プロローグ
「魔王よ、死ぬ前に1つ言っておかねばならぬことがある…」
ベッドの上で横たわる老人が小さな声で囁きかける。
「よかろう、申してみよ」
その隣に座る魔王と呼ばれた男は、老人の言葉に耳を傾けた。
「この星は…いずれ命ある者が生きれぬ星となる…そうなってしまう前に…他の星に移住することを提案する…」
少し間を置き、男が口を開く。
「前にも聞いたな…やはり、そうするしかないのか?メフィ。」
「ああ…儂の…儂の最後の予言じゃ…儂とてもう歳だからのぅ…残された時間が少ないことなど、自分でも気づいておるわい…」
どこか悲しそうな眼をしているメフィに男は優しく話しかけた。
「貴様の予言が外れたのは、天気の予言だけだったな、メフィよ。」
「あの時は…すまんかったのぅ…勇者共の村を焼こうにも、雨じゃったからの…」
懐かしい思い出を語るメフィは、少しだけ、少しだけ楽しそうだった。
しばらく思い出話を続け、時計を見た男はしばらく黙りこんでから席を立った。
「さて、メフィよ。俺は再び他の星を探す支度をせねばならん。まずは適当に魔法で探してみるとするさ。」
その言葉に、返事が来ることは無かった。