赤井流星 その14
更に翌日、ルネサンス運輸の社長宅に向かい、俺の体から分泌されるフェロモンを使って、奴を仲間 (どっちかってと、僕?) に加えた。
「何なりとお申し付け下さい」
会った当初は、俺のことをやらしい目で見てたこいつも、今は忠実な部下って感じだ。
「ヤマダ、だったか。 おめー、雪道の移動手段とか持ってねーの?」
「もちろん、ございます。 我がルネサンス運輸は、森の街だけでなく、スノーポイントの沿岸にある港町から、海産物を運搬する仕事も請負っております」
その区間を移動するため、キャタピラ付きのハムスターを動力にした車を数台所有している、とのことだ。
「したら、1台貸してくんねーか? ちょっとやりてーことがあんだわ」
俺のやりたいこと。
1つはヒロハル、チズルをこっちに連れ戻すことだが、途中、もう1個やりたいことが増えた。
「あの、クソチビメガネをぶっ潰す」
商売で、あいつを負かしてやる。 その為には、ドラゴン観光よりも魅力的なツアーを計画しなきゃならない。
一晩考えて、俺はあることを閃いた。
スノーポイントには、空から降ってくるコアを採取するための基地局がある。
以前、メロンパンらが、その基地局の修繕に当たっていたが、そこには、魔族の世界へと続く穴がある。
その穴を利用して、魔族の世界へのツアーをやったらどうか? という考えを打ち出した。
「ってな訳で、協力してくんね?」
「容易い御用です」
その日はヤマダんちに泊まって、明け方、馬車を使ってスノーポイントへと戻って来た。
もちろん、今回は強力な護衛付きで、ゴブリン共は襲って来なかった。
俺は、宿に寄って、ホシガキに事情を説明した。
「ミツマメに会いに行くのなら、持って行きな」
渡されたのは、カードだ。
どんなセキュリティの扉も解錠できる、マスターキーらしい。
メタル通りを通過し、何もない一面雪の地帯にやって来る。
そこには、ヤマダの手配した戦車が1台、置かれていた。
「ヤマダ社長、おはようございます」
「うむ。 早速だが、こちらの赤井様を乗せて、復旧工事中の基地局に向かってくれ」
「分かりました」
作業員風の男の運転で、基地局へと向かう。
さて、無事に帰れるかな。




