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名は体を表すって本当なんだね

長らくお待たせしてしまいすいませんでした!


by鬼桜天夜

『えぇ!?魔法なんてあるんですか!?』


「おめぇ知らんかったんか」


『初耳学ですよ!』


「はつ、み?」

魔法、魔法かぁ。ファンタジー感が倍増するなぁ。

うーん、もし使えるなら何がいいかな。やっぱり最強能力!とかいいね。


「紅茶、どうぞ」

ラックはあの後、ここら辺の人達はあまり差別的では無いから大丈夫だというヴィヌスさんの助言通り、すぐに仕事が見つかった。私はてっきり、農業を一緒にやるかと思ったけど、それはさすがにってさ。賢い子だよ〜ほんとに。仕事もホワイト企業で、ラックは裏方の仕事をしている。商品の管理とか、色々忙しいけど、周りの人が手伝ってくれてるらしい。


『ありがと!これ、なんの紅茶?』


「アッサムティー、リン、こういうのが好きでしょ?」

白の控えめな華の装飾のティーカップに注がれた、甘い香りのするアッサムティー。紅茶より日本茶を愛する彼女だが、アッサムティーはお気に入り。


『魔法、私でも使えるんですか?』


「そりゃやってみねぇと分からねぇな。簡単だし、やるか?」


『お願いします!』


「頑張って、リン」


『うん!』



家を出てすぐそこの開けた場所に、まだ馴染みのない三人衆が集まった。

「必要なのは1つだけだ。イメージ、そんだけだ」


『イメージ?』


「目ぇ瞑ってみろ」

瞼を閉じると、見えるのは暗闇。空は明るいから、怖くはない。


「頭ん中空っぽにして、そのイメージを形作れ」


『からっぽにして、いめーじを、つくる』

聞こえるのは風に揺れて擦れる葉っぱの音、規則的な心臓の音。それらが遠のいていく気がする。


ある日の午後。ソファで体育座りをしてスマホを弄っていると、突然父が言い出した。

『はぁ?髪染めさせてぇ?何言ってんの父さん。OKすると思う?』


「そう言わないで!燐の学校は髪染めても良いんでしょ?」


『確かにそうだけど、だからといって赤は嫌だ』


「新作のヘアマニキュアなんだよ!メッシュにするから!」


『そういう問題じゃない!ねぇ母さん、父さん止めてよ』


「いいんじゃない?それに少しすれば取れるし、髪も痛まないし」


『なっ!?』


「よっし!ママからの許可も取った事だし、ほらほら行くよ〜」


『マジ!?って引っ張らないで!恨むからなぁ!母さん!』

(あか)は確かに好きだが、まさか髪を染められるとは思わなかったな。

燃える赤、情熱の赤、紅葉の赤。

色んな赤を、思い浮かべる。でもやっぱり、1番に思うのは、

家族との、思い出の赤。


キュゥゥンと動物の鳴き声が聞こえた気がする。確かこの声は狐の声。懐かしいなぁ。狐は私の好きな動物で、よくかわいいかわいいって言いながら、写真を見てたっけ。


『え?キツネ?』

目の前にいるのは、炎に包まれた、いや"炎で作られた"小さな狐。見た目通りの可愛らしい目で、こちらを見ている。


『どういう事?』

可愛いけど、森林火災とかしゃれにならないよね?不思議な気持ちと不安な気持ちが混ざった目で、彼らを見上げる。


「リン、良かったね」


『え?』


「才能云々は置いといて、ひとまず安心だな」


『いや、この狐どこの子?』


「そりゃお前さんのだろ。魔法で作ってんだからよ」


「そうだよ。もしかして、覚えてないの?」


『うん。まったく』

話を聞くと、私は知らないうちに魔法を使ってこの子を創り出していたらしい。そして見たまんま、私は火の魔法を使えるようだ。

魔法は本来、RPGなんかでよくある四属性、土、火、水、風だ。例外の光とか闇もあるけど、本当に稀なんだとか。

その稀に、ラックが入るのだと言う。確かにラックは闇魔法のイメージあるかも。クールだし。

それで、私は火の魔法だが、火をこう、バッ!と出せる訳じゃなくて、狐みたいな小さな動物しか創れないっぽい。少し釈然としないけど、魔法使えて良かった。でも、ここら辺じゃ使えないかな。辺り一面焼け野原になっちゃう。



あの後、大して魔法について話す訳でもなく、今お昼を食べている。が、喋る空気じゃない!

