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エクストリアン  作者: バドライ
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門出

「最終試験で相手にするモンスターはゴブリンだ」


先頭に立ち、コロニーの出入り口、『ゲート』に向かう俺達を導きながらそう話しているのは、今日一日俺達の面倒を見てくれる紅谷さんだ。


「ハーイ、紅谷さん!質問ッス!」


おいおい、そんな軽い口調で怒られないのか…と、友人のことを心配していると、

全く気にしていないのか紅谷さんは「なんだ?」と反応した。


「ゴブリンって武器とか使うヤツいますよね?ああいうやつの対処法とか、注意すべき点ってあったりしますかね?」


「ふむ、いい質問だ。(やつ)らの使用する武器は基本的に粗雑な武器もしくは殺した人間から奪った武器だ。群れで行動をすることが多い(ため)、一番戦闘力の高い者がリーダーとなるが、リーダーは必ずと言っていいほど武器を持っている。しかも、そのほとんどは人間の武器持ちだ。

そのため、良い武器を所持しているゴブリンは必ず注意しろ」


紅谷さんの説明に、「了解ッス!」といいつつ頷く友人を見て、ほっとした。

紅谷さんの心が広くて良かった。


「ん、ゲート見えてきたな」

「おう、俺はもう心の準備もバッチリよ!」


本当にコイツ、大丈夫なのだろうか?

まぁ、何かあっても紅谷さんが何とかしてくれるから大丈夫か。

そんなことを考えていると、前を歩いていた紅色の髪が突然止まり、くるりと後ろを向いた。


「皆、このゲートをくぐれば、何が起きてもおかしくはない。本当は行きたくないと思っているやつは無理をせず今から家に帰ると良い」


今日一番の真剣な顔で、彼女はそう言った。

だが、俺の心はもう決めている。あの日あの時、幼馴染のさーちゃんが殺された日から。

後ろを歩いていた翔も、何かしらの出来事があったのだろう。

俯きながら、拳を強く握っている。彼もまた、被害者なのかもしれない。


「…ま、最終試験に来て逃げ出すような奴なんていないと私は解っていたさ。

それではこれより、ゲートを通過する。各自武器の準備をしろ」


そう言った紅谷さんはゲートを守備している防衛隊員に声をかけ、ゲートを通過する。

それに続き、俺達も外へ出る。


「ちょっと前にゲートの近くを通ったときにチラっと見たけどよ、意外と綺麗だよな…」


紅谷さんの後ろを歩きながら目の前に広がる草原を見回し、翔はそう呟いた。

もちろん、俺もそう思う。時々吹いてくるそよ風も心地良い。


ゲームトリップが起きた後、人々はコロニーを作り、その後、他のコロニーにつながる道路を設置した。

そのため、平原の中央にはアスファルトの道路が一本、どこまでも続くように伸びている。

この道路がモンスターに破壊されたとき誰が修理にくるのだろうか――という現在の状況と全く関係のないことを考えながら歩いているうちに、俺の前で揺れていた紅色のポニーテールが突然とまり、ボーッとしていた俺はその背中にぶつかる。


「あ…すいません」

「よく周りを見ろ。その調子では、戦闘が起きた時に遅れを取るぞ?」


紅谷さんの注意に、「は、はぁい」と返事を返すと、彼女は続けて口を開いた。


「皆、あそこを見ろ」


そう言いながら、少し離れたところの茂みを指差す。


「あれ…動いてね?」

「ああ…俺もそう思ってた」


…まぁ、嘘だけど。

茂みにかくれているのはゴブリンだろうか?

俺達に気付いているのか、それとも何かをしているのか。

後者であれば嬉しいが、前者である可能性も無きにしも非ず、だ。


「紅谷さーん」


と、後ろから最小限の声で質問をしようとしているのは…えーと…は…はぎ…なんだっけ?


「なんだ、萩原」


あ、はぎわらか。その萩原とやらは先程と同じく最小限の声で続けた。


「あそこにいるのって、俺達が今回戦うゴブリンですか?」

「ああ。恐らくゴブリンだ。茂みのせいであまり見えないが、九匹ほどの群れだと思う。

ここからの戦闘は、慎重に慎重を重ね、危険だと判断した場合はすぐに後ろで待機している私を呼べ」


その一言に「「了解です!」」と、全員が小さい声で応答した。


「では…攻撃開始!!」


その一言を合図に、俺達は一斉に駆け出した。

俺達に気付き、茂みから出てきたのはやはり、というべきか。ゴブリンの群れだった。

一匹だけ、他のゴブリンよりも良い装備をしているのがわかる。恐らく、あれがリーダーだろう。


先頭にいた片手剣使いの俺に続き、ダガー使いの(しょう)、大剣使いの元気(もとき)、片刃両手斧使いの(じゅん)、メイスと円盾(バックラー)を持つ明日香(あすか)、槍使いの玲子(れいこ)がゴブリン目掛けて全速力で走る。

(かえで)優子(ゆうこ)は弓とクロスボウで後方で待機し、支援をする。


ゴブリン達の身長は約120cmほどだ。

緑色の顔に、細く開かれた黄色い目があり、髪の毛は無い。

図鑑で見たとはいえ、本当にゲームやアニメのような相貌に、少しばかり興奮する。

が、ここは現実だ。あの素朴な剣でも(かす)り傷一つつけられれば、かなり痛いだろう。


「翔、離れるなよ!二人で一匹狙えばやれる!」

「りょーかい!お前こそ、一人で突っ走るんじゃねぇぞ!」

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