Scene Bravo-1【Splendours Season1】
お父様に駄々をこね、休むのはなんとか戦闘魔法学だけに留めることができた。とはいえ一人で部屋にいても暇なので、この前図書館で借りた本を読みながらお兄様の様子を見学していた。
「ねぇマルク、今朝はごめんね。急に起こしちゃって」
「構いません。それよりお身体の方はいかがですか」
「平気だよ。強いていえば、少し眠いかな」
笑みを浮かべてみると、なぜかマルクは顔をしかめた。
「殿下、一つ質問してもよろしいでしょうか」
頷くと、マルクはためらいながらもこういった。
「口調がいくらか変わられたようですが、何かの本の影響でしょうか?」
存外大したことなくてよかったと思いながら
「いつも通りだよ?」
と答えた。そして変なのと言わんばかりに首を傾げても見せた。
マルクはしばらく黙って僕を見つめた後、そうでしたかと言い目を逸らした。
それから程なく、額に汗を流したお兄様が戻ってきた。いくら五月とはいえローブを身にまとい動き回っていれば、自然と汗も流れる。まして三時間も続けていたらなおさらだろうに。
「お兄様、今日は一段とひどく弄ばれていたみたいだけど大丈夫?」
お兄様にタオルを差し出すと、なぜか不思議そうにそれを受け取った。
「あぁ……大丈夫だよ」
一応は笑顔で受け取りつつも、どこか腑に落ちない様子だった。そしてそれはそばにいたフィルマンも同じようだ。
「では私は先にお茶の準備をしてまいります」
そう告げ、マルクは宮殿の中に入っていった。そしてそれに続きフィルマンも中へ消えていった。まるで逃げるように。
やっぱり、二人も僕を嫌っている——のかな。
思いたくないけれど、そう思うと胸が苦しくなる。でもきっと、お兄様だけは僕を好きでいてくれる……。
オーウェンは隣に座ったブレイクの肩に頭を預けた。