赤井流星 その13
ドアノブを捻って、中に入る。
……ねぇ。
部屋は一部屋で、壁には何も立てかけられてない。
終わった。
仕事道具の斧がどこかにあることを期待したが、その望みは絶たれた。
俺はこの後、こいつにいいようにされて、抜け殻みてーになっちまうんだろう。
なんっつー人生だ。
やっぱり、家から出るんじゃ無かった。
こうなるって分かってたら、親に出てけと言われても、土下座でも何でもして居残る道を選ぶべきだった。
「もーおそいよねー」
後悔しても、もう遅い。
腹は決まった。
どうぞ、ご自由に。
俺は、ダイクの方に向き直った。
手を広げ、カモンと煽る。
「とっととやろー」
「あなた様に、我が身を捧げまする」
「……は?」
ダイクの奴が、何故か地面に片膝を着いて、頭を垂れている。
何だ、こいつ。
一体、何が起きた?
「何だよお前、一体どーした?」
どこぞの王子様が、お姫様にプロポーズしてるみたいな格好だ。
「そういうプレイか? 俺がお姫様をやんのか?」
「王子様などと、身に余るお言葉。 私はあなた様の僕でございます」
急にどーした。
意味、分かんねーぞ。
その日は何事もなく、俺は宿屋に戻った。
それから、ホシガキに事情を説明。
「……予想以上だわな」
「説明しろよ。 ダイクのキャラが変わっちまった理由は何なんだ?」
「フェロモン、さ」
フェロモン?
虫とかがオスを呼び寄せる為にまき散らす、アレか?
俺は、昆虫かっつーの。
「お前さんの体からは、オスを呼び寄せるフェロモンが分泌されているんだわ。 それを長時間浴びて、ダイクはお前さんの虜になっちまったんだ」
信じられねーんだが。
男から好かれる雰囲気とか、そういうんじゃねーの?
……でもマジで、俺の体からフェロモンが分泌されているとなると、どーすりゃいい?
「次の相手は、ルネサンス運輸の社長だわな。 気に入られたら、たらふくチップを弾んでくれるかもね」
ルネサンス運輸社長、ヤマダ。
……こいつは、利用できるか。




