クリスタルのチェスセット
熊本地震が来る前。
私はイオンモールでUFOキャッチャーにハマっていた。万札を使っていたので、自然と腕が上達していろんな景品を持って帰った。
でもなぁ…。
ある日。二階のゲーセンに向かわずに一階の店舗巡りをした。
途中で竹久夢二の椿の風呂敷を即買い。
そして、それは外国製の珍しいものを売ってある店のガラスのショーウィンドウそばに置かれていた。
それはクリスタルガラスで駒と台座が造られていた。黒と透明の駒。照明のせいもあってかとてもきれいだった。
ショーウィンドウ越しに飽きることなく見ていた。
チェスのルールは全く知らない!でもこれ、欲しい!!!
ひと足早く一緒にいた元夫が、航空機のダイキャストを発見してその店に飛び込んで行った。
私はチェスのセットのことを思いながら、元夫につきあってダイキャストを買った。元夫がせかすのでその日は家に帰った。
数日後。再びイオンモールに行くと、もうチェスセットは無かった。
いつか必ず買おう。そう思った。
地震が来て、いろんなものが壊れた。手放すものもたくさんあった。
もしあの時チェスセットを買っていたら割れてしまったかもしれないと思った。
儚い、夢のような逸品だった。