赤井流星 その9
顔面に、雪が降りかかる。
俺は、なぎ倒された。
「社長には指一本、触れさせんよ」
イッテツが、俺とメガネの間に割って入り、足払いを仕掛けて来やがった。
胸倉を捕まれ、苦しい。
「ぐっ、ぐるじい」
メガネが、俺を見下す。
他の客どもまで、ゴミを見る目で俺のことを見ている。
「ミナトさんは、こんなに弱くない」
耳元で、メガネが呟いた。
誰もいなくなった雪原地帯で、俺は寝そべっていた。
「……」
目から、とめどなく涙が流れる。
あんな風に、思い切りなぎ倒された経験は初めてで、面食らった。
そして、一切、やり返せなかった。
「ざっこいなー、俺」
こうなるまで、俺はメロンパンとは違うと思っていた。
俺はもっとスマートに活躍できる。
そう思い込んでいた。
だが、これが現実。
メロンパンは、俺を見返したい一心で、辛い体験を乗り越え成長した。
壁の修繕もできる様になったし、ランプの交換もできる。
仲間の中では、気付いたらリーダー的な役割もこなしていた。
「……それなのによ」
俺は、その仲間の中でも最弱の、メガネにすら敵わない。
「……」
しばらく空を見つめていたが、俺はある決心をして、立ち上がった。
今、立っているのは、ホシガキの宿の前だ。
扉を開けて、カウンターに向かう。
「……仕事がしたい」
テーブルの向こうにふんぞり返っていたホシガキの目が、丸く見開かれる。
「……まさか、本当に来るとは思わなかったわな。 あんた、覚悟はあるのかい?」
「ああ」
「……」
ホシガキは、引き出しから一枚の紙を取り出すと、俺に渡してきた。
「あんたが相手する客さ」
俺は、紙を手に取り、リストを見た。
1.木こりのダイク
2.ルネサンス運輸社長ヤマダ
3.魔族ミツマメ
ミツマメ、だと……!




