赤井流星 その10
このリストを上から潰して行けば、ミツマメの野郎にたどり着けんのか。
「……マジかよ」
俺は、相手に聞こえない位、ちっさい声で呟いた。
「やる気、出しちまったかい。 でもまだ、客先に出せるクオリティじゃないわな」
「何だよ、クオリティって」
「接客とか、言葉遣いがなってないって言ってんのさ。 今日から短期集中レッスンに入ってもらうわな」
ホシガキは、机の下に置いてあったお玉を二つ掲げて、やかましく鳴らし始めた。
すると、背後の扉が開き、何者かが出てきた。
「ふつーに呼んで下さいよ」
現れたのは、金髪にジーンズ、スニーカーという出で立ちの男だ。
つか、この世界でジーンズって。
まさか、な。
「エルビス、この子にイロハを叩き込んでやんな」
エルビスは、無表情で俺のことを一瞥すると、ボソリと言った。
「……分かった」
宿屋から出ると、エルビスが歩き始めた。
一体、どこに向かうつもりだ?
イロハをたたき込むっつーことは、ホシガキが言ったみたく、接客、話し方、あんなことやこんなことを教え込まれるっつーことだよな?
……どうせ教わるなら、すげー美人とかが良かったわ。
とかなんとか、叶わぬことを考えていると、エルビスが振り向きもせず言った。
「お前、よそモンだろ?」
……!
こいつ、やっぱり……
「そういうアンタこそ、違う星から来たんじゃねーの? ジーンズにスニーカーなんて、ここにはないぜ」
「そこの猫カフェで、話しよーぜ」
猫カフェに入り、席に着くと、二足歩行のキモい猫がコーヒーを運んできた。
なんか、俺の思ってた猫カフェとちげーんだが。
「で、何で男娼なんてしてんだよ」
「早い話が、金さ。 短期間で高収入だし、そもそもここの世界の仕事って、体力勝負みたいなのばっかで出来ないんだよな」
多分、こいつも宇宙船か何かに乗って来たんだろうが、トレーニングをしてなきゃ、筋力は衰える一方だ。
確かに、木を切ったり、そういう仕事はこいつには向いてなさそーだ。
「あと、色白がモテるっぽいよ、ここじゃ」
……俺が見込み有り、みたく言われたのは、そういう理由か。
「だからって、よく男娼なんかやるわ。 俺ならぜってーやらねーよ」
「まともにやってたら、続かないと思うけどね」
……どういうことだ?




