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メタリック・ファンタジー  作者: oga
番外編
95/105

赤井流星 その15

「サンキュー、しばらく戻ってこねーかもだから、ちょい待っててくれ」


「了解です」


 作業員を残して、戦車から下車。

雪道をザクザク歩いて、ドーム状の基地局に入ると、通路を進んだ後、奥の小部屋の扉を開けた。


「……っと」


 真っ暗な部屋の足元に、ポッカリと大きな穴が開いている。

うっかり進んだら、あーれーっつって落ちちまう。

とはいえ、俺の考えじゃ、ここからダイブしても死にはしない。

この穴が魔族の世界に繋がっているんなら、境目に重力が発生していることになる。

だから、ここから落ちても、発生している重力の中心で止まって、身動きが取れなくなるだけだ。


「そこから這い上がるには……」


 俺は、リュックから吸盤を取り出した。

こいつは、掴む所の無い壁面をよじ登るためのもんで、宇宙船の外壁が損傷した場合に使う。

ちなみに、手元のスイッチで、吸盤を付けたり外したりできる。


「さーて、行くぜっ」


 俺は、穴に飛び込んだ。







「ひいいいーーーっ」


 俺は、情けない声を出しながら、穴を落下していく。

よくよく考えて、絶叫系の乗り物とか超嫌いだし、バンジージャンプなんてもってのほかだったのを、今思い出した。

落下したかと思いきや、今度は飛び上がっている感覚。

そして、空中で静止して、また落下。


「い、いひぃっ」


 どこから声が出てんのか、自分でもよく分からない。

子供が祭りで釣ったヨーヨーを激しく振り回してるみたいな状況で、脳みそがグチャグチャになりそうだ。


「……あれ」


 数回、飛んだり落ちたりを繰り返す内に、完全に静止していることに気付いた。


「い、生きてたか…… うぶっ」


 ものすげー吐き気に見舞われ、その場でゲロった。

そのゲロは丸い球体となり、その場にとどまる。


「……俺の考えは正しかったか」


 平泳ぎで壁に取り付くと、手にした吸盤を貼り付けた。


 


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