赤井流星 その8
雪原地帯まで歩いてくると、人だかりができていた。
みんな、一連に並んで、何かを待ってるみてーだ。
「……もしかして」
みんな、ドラゴンを一目見たくて並んでんのか?
それしか考えらんねーよな……
一応、列に並んで待っていると、雪原の向こうから、何かが迫って来るのが見える。
キャタピラーをゴロゴロやりながら向かって来たのは、戦車、否、雪かき丸だ。
雪かき丸が人だかりの前までやって来ると、ゆっくりと静止し、中から人が降りてきた。
ちっこいのは、メガネ。
それともう一人、ジジイ。
こいつは確か、イッテツか。
俺は、列を無視して2人に近づいた。
「では、一人3シルバーずつ払って、中に入って下さい」
「随分ぼったくってんな、メガネ。 まあ、商売繁盛してそーで良かったぜ」
「……誰、ですか」
……っと、やべぇ。
ハナの時みてーな失敗はできねー。
金の話はまずは置いといて、仲間になって欲しいことを伝えるんだ。
「俺と、手を組まねーか?」
「……それは、ドラゴン観光の従業員として、働きたいと?」
「まあ、そんな感じだわ。 仲良くしよーや」
「では、履歴書を見せて下さい。 無ければ、明日までに準備するよう、お願いします」
チビの分際で、面接官気取ってんじゃねーぞ。
……とか、口に出したらマジーよな。
気をつけてねーとだ。
ごちゃごちゃ話してる内に、周りがザワつき始めた。
これ以上、長引かせるとマズそうだ。
「履歴書が用意出来ないのであれば、あなたの今までの職歴を聞かせて下さい」
「職歴? ねーよ。 それが、何だってんだ」
すると、メガネは手を口に当てて、くす、と笑った。
「……どうりで」
「あ?」
「残念ながら、あなたを採用するわけにはいきません。 常識がなさ過ぎる」
俺は、一気に体温が上昇するのを感じた。
そして、すげーでかい声で怒鳴った。
「っざけんな、何様だ、てめえ! 俺は、ミナトのオリジナルだぞ」
「よく分かりませんが、あなたを雇うことは、爆弾を抱えるのと同じです。 常識のある方なら、例え頭に血が上りやすくとも、客先でのトラブルは避けます。 それが、会社を潰すことに繋がるからです。 しかし、あなたは恐らく、見境が無くなる」
俺は、反論するより早く、拳を振り上げていた。




