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メタリック・ファンタジー  作者: oga
第五章 魔族の都市
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故郷

 この世界の街には、それぞれ神社みてーな場所が設置してあるらしい。

街の安全祈願ってとこか。

もしかしたら、この街を興した奴らん中に、俺らの星出身者がいたのかもな。


「はあ、結構登るね」


 神社は、スノーポイントの一番端にあって、階段を登らねーと、そこには辿り着けない。


「ジャケット、いらねーな」


 外気は冷たいが、汗が滲む。

ようやく、最後の一段を登り終えた。

目の前には、寺とかで見慣れた木造の建物。

更に、賽銭箱と、上からつるされた縄がある。


「みんな、願い事は決まってるわね?」


 当然、無事に帰ってこれるように、だ。


「ああ。 じゃ、1シルバー、入れるぜ」


 3人それぞれ、1シルバーのコインを投げ入れると、2礼2拍手をして、目をつむる。

俺ら3人とも、ぜってー、無事に帰って来れますように。

願いを伝えると、俺は目を開けて、後ろを振り返った。

眼下に映るのは、スノーポイント。


「……」


 森の街でカスガさんが言ってた、この街を立ち上げた人らの苦労。

魔族のやつらから、この街を守る意義は、大いにあるハズだ。


「あんちゃん」


「……何だよ」


「ちゃんと願い事した? やらしいこと、考えてたらダメだよ!」


「ばっ、馬鹿ヤロ! お前こそ、今年こそ彼女できますように、とか考えてたんじゃねーだろな?」


 ヒロハルは、そ、そんなこと考えてないし! と何故か慌てた様子で答えた。

……人に振っといて自分が一番やましいじゃねーか!


「……2人とも、魔族の恋人でも作ればいいのよ」


 チズルが後ろから、シラけた目線を投げかけてくるのを感じる。

結局、俺も巻き添えかよ。


「俺はちゃんと願い事したっつの。 それより、港町に行く前に、どこか寄ってきてーとこ、あるか?」


 港町にはおっさん船長が向かっていて、先に船の手配を済ませておくらしい。

だから、到着次第すぐに乗船することになる。


「んー、強いて言うなら、カスガさんのとこかな?」


 カスガさんか。

身寄りの無いこいつらには、カスガさんが父親みてーなもんだ。


「じゃあ、カスガさんに挨拶してから、港町に向かうか」







 馬車を使って、森の街に下車。

大通りを歩いて、ツリーハウスを目指したが、そこに人影は無かった。


「みんな、スラムの方かな?」


 スラムに向かうと、焼けて無くなっちまったかつての住まいの跡地に、筋肉質な職人らが出入りしていた。


「新しい家を建ててんのか」


 木の柱で骨格が作られており、着実に工事は進んでいるみたいだ。

しばらく眺めていると、カスガさんが現れた。

日に焼けていて、こういう作業がいかにも似合っている。


「あっ、カスガさん、久しぶり!」


「ミナト、チズル、それに、ヒロハルか! 元気そうだな」


 この後、スラムの様子を聞いて、魔族の都市に向かうことを説明。

すると、カスガさんはチズルの方を見やった。


「……」


「どしたの?」


「随分、明るくなったな」


 そういえば、チズルは住まいが燃えた時、私も殺してよ、的な発言をしてたな。

カスガさんから見たら、昔と今とじゃ、言ってることが真逆だ。


「……毎日忙しくて、死にたいとか考えてる暇無くなっちゃったのよね」


 てへ、とチズルははにかんだ。

暇な時間があるから、余裕なことを考えちまう。

今は大変だけど、それを乗り越えながら生きてる。

だから、自然と前向きになれてるんじゃねーかな。


「……気を付けて行ってこいよ」


 挨拶を終えると、俺たちは馬車亭へと向かった。

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