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朱理の部屋

 朱理は刹那の枕元にしゃがみ、彼女の手を握って呼びかけ続けていた。意識を保ち続けてくれと叔父から頼まれていたからだ。


 しかし、刹那が朱理の声に反応しなくなってしばらく経つ。


「姉さん、お願い、眼を開けて……」


 叔父はまだ戻らない、電話をしてからもう一時間以上過ぎている。だがそれも当然だ、彼はつくば市にいた、そう簡単には帰って来られない。


 涙が頬を伝う。また大切な人を失うのか、自分のせいで失わなければならないのか。


  わたしは無力だ……


 焦燥と絶望感が心を満たしていく。


 クゥ~ン、と梵天丸は気遣わしげに鳴くと後ろ脚で立ち上がり、首を伸ばして朱理の頬を舐める。


「ボンちゃん……」


  そうだッ、弱気になんてなってられない、それこそ今までと変わらないよ!


 朱理は己を叱咤した。


 まだ刹那は生きている、ならば反応がなくても呼びかけ続けるのだ。自分の声は姉に届いていると信じて。


 朱理は空いている手で涙をぬぐった。


「姉さん、おじさんがもうすぐ帰るよ、だからがんばって!

 元気になったら、おいしいおでんを一緒に作ろう。

 そして……そして……次の仕事はデーヴァの打ち合わせだね。

 今度はだよ……わたしは昴になれるのかな……けっきょく琴美なのかな……

 姉さんはわたしを真那みたいに助けてくれたのに……わたしは姉さんを守れなかったよ……

 暴走したし……昴みたいに強く正しくなれないよ……

 おじさんや姉さんがいないと、なんにもできないんだ……

 ごめんね……姉さん……」


 また、心が折れそうになる。


「おまえは何も悪くない」


 声に顔を上げると、襖を開けて鬼多見悠輝が入ってきた。


 梵天丸が飛びつきじゃれる。


「おじさん……」


「悪いのは油断していたおれだ」


 悠輝は梵天丸を放して頭を下げた。


「ごめん、朱理。おまえをまた危険にさらした。そのせいで庇った御堂が傷ついたんだ。

 人助けどころじゃない、おれが先ずしなければならないのはおまえを守ることだった」


  ちがう、わたしは誰かに守られるんじゃなくて、誰かを守れるようになりたい……


「おまえの傷も魔物のしゆがかかっている」


「えッ?」


 薬師如来真言で応急処置はしたはずだ。


「呪は傷とは別物だ、そっちはそっちで対処しないといけない」


 滲んだ血がすでに乾いている朱理の肩に叔父は手を置いた。


「おまえは熱と相性がいいからな。

 ノウマク・サンマンダ・バサラダン・センダンマカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カン・マン!」


「ウッ」


 悠輝が不動明王のしゆを唱えると傷口が熱くなった。彼が言った通り朱理の験力は炎と相性がいい、そのため彼女は熱に対して非常に強い。


 だからこれだけ『熱い』と感じたのは久しぶりだ。しかし、それは火傷すると言うよりは何かを引き千切られるような痛みに似ている。だが痛みは一瞬で、それが終わると身体が軽くなった。


 刹那のことに気を取られていたが、朱理も調子がおかしくなっていたのだ。


「朱理、服を着替えてこい、おれは御堂を診る」


 クローゼットから新しい服を取り出すと朱理は脱衣所で着替えて急いで自分の部屋に戻った。


 刹那のかたわらに悠輝は寄り添うようにしてしゃがみ、眉間に深いしわを刻んでいた。滅多に見せない深刻な表情だ。


「おじさん、姉さんは?」


 嫌な答えを予感して声が震える。

  

