お目付け役の1コマ
※あらすじにもある通り、軽いタッチで書かれております。
身分の差もありますが、深くは全く触れておりませんので、予めご了承下さい。
あたしの名前はレスティ・ナーカ。
あたし達の国から旅に出た王子のお目付け役。
彼は王子であり、そして何より、あたし達はいわゆる「魔法」に似た超常現象を唯一起こせる部族だ。
だけど、この王子にはその自覚が全くない。
というか、天然で破天荒なのだ。
その為、多くに狙われているのにも関わらず、身分をあっさり明かしてしまったりと、余計な敵を増やす事が非常に多い。
しかしあたしの血を吐くような努力で、名字を他者に名乗るのはギリギリ思い止まってくれるようになった。
ちなみに彼もあたしも、共に13歳程だ。
スラが王国から旅立った時、心配だったから側で見ていたくて、お目付け役をかって出たんだけれどーー
「好きなんだ、彼の事」
「ちょっ…ま、待って下さいノールさん!」
あたしは思わず顔を赤くした。
この街で知り合い、仲良くなった女性、ノールさんにこのカフェでスラについて相談中だった。
「いやぁ青春っていいね~」
「あ、あたしはそんなつもりじゃっ!」
耳まで赤くし、余計墓穴を掘る。
息を整え、あたしは認めるようにストンと腰を落とす。
「……スラ、いつも自分に素直でさ。 いい意味でも、悪い意味でも。 ……あたし、いつも一歩戸惑ってばかりだから、……少し、羨ましくもある」
あたしは続ける。
「底抜けに明るい奴で。 眩しくて……」
ノールさんは口に少しコーヒーを含み、
「憧れみたいな?」
悪戯っぽい笑みを浮かべるノールさん。
「……………スラは、全くもって気付かないだろうけれど。 ーーって、気付いてほしい訳じゃなくてーー」
あからさまに気付いてほしいと言っているようなものだ。
「あはは。 若いっていいわね。 いいじゃない、今は眺めてるだけでも。 お目付け役を自ら志願した程だし」
コーヒーを軽くかき混ぜるノールさん。
「……身分の差だってあります」
あたしは呟くように言った。
「……なるほどね」
でも、とノールさんは続ける。
「いつかきっとあなたの思いが彼に伝わる時が来るわよ。 というか、実際彼を見た事もない私に相談してていいの?」
ノールさんとスラはあった事もない。
というより、スラは気が付かなかった。
親切にしてくれて私の方から話し掛けている内に、ノールさんとは仲良くなった。
「聞いてもらえるだけでもありがた」
どーん!
カフェに衝撃が走る。
何と、入り口から物凄い音がしたのだ。
悲鳴を上げて伏せる客達。
「レスティちゃん、平気!?」
「…………………はい」
私は気が付いていた。
「レスティー! 約束してたカフェってここだよな! いねーのかー?」
……入り口はスラが破壊したものだと。
「お客様、お怪我は!?」
慌てるスタッフ達の声。
「レスティー! あ、そこか! って何で突っ伏してんだ? 他の人もテーブルの下にいたりするし、もしかして事件か!? 探偵はオレだ!」
ドスッと大剣を床に差し、目をキラキラさせながら、スラは探偵ポーズを取っていた。
「…………レスティちゃん、申し訳ないけれど、あなたの気持ちが届くのは暫し先になるかもしれないわね……」
「………話を聞いて下さって、ありがとうございました」
私はノールさんにお金を渡すと、
「どしたー、レスティ。 暗い顔して」
「……まず、剣抜いて」
「へ? ああ、邪魔か?」
スラはガリガリと剣を抜く。
「詳しくは後で。 ………皆さん、大変申し訳ありませんでした」
私は深々と礼をし、
「何だ急に?」
「いくわよ」
店員さんに修理費です、とお金を渡し、スラを無理矢理外へ引っ張っていく。
入り口はスラが剣をぶん回したのだろう。
あたしには見てとれる。
「どうしたんだよー、また怒ってるのかー? オレ、名乗ったりし」
スパァァァン!
私はありったけの力で彼の頭を殴った。
「いって~、何すんだよー!」
あたしははぁ、とため息をつく。
「いい加減にして!」
私は泣き崩れそうになる。
「一体いつになったらその破天荒は直るのよ! あたしの気持ちだっていつーー」
そこまで言って、顔が赤くなっている事に気付く。
「? レスティ、熱でもあるのか?」
「なんっでもないッ!」
果たして、いつになったら王子の破天荒は直るのか?
そして、少女の想いは届く日は来るのか?
少女の苦行は、まだまだ続くーー。
もし読んで下さった方、いらっしゃいましたらありがとうございましたm(_ _)m