切り出しずらい、でも、"これは"聞いておかなきゃ!思い立ったら勇気をだして行動。ガタッという音と共に立つと、食べながらこちらを見ている二人に話しかける。

『聞きたい事が、あるん、デス、ケド』

喋りだしたはいいものの、目の前の眼力に押し負け、カタコトになってしまう。


「どうしたの?」


『あの、魔法って仕事に活用出来たりとかできないんですか』


「そうさな。お前ぇ、今いくつだったか」


『え?えっと十五です』


「!まさか、あそこへ?」


「こいつぁしっかりしてる。行かせても、問題なかろうて」

一体何の話かと首を傾げ、ヴィヌスさんに聞いてみる。


『行くって、どこへですか?』



「"ライラック魔法学校"、貴族なんかの偉ぇ奴が行くとこだ」



『ほぉ〜ん、魔法学校、ですか』

大きな黒い瞳を、興味ありげにヴィヌスへと向ける。それもそうだ、彼女は中学校に通った事はあれど、魔法学校などというオタク心をくすぐられる場所へなど、行ったこともないのだから。


「魔法学校は、確かにリンは行けるけれど、遠すぎませんか?」


「泊まり込みゃいいだろ」


「っ、そう、ですね」


『え、あの私行く事で話進んでます?』

二人が何やら話し込んでいるが、なんかエライ事になってる気がするの、私だけなのだろうか。


「ラック、気持ちは分からんでもねぇ。そこは考えがあるから安心しな。リン、魔法を職に扱うには資格がいるのさ。それ相応のな。だから魔法学校に行って、智識と扱い方、それに世ん中見てこい」


『そうした方が、為になる。そういう事ですよね』


「道の一つに、過ぎないがな」

きっと、この選択は私にとって大きなものなのだろう。でも、不思議と口が動いてる。挑戦するのに、異世界も現実(リアル)も関係ない!


『私、行ってみたいです!ライラック魔法学校!』


「よく言った」

ヴィヌスさんは満足げにニヒルな笑みを浮かべる。


「、、、」

反対に、ラックは悲しそうな顔をしていた。それもそっか、私が泊まり込み、つまりここから離れるから私と会えなくなるのか。そう思ってくれるのは嬉しいけど、そう考えると私も悲しくなってきた。



『ホントですか!?』


「あぁ、ホントだ。夜が淋しくなくて良かったな。ラック」


「語弊がありますよ、ヴィヌスさん」

あれから早3日。

ライラック魔法学校に行く為の準備の為に奔走していたら、あっという間に3日が経っていた。そして明日は試験日だと言う。早過ぎるんだけど。

筆記とかは無く、単純に魔力の総量とか魔法関連のことについてだそう。試験日、と銘打っているが、魔法の測定だけなんだそうだ。

後から聞いた話だが、ヴィヌスさん。元々行かせるつもりだったらしい。まぁ、行くから良かったけど本人の合意なく手続き済ませるのどうかと思うんですが。

ともかく、明日に備えて今日は程々に仕事を済ませ、寝ようとしていたら、なんとラックも一緒に行っていいそうなのだ。


『"従者扱い"なのは気に食わないんですけどね』


「しゃーねぇだろう。多少なりともこの国にも残ってるのさ、そういうもんがな」


「行けるだけで、俺は嬉しいよ?」

うぐっ、天然怖い、恐ろしいよあの破壊力!あれは意識していない、本当の天然だ。だからこそ恐ろしい!でも、私も友達が着いてきてくれるのは心強い。


『うん、私もホッとしたよ!』


「(!、、、なんだろ、リンの笑顔を見たら、真ん中が、、、)」

それについては、お互い様のようです。



『深夜のうちに移動しなきゃ行けないなんて、面倒だなぁ』


「ここからライラックまでは遠いから仕方ないよ」


『それはそうだけど、ふわぁ〜。眠い』

時刻はもう25時を回っている。ここはこの国の一番端に位置しているため、国の中心近くに行くには早晩に出なければならない。


『よぉし、それじゃライラック魔法学校へ出発だぁ。ふわぁぁ』


「でも、とりあえずリンは仮眠を取ろうか」


『うぃっす』


「気ぃつけてけよ」


『はい!』


「任せてください」

遠くから風が来る。方角は多分東、私たちの目的地。そして私たちの新生活の始まりの場所。ワクワクする気持ちを胸にしまって、ヴィヌスさんの仕事仲間さんの馬車に乗り込む。もちろん、お礼もちゃんと言いながら。真夜中の町に馬車音が響く。それはまるで、新しい朝を告げる目覚まし時計のように、規則的だった。



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