「かなり悪い……しゆがだいぶ進行している。強引に解けば御堂の身体が持たない」


  どういうこと? 姉さんは助からないの……


「正直、おれじゃムリだ」


 眼の前が真っ暗になる。


  そんな……お母さんはハワイだし、おじいさんも郡山にいる。どっちもすぐに来られない……


 叔父が頼みの綱だった。


「なんとかならないのッ。わたし、何でもするから!」


 もうこらえることができない、涙が溢れ出した。


「お願い……お願いだから、おじさん……姉さんを助けて……」


「落ち着け、朱理」


 悠輝は立ち上がり、朱理をなだめた。


「あくまでおれ一人の験力ちからじゃムリだってだけだ」


 朱理は顔を上げた。


「わたしとボンちゃんの験力があれば助けられるッ?」


 叔父は首を左右に振った。


「それでも足りない。だから、お母さんを呼べ」


「ふざけないでッ、お母さんはハワイに……」


「関係ない。例え宇宙の果てにいたって、おまえの心の叫びをお母さんが聞き逃すはずがない。

 だから全力でお母さんに助けを求めろ、必ず力を貸してくれる」


  そんなことが……


 叔父は本気で言っている、それに朱理にできることは他にない。


  おかーさーんッ、助けてー!


 朱理は験力を込め、心の中で母を呼んだ。


  姉さんが死んじゃうッ!


 何度も何度も繰り返し叫び続ける。しかし、母からの返事はない。


「ダメだよ……やっぱりお母さんはこたえてくれない……」


 悠輝は静かな瞳で朱理を見つめている。


「おじさん! このままじゃ姉さんが……」


  うるっさいわねッ、何時だと思ってるの!


「うわぁッ!」


 頭の中に遙香の不機嫌な声が響いた。


「やっと起きたか」


「え? お母さん、寝てたの?」


「そりゃそうだろ、日本よりハワイは一九時間遅れている。向こうは夜中の一時過ぎだ」


 悠輝がケロッとした顔で解説する。


  だから自分で呼ばなかったんだ……

 

 母は寝起きがもの凄く悪い。


「なるほど、随分厄介な状況ね」


 口が勝手に動いて不機嫌な声が出る、遙香が朱理の身体を使っているのだ。


  この感覚、知っている……


 以前、朱理は母の験力で彼女の記憶を追体験したことがある。その時の感覚に似ているが、今の方がもっと生々しく遙香を自分の中に感じる。


「朱理の記憶でどこまで把握した?」


  えッ? わたしの記憶、読まれてるの?


「非常事態だから仕方がないでしょ?」


 また朱理の口を使って母が話す。


「だとしても先に言って!」


「そんな余裕はないわ」


 まるで腹話術みたいだ。


「揉めるのは後にしてくれ。姉貴、それでどこまで解った?」


 母が沈黙する。


「そうね、先ず朱理を襲ったのはただの魔物じゃないわね、式神か憑きものか……」


「式神?」


 叔父が眼を細める、心当たりがあるのだろうか。


「打ったのは誰か判るか?」


「そこまではムリ。ただし、死にかけた一体が消滅の間際にしゆをかけたのは判った。これは厄介ね」


「解けるか?」


「あたしをダレだと思ってるの?」


「法眼の娘」


 叔父の言葉に母が不機嫌になるのを感じた。


  おじさん、余計なこと言わないでよ!


「悠輝、カワイイ姪があんたのせいで困っているわよ」


「だからお母さんッ、かたっぱしから心を読まないで!」


「しょうがないでしょ、あんたの中にいるんだから」


「う~」


 とにかく今は刹那を助けるのが先だ、文句は後から言おう。


「朱理の身体ではやりたくないな、まだ呪のダメージが残っているから」


「わかった、おれに取り憑けるか?」


「人を悪霊みたいに言わないでよ!」


「御託はいいから、できるなら早くやってくれ」


 突然、母の存在が朱理の中から消えた。


「う~ん、やっぱり弟より娘の方が相性がいいわねぇ」


 自分の身体のあちこちを見ながら、叔父が母の口調で言った。


 叔父に母の姿が重なって視える。


「験力に問題はないな?」


「問題は無いけど、あんたも式神にやられてんじゃない」


  おじさんも襲われた……?


