県道61号線
幸運にも路はそれほど混んでいない、法定速度を無視して天城はC-HRを飛ばしていた。
現在、彼女は千葉県の県道61号線を走っている。
バックミラーで後ろを確認すると、悠輝の隣でシートベルトで固定された輔がグッタリしていた。
輔は一度クルマの中で意識を取り戻したのだが、教団へ帰ると騒ぎだし、やむなく悠輝が呪術で眠らせた。
「三瓶、済まない。おれを稲本に運んだら輔くんを……」
「すまないと思うなら名前を覚えろッ、ボクは天城翔だ!」
悠輝は心底ウンザリした顔をした。
「こんな状況でもブレないな、おまえ……」
「バカ者ッ、名は体を表すという言葉をしらんのかッ?」
「三瓶でも二瓶でも一瓶でも一緒だろ?」
「違うわ! って、その例おかしいだろッ。なんで天城がないッ?」
「だからどうだっていい! スピード出し過ぎてんだからちゃんと集中しろ」
「ボクをダレだと思っているッ? 名探偵天城翔だぞ、名前も満足に覚えられないヤツと話しながらだって運転ぐらいできる!」
「名探偵と関係あるかッ」
「名探偵に不可能はない!
だから安心しろ、ちゃんとキミを刹那ちゃんのところへ届けてやる。その上で輔クンはボクが林さんに責任を持って返す」
悠輝は苦笑した。変人だが天城は本当に頼りになる。
「頼んだ」
稲本までもう少しだ。