チズルサイド2
恐る恐る扉を開けると、店の中は薄暗く、ギラギラした銀色のボールが天井からつるされている。
「メンパラにお越しいただき、ありがとうございます。 当店のご利用は初めてでしょうか?」
出迎えてくれたのは、顔立ちの整った男の人だ。
「えーと、はい」
「当店は、イケメンのみを取り扱っている高級メンズクラブとなっております。 指名される場合は、別料金でプラス5000ホーンを頂くことになっております。 フリーでしたら、30分3000ホーンで、延長する場合は30分5000ホーンとなっております」
ホーンっていうのは、ここの通貨のことよね……
別に、男の人目当てで来てるわけじゃないし、フリーでいいかしら。
フリーで、と言いかけると、相手はメニュー表のようなものを渡してきた。
「ご指名の場合は、こちらからお選び下さい」
メニュー表には、これまた顔立ちの整った俳優みたいな人がずらりと並んでいる。
ナンバー1から10までいるけど、必ずしもナンバー1が一番かっこいいとは言えないわね。
多分、性格とかの要素も絡んでくるだろうし、彼を気に入ってる人が投資しているのかもしれない。
でも、最初だし、とりあえず顔で選ぼうかしら。
「フリーでいいです」
「分かりました」
……!?
ちょ、ヒロハル!
勝手にフリーにしないでよ!
「目的を間違えちゃダメだよ、ねーちゃん」
「わ、分かってるわよ」
でも、ちょっとくらいいいじゃない。
同じ話を聞くにしても、イケメンに聞いた方がいいじゃない?
そんなことをごちゃごちゃ考えている内に、席に案内される。
しばらく待っていると、私の横に、男の人が座った。
「初めまして、羅琉苦です」
ラルクさん。
顔はまあまあかっこいい。
始めての来店だから、いい人を当ててくれたのかしら?
「あ、チズルです」
「チズルちゃんかぁ~、結構見た目若いけど、いくつ?」
「18です」
「マジ!? 俺と10コ違いじゃん。 そういえば、角は取っちゃった系?」
角?
そうか、ここの人らは、角を頭に生やしているんだった。
……本当のこと、言わない方がいいよね?
「俺ら、人間だから、角なんてないよ」
「えっ」
ヒロハル!
考えなしに本当のこと言うの、やめなさいよ!
ヒロハルを睨み付けるも、悪びれた様子を見せず、グラスの水を飲む。
ラルクさんは、目を白黒させている。
「マジで、人間? ……言われてみたら、雰囲気とか、似てるかも。 あ、夢の中で見た人間とね」
もう、こうなったらヤケだ。
私は、ここに来た目的、スラッシュさんのこと、そして、猫に導かれてここに来たことを話した。
「猫は、ただの捨て猫をみんなで面倒みてるだけだし、下の奴のこともしらねーけど。 ただ、うちのオーナー、結構すごい人で、トカゲの大会の主催とかしてんだ。 お前らが競技に参加したいってんなら、話だけでも通してみっけど?」
「ほ、ほんとですか!?」