 どういうことだろう、今日も信者を脱会させにどこかの宗教団体に行っていたが、そこにたまたま呪術師がいたのだろうか? それとも鬼多見家に怨みを持つ者が仕組んだ罠だったのか?


 アークソサエティの残党や刹那にふくしゆうしようとして邪魔されたあしみちなど、叔父だけでも相当怨まれているはずだ。それに祖父を恨んでいる者を加えたら天文学的な数になるかもしれない。


「誰がやられたって? あの程度の式神、おれの敵じゃない」


「派手に地面に叩き付けられたでしょ」


「えッ? おじさん、だいじょうぶなの?」


 そんな素振りはまったく見せなかったが、悠輝も怪我をしたのか。


「だいじょうぶよ、かすり傷一つ負ってないから。それにしても、我が弟ながらバカみたいに頑丈ねぇ」


 呆れたような声を上げる。


「『バカ』は余計だ。

 おれのことはいいから、御堂を何とかしてくれ!

 姉貴が担当している声優だろ」


「わかっているわよ。こんな姿、社長と早紀ちゃんに見せたら二人とも卒倒するわ」


 悠輝に重なっている遙香は改めて刹那を観察する。


「さすがに時間がかかりそうね。朱理、タンスの上にあるこけしを持ってきて」


 朱理は急いで奥の部屋へ行きこけしを取ってきた。


 悠輝は受け取ると指先のかさぶたがして、こけしに血で梵字を書き始めた。その梵字には叔父だけではなく母の験力も込められている。


しんぺんだいさつ真言を使うわ」


「わかった」


 悠輝は刹那の手にこけしを握らせると、傷がある刹那の背中に片手で触れ、もう一方の手で印を結んだ。


「オン・ギャク・ギャク・えんのそく・アランギャ・ソワカ

 オン・ギャク・ギャク・役優婆塞・アランギャ・ソワカ

 オン・ギャク・ギャク・役優婆塞・アランギャ・ソワカ……」


 神変大菩薩とは修験道の開祖である役小角のもう一つの名だ。


 悠輝と遙香は何度も繰り返し真言を唱えた。


 朱理には刹那にかけられた呪が少しずつこけしに移動していくのが判った。


  昴だ……


 遙香の姿が重なっている悠輝を視ていてふと気が付いた。


 己の力に飲まれることなく誰かを救うことができるヒーロー、それは自分ではなく叔父だ。


 朱理は今も悠輝と遙香が刹那の呪を解くのを、指をくわえて見ていることしかできない。


 落ち込んでいるとインターホンが鳴った。こんな時間にと疑問に思ったが事務所に刹那のことを連絡したのを思い出し、慌てて玄関を開けた。


「社長……荒木マネージャー……」


 そこには刹那の伯母でプロダクションブレーブの社長である中川好恵と主任マネージャーの荒木早紀が立っていた。


「永遠、だいじょうぶ?」


 早紀が心配そうに声をかける。


「ごめんなさい、わたしのせいで姉さんが……」


 また涙が溢れてきた、泣いてゆるされることではないのに。


「あなたが悪いんじゃないわ。それよりせっちゃんは?」


 好恵が優しく永遠に言った。


「叔父と母が、姉さんにかけられた呪を解こうとしています」


「先輩、帰って来たのッ?」


 早紀が眼を丸くする。


「いえ、魂だけ……とにかく上がってください」


 朱理は二人を中へ案内した。


「オン・ギャク・ギャク・えんのそく・アランギャ・ソワカ

 オン・ギャク・ギャク・役優婆塞・アランギャ・ソワカ

 オン・ギャク・ギャク・役優婆塞・アランギャ・ソワカ……」


 母と叔父は服の上から刹那の傷口に触れ、神変大菩薩真言を一心に唱え続けている。好恵と早紀が部屋に入ってきても振り向きすらしない。


 彼女たちには悠輝が一人でやっているように見えるだろう。


「あと、どれぐらいかかるの?」


