赤井流星 その6
「何なんだよ、お前っ」
「も、申し遅れた。 相部屋の下段を担当する、ゲンジだ」
ゲンジ、とか名乗るクソッタレは、あたふたとパンツを履いて、ベッドの梯子を下り始めた。
辺りには、体臭みてーな匂いが立ちこめていて、思わず嘔吐く。
「下段担当なら、上ってくんじゃねぇっ」
俺の叫びは、虚しく部屋に響いた。
既にあの男は身支度を済ませ、部屋から出て行ったらしい。
扉が開きっぱなしだ。
それより、俺の頭の中には、一つの懸念事項が浮かんでいた。
「まっ、まさか……」
俺の〇貞は、アイツに奪われたのか!?
「ふ、ふざ……」
その後の言葉を発する事が出来ず、俺は布団の上にへたり込んだ。
どうにか立ち上がり、カウンターに向かう。
ババアが声を掛けてきた。
「昨晩はお楽しみだったわな」
「……」
ブチギレそうになるのをこらえ、何とか言葉を紡ぐ。
「チェックアウトで」
「はいはい、追加で3シルバーだよ」
……は?
金、払ったし。
「前払いで3シルバー、後払いで3シルバーだよ」
聞いてねーぞ。
あんな思いまでして6シルバーかよ。
だが、金ならある。
……そういえば、部屋にリュックを置きっぱなしだ。
「ちっ…… ちょっと、待ってろ」
部屋に戻って、リュックを探す。
だが、無い。
リュックが、無い。
「ババアーーーッ」
俺は怒鳴り声を上げ、ババアに詰め寄った。
「リュックがねぇ! どこに隠した!」
「あんたが油断したのが、悪いんだろっ! ……あんたが一緒に寝てたのはね、スラム街出身、盗賊のゲンジだよ。 きっと盗られちまったのさ」
盗られただと……
ふざけんじゃねぇぞ……
俺の心臓が、バクバクと音を立てている。
「残り3シルバー払えないなら、働くしかないねぇ」
「……働く?」
「私は、こういうモンさ」
ババアは、名刺を渡してきた。
「……高級、男娼クラブ?」
「私はオーナーのホシガキだ。 あんたみたいな上玉、滅多にお目にかかれないわな。 今日中に3シルバー払えなかったら、ここで男娼として働いてもらうからね」
……こいつ、羽目やがったな。




