チズルサイド4
入りなさい、という声に従い、扉を開けると、全面ガラス張りの部屋に、巨漢の男? がドレスを身に纏って立っていた。
そして、こちらを振り向く。
「あなたたちが、噂の人間かしら」
「おえっ、男が女の服着てる!?」
バカッ、自重しなさいよっ!
はぁ……
会って早々、冷や汗が止まらないわ。
「……ものを知らないクソガキ。 まあ、いいわ。 これはビジネスなんだから」
「ビジネス?」
「そうよ。 今夜行われる、トカゲの2部リーグの決勝に、飛び入りで参加して頂戴。 うまく会場を盛り上げる事が出来たら、1部リーグに人間のチームの枠を増やしてあげてもいい」
……破格の条件ね。
友好を深めるには、これ以上の手は無いかも。
でも、2部とは言え、相手はプロチームだ。
私たちみたいな素人チームとじゃ、勝負になるかどうか……
「この部屋いいね! あ、机のバーガー、食べて良い?」
ヒロハルは勝手に部屋を徘徊してるし。
そんな言葉は無視して、ミツマメが続きを話す。
「私も、こう見えても魔族だから。 会場を盛り上げることが出来なかったら、それなりに覚悟してもらうわよ?」
「……ただで帰れるわけじゃ、なさそうね」
「もちろんよ。 私、ニクドナルドっていう、バーガーショップのオーナーもやってるのよね。 だから、盛り上がらなかった場合、数量限定のバーガーのお肉になってもらうわよ。 資源の有効活用ってやつね」
じょ、冗談でしょ!?
絶対、ごめんだわ。
そう思った矢先。
「なら、もう1個、要求飲んでよ」
「……私に要求? 生意気ね」
ヒロハル、今の話、聞いてなかったの?
しかも、一体、何を要求する気?
「そっちの世界から、こっちの世界に紛れてきてる奴がいるんだ」
「……初耳、といいたいけど、きな臭い動きをしてる連中がいるのは、知ってるわ」
「もし、俺たちがお前の条件をクリア出来たら、そいつらに手を引くよう、命令してよ」
やっぱり、隠れてそういうことをしてる輩がいるのね。
海の上で遭遇したあの3人も、関係がありそうだわ。
「いいわ。 簡単な条件じゃないし、それ位ならしてあげる。 でも、あなたたち、まだ試合に出れないわよね。 タンクはどうするつもり?」
「あんちゃんがいる」
「当てはあるみたいね。 そいつの特徴を教えなさい」
私が慌てて教えると、ミツマメは奧の部屋へと入り、篭を手にして戻って来た。
その篭の中には、巨大な鳥が入っていた。