「わかりません、かなり呪が強いみたいで……

 それで母を呼んだんですが、もう三〇分ぐらいはやっています」


 好恵が邪魔しないようにとの配慮から小声で聞いたので、朱理も小さな声で答える。


「傷自体はどうなの?」


 朱理は一瞬、言葉に詰まった。


「かなりヒドいです。わたしが真言で応急処置はしたので血は止まったみたいですが……傷跡が残るかもしれません」


「……そう」


 眼を伏せて好恵が返事をした。


「そう言うあなたの怪我はどうですか?」


「わたしは大したことはありません」


「それは私たちが判断することよ、永遠ちゃん」


 早紀の問いに答えた朱理をたしなめるように好恵はいって、廊下に彼女を連れ出した。


 朱理は言われれるままに上着を脱ぎ、両肩にできた傷を見せた。


 好恵と早紀が代るがわる傷口を確かめる。


「出血も止まっていて目立つとまでは言えませんが、痕は残るかも知れませんね」


 早紀の言葉に好恵は頷く。


「永遠ちゃん、刹那と一緒に必ず明日病院で診てもらってくるのよ。もう、あなたの身体はあなただけの物じゃなく、プロダクションブレーブの大切な資産でもあるんだから」


「はい……」


 改めて声優になったことで生まれた責任を感じる。


 更に三〇分以上経ち、ようやく悠輝と遙香の真言が止んだ。刹那にかけられた呪は完全にこけしに移されたのだ。


「これで刹那がしゆで命を奪われることはないわ。社長、早紀ちゃん、申し訳ありませんでした」


 遙香と悠輝が頭を下げる。


「これは完全におれの判断ミスです。遙香と朱理に責任はない」


 再び悠輝が深々と頭を下げた。


 それを見て、早苗と早紀は変な顔をした。彼女たちには悠輝が口調を変えて二回謝ったようにしか見えないからだ。


「最初に謝ったのが母で、二回目が叔父です」


 朱理は説明を加えると、納得したように二人は頷いた。


「まぁ、責任問題については落ち着いてから話しましょう。

 いいわね、鬼多見さん」


「はい、覚悟はできています」


 悠輝は真っ直ぐ好恵の眼を見て答えた。


 彼女は頷くと、


「問題は永遠ちゃんを襲った相手だけど、目星はついているの?」


 と尋ねた。


「心当たりはありますが、まだ確証はありません」


「また襲われる可能性は?」


 今度は早紀が尋ねた。


「確実に襲ってくるはずだ。だから決着がつくまで、朱理の活動は休止させて欲しい」


 抗議をしそうになったが、すんでのところで思いとどまる。たしかに返りの風が吹くと、周りの人たちを巻き込む可能性が高い。


「どれくらい時間がかかるの?」


「心当たりが正しければ明日にでも。

 もし違っていても、近い内に向こうから動いてくる可能性が高いから、長くても十日程度で終わらせる」


 悠輝の眼がギラリと光る。


 朱理は内心、『デーヴァ』の初打ち合わせまでには間に合うと安堵した。


「そうね、悠輝くんならすぐに……」


「ちょっと早紀ちゃん、遙香先輩を忘れないでよ。娘の命を狙われて、担当の声優まで傷物にされたのに、このままオメオメと引き下がるわけにはいかないわ」


 早紀がまた戸惑った顔をする。


「お母さん、こんがらがるから社長と荒木マネージャーの前では黙ってて」


「なッ」


 物凄く不満そうな顔をしたものの、母は一応口を閉じた。


 悠輝は事件が解決するまで、朱理と連絡も取らないよう好恵と早紀に頼んだ。返りの風から二人を守るためだが、それで安全とは限らないことも付け加えた。朱理との関係が知られている可能性は高いので、そのためにターゲットにされる恐れもある。


