけると、ルーカスさんが入ってきた。


「皆さんお揃いですね」


 馬車は今日の野営予定地に向けて出発した。


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