プロローグ
俺の人生はあと、ほんの数分で終わりを迎えるだろう。
「夜中の高層ビルの屋上なんて、そうそう来ないからなぁ…夜風が気持ちいい…」
俺は今、高層ビルの屋上にいる。何をするためかって?それはもちろん
死 ぬ た め だ
自分の意思で、俺はそれを…自分の人生を終わらせることを決めた。
いや…こんなはずじゃなかったんだ。本当は。
本当は、死にたくなんてないし、でも、だからといって生きていたくもない。
学生時代も、そして社会に出てからも居場所の無さを感じてた。友人もできず、親ともうまくいかず、いつも一人だった。
ここにいるのに、ここにいない、どこにも居ていい場所がない。そんな心地悪さをいつも感じてた。自分は存在していてはいけないんじゃないか…そんな思いがいつもいつも、何年も俺の中でぐるぐる渦巻いていた。
でも、それも今日で終わる。いや、終わらせるんだ。
最後の決め手は今日言い渡された「クビだ」の、一言だった。
自分なりに精一杯、会社には貢献してきたつもりだった。残業も、休日出勤もやってきたし、俺の人生はほとんど仕事に捧げていたと言っても過言ではない。
生まれてこのかた一度も恋人なんてできたこともないし、これといった趣味もないのだから、まぁ仕事しかすることがなかった、と言った方が正しいかもしれないが。それでも、そんな仕事からも「不要」とされた自分にはとても存在価値があるなんて思えなかった。
そう、この世界から俺は不要な存在なんだ。
その事実は、俺の今までの人生の中で、一番俺の心を深く深く抉った。
だからもう、終わりにするんだ。
そして、俺は強く足元を蹴った。
………………………ああ、世界よ、さようなら。