転生、失敗?
「では、あなたを転生させますが…これまでのお詫びに、好きな世界を選ばせてさしあげますね」
一通り泣き倒してスッキリしたところで女神さまは仕切り直した。
「あと、見た目や、固有能力、才能などなどオーダー出来ますがどうしますか?とりあえず全部能力値MAXにしちゃいます?」
「そんなのも選べるんですか……」
「本当はナシですよ!でも、今回のは私のミスですし…本当に申し訳ないと…思ってますので…次の人生では幸せに…自分から望んで命を絶つなんてことの無いように…」
女神さまは真剣な瞳を俺に向けると悲しげに目を細めた。
「俺は…」
「はいはい。どうします?」
「俺は…いいです…。」
「…へ?」
「俺は、今まで自分が居るべき所じゃない世界にいた。だから、居てもいい…存在していてもいい世界に生きられたらそれでいい…他は何も望まない…」
「…!?いいんですか!?あなたが望めば巨万の富も、永遠の命も、力も何もかもが手に入るんですよ!?こんなこともう二度とありませんよ!?」
「うん…いいです。それにそんなの、なんかズルいし」
「はあ〜…聖人…というか変人…ですね…。まあいいでしょう。あなたがそれでいいと言うのなら。」
そう言うと女神さまは右手の人差し指を俺の額にピタリとくっつけた。
「では、あなたが今から転生する世界は、魔法や不思議な生物、力に溢れる世界。固有の能力なんかは私の方で決めてしまいます。いいですか?」
「はい。お願いします。」
俺が頷くと、俺の体を光が包み込んだ。温かい、心地良い光だ。
「では…もうきっと会うことはないでしょうけど…どうか幸せな人生を…」
女神さまのその言葉を最後に、視界の全てを光が包み込み、そこで俺は意識を手放し…。
「あ、ヤバ…」
前言撤回。
女神さまのその言葉を最後に、そこで俺は意識を手放した…。
おい、なんだよ!なにがヤバ…なんだよ!女神さまー!!!
俺の叫びは女神さまに届くことはなかった。