ドラゴン売りの少女
この作品は「なろうラジオ大賞2」の参加作品です。
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年の瀬も押し迫った大晦日の夜、小さな少女が一人、寒空の下でドラゴンを売っていた。
手に持ったバスケットには、ドラゴンが入った魔法の箱――徳用マッチ箱サイズ――が10個入っている。
「ドラゴン、ドラゴンはいりませんか? ドラゴンを買ってください!」
ドラゴンが売れなければ、彼女は父親に叱られる。
すべてを売り切るまで、家には帰れないのだ。
しかし、街ゆく人々は、年の瀬の慌ただしさから少女には目もくれず、目の前を通り過ぎていくばかりだった……。
夜も更け、人通りもまばらになった。
少女は少しでも暖まろうと、ドラゴンに火を吐かせた。
「ドラゴンA。ここで炎を吐いて」
ボンッ!
「ゴオォォォォッ!」
バラバラ……。
ゴォッ!
炎と共に暖かいストーブが現れ、炎が消えるとストーブも消えた。
「次はこっちに炎を吐いて」
「ゴオォォォォッ!」
バラバラ……。
ジュッ!
今度は七面鳥などのごちそうが現れ、同じように消えた。
「ドラゴンB。お前はこのへんに吐いてみて」
ボンッ!
「ゴオォォォォッ!」
バラバラ……。
ボォッ!
別のドラゴンに炎を吐かせると、飾られたクリスマスツリーが現れ、また同じように消えた。
少女は、そんな不思議な体験を繰り返した。
少女は、ふと空を見上げた。
「あ、流れ星……」
少女は可愛がってくれた祖母が「流れ星は誰かの命が消えようとしている象徴なのだ」と言ったことを思いだした。
「ドラゴンE。お前の番よ」
ボンッ!
「ゴオォォォォッ!」
バラバラ……。
次のドラゴンに火を吐かせると、祖母の幻影――バストショット――が現れた。
ドラゴンの炎が消えると祖母も消えてしまうことを恐れた少女は、慌てて全てのドラゴンに火を吐かせた。
「ドラゴンたち、思いっきり炎を吐いて!」
ボンッ! ×5
「ゴオォォォォッ!」×10
祖母の姿は明るい光に変わり、街中の魂を連れて天国へと昇っていった。
新しい年の朝、街は破壊しつくされ、生き残った者はいなかった……。
☆
家に帰った少女は、シュンとしながら父親に謝った。
「ごめんなさい、お父様。ドラゴンは一匹も売れなかったの」
「娘よ、気にするな。街を滅ぼせれば、それでよかったのだ。よくやったぞ」
父親は、頭をわしゃわしゃしながら娘を褒めた。
祖母の幻影が先代魔王の手配書だったことなど、少女は知る由もなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
つい思いついたので書きました。はんせいはしていない。
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