55.次の依頼。
55.次の依頼
「んあっ.........。朝か......。」
やっぱり自分の家は落ち着くのか、昨日家のベッドに入り目を瞑って明日の依頼何かなと考えていると気づけば寝ていた。
クラリエさん所の屋敷のベッドは豪華でふかふかであれはあれでよかったが、やっぱり自分の家のベッドが落ち着く。
「クスラ起きろー」
枕元に新しく、クスラ用に作った小さいベッド。というかまぁ籠に布をひいただけだが。その中にむぎゅっと入っているクスラ、ううむ、可愛いな......猫鍋に近いものを感じる。
寝ていて返事の無いクスラをもちもちと撫でながら持ち上げて部屋を出る。
最近分かってきたがクスラは朝の寝起きが悪く、中々起きない。
取り合えず朝ご飯を食べてルガード達に会いに行く準備をしよう。
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「あ、村長。おはようございます。」
「おお、ケイ殿。おはようなのじゃ。」
朝ご飯を食べ終わり、そろそろ街へ行くかと外へ出るといつも通り家の前に椅子を出して座っている村長に出会った。
「ケイ殿はこれからお出かけですかな?」
「えぇ、何かしらの依頼でも受けようかと......あれ?その絨毯はどうしたんですか?」
村長の家の外に絨毯が干してあるが、村長の家を作ったときには見なかった絨毯だ。
「ん?これかの? おぉ!そういえばケイ殿がいない時に商人が村まできてのう。その時交換してもらったんじゃ。」
「商人......?交換って何と交換したんですか?」
こんなところまで商人が来たのか?すごいな商人......。
「野菜や、干し肉とじゃな。村にお金はないしのう、物々交換なのじゃ。」
へぇ......まぁここじゃ物々交換は当たり前なのかな?お金を得る手段もないしな......。
「なるほど......商人の人は定期的にくるんでしょうか?」
「さぁのう、一応またくるとは言っておったが......ここまで来るのは大変じゃしのう。」
ふむう、やっぱり買い物は出来たほうがいいし商人の人には是非とも頑張ってほしいが......ここまでくるのは大変だろうし期待はできない感じか...。
「他には何もありませんでした?」
「そうじゃのう......商人が来た事以外には特に何もなくいつも通りじゃったのう。」
「そうですか......それじゃぁ依頼を受けに行ってきますね。」
「うむ、行ってらっしゃいなのじゃ。」
村長に見送られて結界で自分を包み飛びあがる。クスラはご飯食べるときは起きていたが今はまた外套のフードの中で寝ている。
今日はダンジョンに行くことになるのか......楽しみのような不安なような...。
どうなるかなぁ。
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「おう、きたかケイ。」
「あぁ、おはよう。」
おはよう、と挨拶するとルガードも挨拶を返してくれた。
街に着く直前にルガードからギルドの酒場で待ってると連絡があったので、街に着いてすぐにギルドに併設されている酒場まできた。
ギルド内に入るとルガードが酒場で食事をとりながら待っていた。他のみんなはどこか別の場所で待ってるのかな?
「遅れたかな?」
「いや、問題ねえよ。まだみんな来てねえし、早いぐらいだぜ?」
「そうなのか...?」
話しながらもルガードが座っているテーブルに近づき椅子に座る。
他のメンバーはまだ来ていなかったようだ。
「あぁ、周りを見てみろよ。」
ルガードに言われて改めてギルド内を見ると冒険者らしき人がいるにはいるがそこまでいっぱいではない。
異世界物の物語内では朝の冒険者ギルドと言えば、依頼を受けに来る人でいっぱいなイメージだが......どうしてだろう?
「朝は依頼を受けに来る人でいっぱいになるかと思ったけど、そうでもないんだね?」
「あぁ、そうだな......。ケイは冒険者ギルドがいつ閉まるか知っているか?」
「...? そりゃ夜には閉まるんじゃないの?」
なぜ突然ギルドが閉まる時間の話し?
「まぁ普通はそう思うわな? 他の商店とかは夜には閉まるからな。」
「普通はってことは冒険者ギルドは違うのか?」
「あぁ、冒険者ギルドに休みは無ぇんだ。魔物の被害ってのはいつ起きるかわかんねえ、そんなとき報告するべき冒険者ギルドが閉まってましたじゃ意味がねえだろ?」
「確かに......? 考えてみればそうかも。」
前世のイメージが先行しすぎてたのかな...。夜行性の動物がいるように、夜行性の魔物がいてもおかしくないもんな...。
「それで......朝に人が少ない事と冒険者ギルドの閉まる時間がどう関係あるんだ?」
「朝に人が多いと思った理由って、朝に依頼が張り出されると思ったからだろ?」
「うん。」
「冒険者ギルドは夜中もやってる、依頼があればすぐに受理して依頼書を張り出す......つまり、朝にいい依頼があるとは限らないわけだ。それに合わせて主に夜に活動する冒険者もいる。だからまぁ朝といっても冒険者が多くなるわけじゃねえんだよ。」
「なるほどなぁ......。」
朝も夜も魔物の被害は休む暇を与えてくれないってわけか......。
「まぁ、そうは言ってもほとんどの奴が日中に活動するからな。もうちょいしたら人も増えてくるだろうよ。」
ふむ、まぁ夜中もやってると言っても、そんなに人がばらけるわけでもないか。一般的に日中に活動するのは前世も異世界も一緒か......。
ギルド内を見渡してみるとルガードと同じように依頼に出かける前にご飯を食べている人や依頼が張り出してある掲示板の前で依頼表を眺めてる人。受付嬢に何か話しかけている人。
こうやってみると異世界にいるんだなぁって実感があるな......。
「ケイはあんまりギルドに来ないのか?」
「ん? どうして?」
「いや、興味深そうに周りを見てるからな。気になっただけだ。」
「あー、まぁね。こうやって落ち着いてギルド内にいる事は初めてかな?」
確かにギルド内をちゃんと見るのって初めてかもしれないが......。そんなに分かりやすい顔をしてたのかな...少し恥ずかしい。
いつかちゃんとギルドで依頼を受けたりして冒険者活動をしてみたいとは思うんだがなぁ、中々機会がない。
「気になるなら色々見てきたらどうだ? まだみんなが来るまでは時間があるだろうしな。」
「そうだな......ちょっと掲示板を見てくるよ。」
「おう、俺はここで飯食ってるぜ。」
椅子から立ち上がり依頼が張り出されている掲示板の方へ歩いていく。
掲示板の前には他にも依頼を見ている人がいるので邪魔にならないように端の方から見る事にする。
ふむふむ......なるほど?
