デス・ドライブ
若くして死んだ最近の人間の音楽には共通してなにか陰鬱な雰囲気を感じる。
若くして死んだ最近の人間の音楽には共通してなにか陰鬱な雰囲気を感じる。そしてそれはどうやら人へ伝搬するらしい。雨は降り注ぐ深夜の4時、高速道路の上を俺は車で走っていた。アクセルを床に付く勢いで踏み込み重力を後ろへ置き去りにする。スピードメーターは185キロを超えていた。
エンジンが回る音、タイヤが水たまりを切る音、そして車内には陰鬱な音楽。俺は死にたがっていた。そこで毎日こうして自分を試している。
今日みたいな雨の日はオーバースピードで曲がりきれず壁に激突するかもしれない。右の緩いカーブがやってくる。俺はアクセルを抜くこともブレーキを踏むこともしない。身体の感覚が研ぎ澄まされる。タイヤのグリップが限界を迎えているのか、ハンドルに重みを感じない。アンダーが出て車体の左側面が壁に迫る。アクセルを踏む足がガクガクと震える。だが車は壁に当たる目前でグリップを取り戻しカーブを曲がりきった。右足の震えは未だに止まらない。
俺の首元まで迫っていた死神の手は気まぐれなのか、どこかへいってしまったようだった。
やっとアクセルから右足が離れる。
生と死の境目を行き来するのは絶叫系のアトラクションの最終形態のような感じがする。病みつきになるんだ。
明日もまたここに来よう。まだ夜明けを知らない闇の中に、死神の手の中に吸い込まれるように走り抜けた。