合流
奥さんに熊手を渡して、俺は外を彷徨っていた。
連絡を取り合う手段が無いため、ヒロハル、チズルがどこにいるのか、見当もつかない。
「くっそ、ミスったか」
合流地点を決めておくんだった。
こっちが本物の招き猫だったとしたら、あっちは何だったんだ?
罠だとしたら、やべー気がする。
もっぺん、招き猫を出して、2人を追うか?
そう思った直後、上から何かが迫ってくる気配がした。
「……な、何だありゃあ!」
でかい鳥。
とんびか?
俺は、巨大な鳥の突進をダイブしてかわした。
明らかに俺目がけて、突っ込んで来てた。
「何なんだよっ」
起き上がると同時に、剣を抜く。
そして、とんびの突進に合わせ、振るった。
ガアン、と爪と剣が弾ける。
相手はすぐさま上空へと退避。
旋回して、再度、攻撃する構えを見せる。
そんなことをしてる内に、人が集まってきた。
見世物じゃねぇし!
「あはは、鳥に襲われてる」
「うるせっ」
俺は、一礼してから、剣を振った。
が、出て来たのは、煙り?
スカ、か?
それに気を取られてる内に、肩を鷲づかみにされ、俺は宙を舞った。
「わああああああーーーっ」
とんびのやつは、俺をどこに運ぶ気だ?
バッサバッサと羽ばたいて、俺は都市の上空を飛んでいた。
しばらくして、視界に映る中じゃ、一番でかい高層ビル目がけて、鳥が移動しているのが分かった。
このまま進んだら、激突すんぞ!
そう思ったものの、体は強ばり、声を発することすらできない。
いや、考えてみろよ?
肩から爪が外れたら、即死だし。
諦めて、成り行きに任せていると、とんびは最上階にある、ビルの一室に入った。
「ご苦労様」
そこにいたのは、でかいおっさんだが、ドレスを着こんでいる。
オカマ、か?
最悪な奴の所に招待されちまったみてーだ。
「さ、さびいっ……」
上空を結構なスピードで飛んできた為か、体がめちゃくちゃ震える。
「……って、お前ら!」
「あんちゃん!」
「ミナト、どうだった?」
ヒロハルに、チズルじゃねーか!
あのとんびは、俺を2人に会わせるために、運んで来てくれたのか。
状況からして、あのオカマの計らいか。
あざっす。
「こっちは、スラッシュさんの奥さんに会うことができた。 熊手でスラッシュさんを引き上げるっつってたわ」
「そうなんだ。 スラッシュさん、良かったわね。 こっちも話、まとまったわ」
チズルの説明によると、俺らは今夜、とある地下の会場で行われる、トカゲの2部リーグの決勝に殴り込みで参加することになったらしい。
「……ぶっつけ本番か?」
「会場まではここから車で1時間。 早く向かわないと、間に合わないわよ。 遅れたら、分かってるわね? 車は下に止めてあるから、急ぎなさい」
……バーガーにされちまうって話か。
ふざけんじゃねーぞ。
「ヒロハル、チズル、行くぞ!」




