赤井流星 その5
「寒くなって来やがったな」
ゴブリンの追っ手から逃れ、しばらく馬を走らせると、空が白み、雪が降ってきた。
リュックからジャケットを取り出し、羽織る。
手袋があれば最高だったが、これだけでも数段マシだ。
スノーポイントに到着したのは、日が暮れ始めた頃だった。
郊外に設営されてる小屋に馬を返し、その足で街の中へと入る。
「どこだったかな」
うろ覚えの記憶で、俺は日陰雑貨店を探した。
メタル通りを進み、路地に入ると、こじんまりとした店を発見。
「日陰雑貨店」と書かれた看板を見て、どうやらここにハナがいるらしい。
しかし、クローズドの標識が扉の前に立ててある。
「……出直すか」
流石にさみーから、その日はテントはやめて、近場の一泊3シルバーの宿屋に泊まった。
一泊10シルバーの高級そうな宿もあったが、金欠になって働くのはぜってーごめんだ。
カウンターで金を支払い、いかにも壁の薄そうな小部屋に案内される。
部屋の端には、パイプで出来た二段ベッド。
まさか……
受付に戻って、うたた寝してるばばあに聞いた。
「おい、俺の部屋って、相部屋か?」
「……ん? ああ、悪いねぇ、そこしかあいてないのよ」
「ざっけんな! 知らねー奴といると寝れねータチなんだ。 金、返せ」
「……ざけてんのは、アンタの方さッ!」
突然、でかい声を出したばばあに、一瞬怯む。
すげぇ剣幕だ。
「貰った金は返せないわな。 良い勉強になったと思って、諦めな」
「……」
くそっ……
仕方なく、部屋に戻る。
それでも、腹の虫が治まらず、ウオオオオーッ、という叫び声を出した。
こんなにナメられたのは、久々だ。
あのババア、いつかぶっ殺す。
二段ベッドの上に上がり、目をつぶると、すぐにウトウトしてきた。
何か、すげぇ艶めかしい夢を見た。
裸の美女に抱きつかれて、口づけされまくる夢だ。
「や、やめろよぅ」
俺は、内心もっとやって欲しいと思いながら、そんなことを言った。
「ハアッ、ハアッ…… やめるわけ、ないじゃない」
そして、目を覚ます。
目の前に、全裸の毛むくじゃらのおっさんが横たわっていた。