今俺が見ている依頼表にはダンジョン素材を取ってきてほしいと書いてある。
依頼主はエルトリン商店、取ってくるのは15階層以上から出るオークのお肉を最低10キロから最大100キロまで買い取ると書いてある。
報酬は10キロ単位で金貨1枚づつ、最大の100キロで金貨10枚か。これが多いのか少ないのか分からないな......15階層が冒険者にとってどれぐらいの難易度なのか...。
お肉は多分ドロップ品なんだろうけどどうやって10キロとか測るんだろう?もしかしてドロップ品って常に同じ量が出るんだろうか?気になるな。
鮮度的な事は前にオークの巣を討伐しに行ったときに、ドリスが使っていた冷蔵の紙の魔道具を使うんだろうし。
10キロも100キロも集めるような依頼があるって事は意外とアイテム袋って流通してるのかな?
依頼期限は......買い取れなくなるまでいつまでも...か。これも薬草採取とかと同じで常に必要としているってことか。
ふむふむ、なるほどなぁ。他にはどんな依頼があるんだろう?
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「あ、ケイだー!」
んあ? 今のはネレの声か?
掲示板から目を離し後ろへ振り返るとネレがいた。オレンジ色の髪に動きやすそうな軽装、小人族特有の背の低さ。
「おはよう、ネレ。」
「おはよー!」
ネレに挨拶をして目線をルガードの方へ向けると既に他のメンバー全員がそろっていた、フェイにアキリスにドリスに。来たのに気づかないぐらい依頼表に夢中だったらしい。
よく見ると他の冒険者もそれなりに数が増えてきている。
取り合えずルガード達がいるテーブルに戻るか。
「みんな、おはよう。」
「「「おはよう。」」」
「依頼表はどうだった?」
さっきも食事してたルガードがまた新しいお肉を食べながら聞いてきた。どんだけ食べてるんだ......。
「あー、まぁ見てる分には面白かったよ。ただ固有名詞が分からなくて何のことを書いてあるのかわからないのが多かったかな?」
オークとかゴブリンとか、前世で物語内などで出てきた名前がちょこちょこ異世界でも使われていてそういうのは名前から想像できた。
何で前世の名前がここでも使われているのかは謎だがそういう物だと納得しておく。
問題はそれ以外だ。
シュリエル草やルーアなど、聞いたことない名前が多かった。名前の後に草などが付いている物は薬草関係なのかな?ってのはわかるし。ルーアの爪を何個みたいなのから何となくどうゆう物かはわかるが。姿かたちが想像できない。
「まぁ、そのへんは追々だな。長く冒険者をやってるとそのうちわかるようになるさ。」
「そっか......。」
話しながらも空いてる席に座る。ルガードはやっとお腹がいっぱいになったのか食べるのをやめて何か飲んでいる、はたから見るとでかい木のコップなので中身が何かわからないが、多分お酒だろう。異世界物でよくあるエールかな?
フェイやアキリスにドリスは朝ご飯なのか軽食を食べた後がある。今は食べ終わってお茶タイムっぽい。
ネレは今、食事を頼んでいる。
「ケイは領主様の娘さんの護衛依頼をしてたんだって? フフッ、楽しかった?」
ルガードから聞いたのかフェイがにやにやした笑顔で護衛依頼の事を聞いてくる。
「娘さんっていっても幼い子だぞ? 護衛依頼ってゆうより子守って感じだったな......フェイが期待しているような事は何もなかったよ。」
「なーんだ、残念ね。」
期待が外れたからかフェイは残念そうな顔をしてお茶タイムに戻った。
フェイが想像してたのは物語になるような貴族との出会いなのかな?意外とロマンチック思考なんだな......。
「話しは終わったか? 次に受ける依頼を決めるぞ。」
話しを聞いていたルガードが会話が途切れるのを見計らって声を出した。
「はいよ、確かダンジョンの依頼を受けるんだっけ?」
「あぁ、だがダンジョンへ行こうって話してるのは俺とケイだけだからな。改めて話しをするぞ?」
「了解。」




