赤井流星 その17
「あれか」
俺は、ドローンを操作して、世界樹の上空までやって来た。
既に辺りは暗く、電気の明かりが街に瞬いている。
空を飛ぶ巨大なスタジアムが見えるが、あれはトカゲの会場か。
そして、街の都市部に、一際でかい建物がある。
ヒルズタワーだ。
その頭頂部に、ヘリポート的なスペースがあるのを確認すると、俺はそこに着地すべく、ドローンを降下させた。
ハンドルを操作し、上手いこと地面に降り立つ。
外に出ると、強い風が吹き荒れている。
「うぶっ、毛が引っこ抜けるっつの」
ヅラだったら間違いなく飛ばされてるわ。
まあ、その心配は当面しなくてもいいだろう。
風に飛ばされないよう注意して、ヘリポートから階段を下りる。
一段下に下がった箇所に、内部に面する自動トビラがあるが、例のごとく、カードが無ければ入れない。
「……っし」
カードをリーダーにかざすと、トビラが開いた。
ヘリポートのフロアからもう一段下がった所が、居住区では最上階のフロアらしい。
非常階段から共用通路に出ると、赤いカーペットが床に敷かれている。
この一室に、ミツマメがいるはずだ。
通路を直進し、十字路までやって来ると、壁からほんの少し顔を出し、確認。
左手にはエレベーター、右手には、ミツマメの部屋だ。
その扉の前には、黒ずくめのチャラ男っぽい奴が両脇に立っている。
(ホシガキから、俺の名前がミツマメの耳に入ってるハズだ)
名前を出せば、通してくれるか?
……ここまで来て、引き返せねーしな。
「……ん?」
黒スーツ2人が、俺に気付く。
「あー、高級男娼クラブの、赤井流星っつー者っす。 ミツマメさんに、会いたいんすけど」
「赤井、流星? ……少し待って貰っても構わないか?」
「全然、いっすけど」
部屋ん中で会議でもしてんのか?
すると、扉越しにおぞましい声が聞こえてきた。
「んがあああーーーっ」
「んふぅ! んふぅ! んふぅ!」
な、何だ……
ものすげー悲鳴と、おっさんの喘ぎ声が同時に聞こえて来たんだが。
しばらくして、黒スーツが耳に手をかざし、部屋の中へと入っていった。
5分くらい待ってると、扉が開いた。
黒スーツが担架を担ぎ、そこには全裸の男が乗せられている。
ピクピクと痙攣しており、血の気が失せている。
そして、声がした。
「入りなさい」
「……マジ、かよ」
俺は、恐る恐る、中へと足を踏み入れた。




