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メタリック・ファンタジー  作者: oga
第五章 魔族の都市
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説得

声の主は、おっさん船長だった。

扉の裏に隠れて、俺らの話を盗み聞きしていたらしい。

キモイんだが。


「俺もその旅に同行していいか? お前らの保護者としてな」


「……いやいや、ドラゴン観光の方が忙しいでしょ」


「そっちはイッテツさんに任せてあっから、俺は手があいてんだ」


 おっさん船長は、目をキラキラさせながら、行っていいだろ、なあ、なあ? とすり寄ってくる。


「いや、エンリョ……」


「俺の知り合いに、船を持ってるやつがいんだ。 な、頼むって!」


 ……!

船を持ってるってのは、でかい。

こいつ、保護者よりか、今は変質者に近いが、ここは利用しておいた方がいいか?


「船持ってんだったら、借りろよ。 チャンスじゃねーか」


 流星の奴もそう言ってる。

……しゃーねーな。


「分かったよ。 つか、何でそんな旅に同行したがんだよ」


「何でって、俺は冒険者の端くれだぜ?」


 要するに、ただの冒険バカか。

何か企んでるわけじゃなさそーだし、まあ、連れてってやるか。


「……あれ?」


 気が付くと、部屋には流星の姿がなかった。

いつの間に帰りやがったんだ、あいつ。

……結構、人見知りだからな。


「ヒロハルとチズルんとこ、行くか」







 病室から出ると、風が冷たい。

俺は、ジャケットの襟を立てて、ヒロハルらの泊っている宿に向かった。

その時、向こうから知ってる女がやって来た。

チズルだ。

何か、久々会った気がする。


「……よう」


 俺は、目線を落として返事をした。

顔を直視するのがハズい。

多分、あの夢を見たせいだわ。


「ケガは大丈夫なの?」


「ああ、何事もねーっつか、ダイジョブだ」


 俺は、腕をぐるぐる回して、健在なのを示した。


「てか、ちょっと話があんだ」


 道の端に移動して、魔族の街に行く話をした。

チズルとヒロハルは、いつも俺の後をついて来るし、簡単に説得できるもんだと思っていた。

ところが……


「……それって、危ないんじゃない? 私は、やめた方が良いと思う」


 マジかよ。

そういや、ずっとブタの墓参りしてるっつってたな。

これ以上、危険な目に会いたくないってことか。


「あなたもヒロハルも、死ぬような目に会ってほしくないのよ。 帰ってこれる保証だって、無いんでしょ?」


 確かに、安心安全な旅ではない。

おっさん船長(変質者)もいるし、目的地は魔族だらけ。

無事に帰ってくるっつー保証なんて、できねー。


「……保証はねえけど」

 

 願掛けなら、できる。

俺は、背中に携えていた剣を抜いた。

うまくいけば、あの縁起物が出てくるはずだ。


「これ、十福神の剣っつって、おみくじが引けんだ」


「おみくじ?」


 流星に言われた通り、一度礼をしてから、剣を振る。

すると、狙い通り、剣の先からあるものが飛び出してきた。


「ゲコ」


 緑色の、ちっさいかえる。

無事かえる、だ。


「ゼッタイカエル、ゲコゲコ」


「どうだ?」


「……」


 どうだと言われても、みたいな顔でこっちを見ている。

……これは滑ったか。

チズルは、握った手を口元に当てて、ぷっ、と笑った。


「何が、絶対帰るよ。 はあ…… だったら、もっとちゃんとした所にお参り、行きましょ」



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