 本来なら好恵と早紀もここにいてもらうと守りやすいのだが、小さな芸能事務所の社長と敏腕マネージャーが不在では仕事にならない。


 ならば一時いつときだけでも関係を絶っていた方が良いという判断だ。もちろん、何かあった際にはすぐに連絡するよう釘をさし、二人には帰ってもらった。


「よし、取りあえずはこけしを始末すれば一段落だな」


「じゃあ、あたしは寝直すわ」


 眠そうな口調で遙香が言う。


「ありがとう、姉貴。後はおれがやっておく」


「ふん、後はおれがやる?

 悠輝、何でも自分だけで背負いこむのはやめなさい」


「わかってる、だから朱理に姉貴を呼ばせた」


 顔をしかめて答える。


「遅いのよッ、朱理があんたに電話したときにあたしを呼べば、寝る前に方が付いたのに!」


「悪かったよ、次はもっと早く頼む」


「ホントにわかってる? それと朱理、あんたもよ」


「はいッ?」


 いきなり矛先が自分に向けられ声が裏返ってしまった。


「すぐに無力だとか言っていじけるけど、修行を始めて二年半、しかも学校だけじゃなく声優活動までして、そんな状態でもう一人前になったつもり?」


「そ、そんなこと……」


 決して自分はおごっていたわけではない。


「傲っているでしょ! お母さんとおじさんがどれだけ苦労して修行したと思ってるのッ?

 おじさんなんて特にできが悪かったから、毎日爺ちゃんに怒られまくって……」


「姉貴はおれが験力に覚醒したとき、もう寺にいなかったろ!」


  あれ? なんか脱線し始めた。


 この姉弟の会話はすぐに目的地を見失う。


「あんたの記憶を視たもの」


「視るなよ勝手にッ!」


 悠輝が顔を真っ赤にする。


 完全に朱理は置いてきぼりだ。


「だから、あんたの中にいるんだから仕方がないでしょ。それに記憶を視なくたって、つい最近も毎朝爺ちゃんにボコボコにされてたじゃない?」


「されてない!」


「いや、家族みんなが見てるし。

 にしても、どうしてあんなにボロボロにされてすぐに回復できるの?

 さすが鬼多見法眼の一人息子ね、化け物染みてるわ」


「うるさいッ、鍛え方が違うだけだ!

 ってか、ムダ口叩いてないで帰って寝ろよ」


  鍛えても人間には限界があると思う……


 叔父の頑丈さは限界を超えている。


「言われなくたって帰るわよ。

 あ、それと朝一番でそっちに戻るから、あたしが着くまでムチャするんじゃないわよ」


 この言葉に朱理は驚いた。


「ダメだよッ、せっかくお父さんと二人で旅行してるのに……」


「あんたね、娘の命が狙われているのに海外旅行を楽しめるわけないでしょう?」


「でも!」


「だいたい、お父さんがゆるさないわよ」


「お父さん、寝ているんでしょ? お母さんが言わなければ……」


「起きてるわよ」


「えッ?」


「帰国するチケットの手配をして、帰り支度を終えたところよ。

 チェックアウトをする時間まで、お母さんは寝る。

 じゃ、お休みなさい」


「お、おやすみなさい……」


 叔父にダブって視えていた母の姿が消えた、遙香は嵐のように去って行った。


「さてと、朱理、こっちはまだ仕上げが残っている。おまえの出番だぞ、まず御堂の服を替えてやってくれ」


 刹那は背中を切り裂かれた服のままだ。


 悠輝が梵天丸を連れて部屋を出たので、朱理は刹那の服を着替えさせた。


「ごめんなさい、姉さん……」


 自分の肩のことなど忘れて、朱理は刹那の傷跡が残らないことを祈った。


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