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国立魔法学校ライラック

国立魔法学校。

この国に幾つか点在する、魔法を扱って仕事をする者を育成する場。仕事といっても様々。資格にはランクがあり、そのランクに応じた仕事に魔法を使っていい事になっている。国立魔法学校は何十校もある訳では無いので、どの学校も規模がとても大きい。その中でもライラックは一二を争う大きさで、貴族などが行く学校だ。そんな所に彼女のような、平民とすら言えない人が出向けば、どうなるかは明白だった。


「なんであんたみたいな、下民が居るのかしら?」

やっぱりこうなるかぁ、と燐は心の中で苦笑いをする。平民(というか平民ですらない奴)が居ればそりゃアウェーにもなるかと、納得もするがやっぱり気に食わない。

そして目の前にいる顔は良いが中身は毒という、典型的な悪女さんが取り巻き(まぁみんな可愛い人達)を連れて、私の前に陣取っている状況だ。でも何で私が外れから来たのが分かるのだろう。あれから、流石に部屋着で外に出るのはダメだろうという事で服を買いに行ったのだ。

今はロングスカートのワンピースだが、貴族の部屋着とか言う、えぇっと、コルセだったかな。コルセットの由来にもなってる、前で紐締めるあれ。全体がベージュに少し黄色を足した色で、コルセット部分が黒、赤と黒のストライプが2本ずつ左右に交互に描かれている。

赤は好きな色なので嬉しいが、ズボンタイプが良いとラックに言ったら、女の子はスカートという謎理論に論破されてスカートになった。まぁ、それに論破される私もお子様だが。


『来ては行けない。だなんて、そんな規定は無いと思いますよ?』


「恥知らずだと自分で語っているようなものね」


『えぇ恥知らずですよ。その恥を学ぶために私はここへ来たんですから』


「ふふっ!自分で恥知らずだと認めたわよ!」


「お間抜けね!」


「お可哀想ね!」

取り巻きの女子たちが言う。

その言葉に、不敵に笑う。


『私は学習できるので、恥を知ったらすぐ改善出来るのであしからず。そして私は学習しますので、今この状況こそが恥を晒しているのも分かっています』


「!あなたっ!」

悪女が周りを見渡すと、野次馬たちがなんの騒ぎだと周りに集まっていたのだ。


『見ず知らずの私に学習する機会を与えて下さりありがとうございます。それでは、また会えると良いですね。行こう、レオン』


「うん」

燐が悪女の隣を通り過ぎると、ラックもそれに続く。その時、ラックが彼女達とチラリと視線を交わす。


「っ!?」

彼女達は怯え、1歩後ずさる。それを確認したラックはまた歩き出す。


『おーい?置いてくよー?』


「今行く」


あぁ、やってしまった。これからここで生活するかもしれないのに、初っ端から喧嘩腰になってしまった。でも、後悔はあまりしていない。もちろん、あんな風になってしまったのは悪いと思ってる。でも、でも堪忍袋の緒が切れたというか、言い返したくなってしまったと言うか。


「大丈夫?リン」


『う、うん。大丈夫、多分』


「なら、良いけど」

平静を装っているが、内心私の気持ちは沈んでいる。いいや、気持ちを切り替えよう!これから友達になる人もいるかもしれないのに、暗くていつでもため息ついてる子だと思われてしまう!私はそう心に決め、ほっぺたを軽く両手で叩く。

ラックが心配そうな目をしてるなんてつゆ知らず、燐とラックはライラック魔法学校の門をくぐる。




中へ入ると、目をむき出すかと思うくらいにぎょっとした。天井はそこまで高くなくていいんじゃないの?と言いたくなるぐらい高く、なにより、中が綺麗すぎる!転移前の中学校はそこそこ綺麗だったものの、小学校がほんっっとうに汚かったのがずっと印象に残っている。一体どこにお金を使っているのかと、先生達を問いただしたかった、そのぐらいには汚かった。なんだかここまで綺麗だと、この土足スタイルも如何なものかと思う。


『学校が大きいとは聞いてたけど、まさかここまでとは思わなかったよ、驚いてる』


「魔法学校は優遇されてるからね。ここで優秀な人材を育てれば、それだけ利益になる」


『闇だなぁ』

それなら、私が毛嫌いされるのも納得。


「なにか来た」

右側からとても小さなおじいさんが来た。とても、という言葉はあまり表現出来ていない気がする。なぜならそのおじいさんは、あまりにも小さ過ぎるのだ。


「ふぉっふぁっふぁ。ようこそ、国立魔法学校ライラックへ。そして君がリンさんだね?」

童話に出てくる妖精さんってどんなの想像する?と聞かれたら、こんな姿を私は想像する。違う点があるなら、少女かお爺ちゃんかという点だろう。目の前を綺麗な羽根で飛んでいるお爺ちゃんは、どうやら私の名前を知っているようだった。


『はい、私がリンです!そしてこちらが、友達のラックです!』


「お初にお目に掛かります、ラック」


「ワシはミルト・バトラー。国の端からようおいでなすった。それにしても、獣人(スラング)を友と言うか」


「僕はリンの従者である前に、友達です。それを侮辱するなら、例え貴方のような御方でも、許しません」

決意の籠った声を、私は初めて聞いた。人の声色とはここまで変わるのかと知った。私が驚いているのなんて知らず、ラックはミルトさんをずっと睨んでいる。慌てて止めようとすると、ミルトさんは「ふぉっふぁっふぁ!」と嬉しそうに笑った。


「そんな野暮な事しないわ。むしろワシは素晴らしい事だと思うぞ。ここに来る子供達は、貴族の風潮が少なからず染み込んでおる。ワシはそんなもんは抜きに、誰もが等しく学べる学び舎を創りたいのじゃよ」

ん?学び舎を創りたい?


『えっ、もしかしてミルトさんって』


「おぉそうじゃそうじゃ、肩書きを言っとらんかった。ワシ、校長先生じゃ」


「やはりそうでしたか」


『校長先生だったんですか!?』

アワワワワと自分の顔は見えないが、恐らく青ざめているだろうなと思いながら慌てていると、ミルトさんが気を利かせてくれた。


「そう青ざめなくてもよい。元気が良くて礼儀も正しいと思うぞ」









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