Scene Bravo-4【Splendours Season1】
オーウェンを寝かせ図書館に戻ったブレイクは、紙を取り出しおもむろに何かを描き始めた。
一心不乱に描くその姿はどこか狂気じみていて、何かに取り憑かれているかのようにも見える。
「——我誓う。この血をもって弟を守り抜くことを」
そう唱えながら、描かれた魔法陣の上に腕を乗せた。
「故に我欲す。弟を守れるだけの力を」
そばに置いてあったナイフで手首ごと突き刺した。溢れ出す血は紙に吸い取られ、描かれた魔法陣をなぞるようにゆっくりと変化していく。傷口を押さえたい衝動に駆られながらも、それを痛みに喘ぐ声でかき消した。
数分後、完成した魔法陣は光を放ち、糸のようなものをブレイクの腕に巻きつけていった。それは皮膚を破り体内に侵入し、肉を食い破りながら全身に根を張っていった。もちろん、苦痛は計り知れない。視界の端に根のようなものが現れ、一本、また一本と視界を塞いでいく。手がナイフで突き刺され固定されているがために振り払うこともできない。ただただ痛みと恐怖に耐えるしか手段はない。
それでも、ブレイクの目に迷いはなかった。
やがてブレイクの体は完全に侵食された。視界は正常に戻り、糸は体に吸収され姿を消していた。ゆっくりとナイフを抜くと、無数の蠢く糸たちが傷口を瞬く間に埋めていった。
もはや生き物かどうかも怪しくなってくるその様子を見ながら、ブレイクは顔を赤くし息を荒立てていた。
糸が全て消えた後、試しに近くのペンを手に取ってほんの少しばかり力を入れると、面白いぐらい簡単にそのペンは木っ端微塵になって机の上に粉として舞い戻った。
「オーウェン……。これで守れるだろうか」
ひと払いされた図書館の一室。事実を知るのは彼のみか。