表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタリック・ファンタジー  作者: oga
番外編
80/105

ミナト

「ぷはっ」


 俺は早朝、川で顔を洗っていた。

隣で同じように顔を洗うトカゲに声をかける。


「よっ」


「……」


 トカゲは俺のことを無視し、そそくさと立ち去った。

まあ、トカゲよけの香水付けてるから、当然か。

その足で、スラムに向かうと、ヒロハルが待っていた。


「よし、行くか」


「うん」


 俺らの住んでいる、スラムの集合住宅の屋上を伝い、街の方へと向かう。

そこから、今日のターゲットを物色する。


「あんちゃん、あれはどう?」


 ヒロハルが目を付けたのは、二人組の兵隊。


「いや、あれはやめとこうぜ」


 ヘタに手を出して、バレたら殺されちまう。

でも、あいつらの腰に下げてる剣。

あれは、いつか絶対手に入れなきゃならない。

俺は、兵隊の選抜試験を受けて、ヒロハルやチズルらにちゃんとした生活をさせてやりたい、そう思っている。


「……あんちゃん、剣が欲しいなんて、思ってないよね」


「……」


 ちなみに、そのことをヒロハルに話したら、物凄い勢いで反対された。

兵隊らは、街の治安維持を理由に、やりたい放題やってる。

特に、俺らスラム出身者に対しての扱いは、酷い。

この前も、あんちゃんもあんな風になるの? なんて言われちまった。


「いいから、他の奴、探せよ」


「……」







 結局、今日の収穫は無かった。

日に日に、稼ぎが少なくなってる気がする。

仕方なく、ルネサンス運輸の社長宅から盗んだ缶詰で、空腹を満たす。


「……これも、飽きちまったな」


「じゃあ、明日はワッカケーキ、貰ってこようか?」


 それも、飽きちまったよ。

俺は、腰を上げて、カナリヤのじじいの所に行くことにした。


「どこ行くの?」


「カナリヤのじじいに、めぼしい話が無いか、聞いてくる」


 出入り口に置いてある荷物をどかし、物置から出ると、通路の定位置に座っている、カナリヤのじじいの所に向かった。


「じいさん、何か仕事ないか?」


「ミナトか。 今は、特に無いな」


「……危ない仕事でもいいからさ、頼むよ。 腹、減ってんだ」


 カナリヤのじじいは、しばらく煙を燻らせていたが、口を開いた。


「さっき、カナリヤが鳴きおった。 メタルが、森に落ちたかも知れん」


 メタルか。

ごく稀に、空からこの森にも落ちる。

メタルは一粒1シルバーで売れるし、塊なら結構な額になる。

ただし、メタルの影響で、周囲の魔物が凶暴化するリスクがある。


「サンキュー、じいさん」


「……」







 夜、俺は、酒場に来ていた。

目的は、兵士どもの剣だ。

メタルを手に入れるつもりだが、トカゲが凶暴化していることを考えて、武器が必要だと思った。


「……」


 酒で酔えば、周りへの注意が散漫になる。

だいぶ酔っぱらったのを見計らい、俺は奴らに近づいた。


「ご一緒させてもらっても、いいですか?」


「あん? 何だ、てめぇ!」


「まあまあ、楽しく飲みましょうよ」


 片手に持っていたグラスを、相手のグラスにぶつけて、乾杯する。


「……スラム出身の野郎と、飲む酒はねぇな」


 突然、男は立ち上がって、テーブルをひっくり返して来た。

こいつら、飲んだら気性が荒くなるタチか……







 相手が悪かった。

俺は、二人になぶられ、道端に捨てられた。


「へっ、スラムのネズミが」


 兵士がいなくなると、俺は起き上がった。

こういうのは、慣れてる。

とはいえ、痛いものは痛いし、下手したら殺される可能だってある。


「ってぇ……」


「ミナト、馬鹿ね」


 見上げると、そこにいたのは、チズルだ。


「剣が、欲しかったの?」


「……」


「取ってきてあげる。 だから、二度と今みたいな真似、やめてよね?」


 そういうと、チズルは兵士を追って、闇に消えた。







 朝、起きると枕元に剣が置いてあった。

……チズル、ごめんな。

俺は、その剣を掴み、トカゲの森へと向かった。


 森の深みへと進むと、トカゲとすれ違う数が増えてきた。

こんな深みまで足を運んだことは無かった。


「はあっ、はあっ……」


 汗をかいて、それを吸った服が、体に纏わり付く。


「……何だ?」


 気配を感じて振り返る。

すると、普段素っ気ない素振りを見せているトカゲが、俺のあとを付けていた。

……マズい、トカゲよけの香水が切れたか。

俺は、剣を抜いた。


 俺は、焦っていた。

無我夢中で、トカゲを切り刻んで、気付いたらどこを歩いているのかさえ、分からなくなっていた。

冷静になるべきだった。

トカゲよけの香水の元になる葉っぱなら、見れば分かったし、川を南下すれば、街に戻れる。

だが、俺はヤケを起こし、森を突き進んだ。

辺りは暗く、トカゲの不気味な鳴き声が、辺りから響く。


「くっ!?」


 俺は、足を踏み外し、崖から転落した。






 

 見たことの無い球体が、早朝、崖から落ちて亡くなった死体の元に現れた。






おわり

 




終わりました!!

感想、ダメ出しがあれば、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