赤井流星 その18
中に入ると、一汗かいた後のミツマメが、そこにいた。
長い髪を1つに束ね、黒のローブを羽織り、キセルを口にくわえている。
「よくここまで来たわね、赤井流星。 ……吸い込まれそうな、白い肌ね」
「……ゴク」
10メーター以上離れてんのに、威圧感がハンパない。
だが、逃げる訳にはいかねー。
俺は、拳を握り固め、前へと踏み出した。
「あんたに、聞きたいことがある」
「……何かしら」
「以前、ここにチズルとヒロハルっつー人間が来ただろ。 今、2人はどこにいる?」
「……」
俺の問には答えず、タバコを薫らすミツマメ。
「答えろ!」
「2人をどうするかは、議論が分かれてたとこ。 今、こっちの世界から、人間界に乗り込もうとしてる輩がいるんだけど、そいつらの進行中止を求めて、ある男が私に賭けを持ちかけて来たの」
何を隠そう、メロンパンのことだ。
だが、賭けには負けて、メロンパンは死んだ。
オードリーの映像も、中途半端な所で途切れてて、その後どうなったかは分からない。
「結局、賭けには私が勝った。 だから、約束通り、人質の2人をウチで経営してるファストフード店の数量限定バーガーにしようと思ったんだけど……」
この案件を釜の協議会に提出した所、意見が割れたらしい。
ちなみに、釜の協議会っつーのは、この世界を統べる7人のオカマ達の議会のことだ。
「人間擁護派の議員たちが、猛反対してね。 だから、昨日、妥協案を提出して、それが受理された」
「妥協案?」
「人質を2つに割って、1人は助けるけど、もう1人は予定通りバーガーにするわ」
「……もう1人って、どっちだ」
「女の子の方よ」
俺は、ミツマメに詰め寄り、胸ぐらを掴んだ。
「どこにいるっ! 居場所を教えろっ」
「無駄よ」
……な、んだ?




