プラン
「俺のシナリオは、お前が向こうの世界に行くところから始まる」
流星は、都市へのルートの説明を始めた。
てっきり、基地に空いた穴を使うものと思っていたが、予想は外れた。
「基地に空いた穴じゃ、狭すぎて途中でつっかえちまう可能性がある。 最悪、そこを使うしかなかったが、ドローンを飛ばしてこの世界を探った結果、もう一か所、都市に通じている穴があることが分かった」
流星は、壁に貼ってある世界地図に近づき、海のど真ん中を指さした。
そして、ズボ、と人差し指で穴をあけた。
「……海に穴?」
「ご名答」
ふつーに言えや。
「途中までは船で行けるとして、その穴へはどうやって飛び込むんだ?」
「そのまま船で飛び込めばいい。 反転して裏側に行ける。 説明が難しいが、一枚の板の上にこっちの世界、その裏側に魔族の都市があって、その間に重力が発生してるって感じか」
……こいつ、説明下手過ぎか?
意味わかんねーけど、わざわざ気球とかを使って降りる必要はねーみてーだな。
「で、その先は?」
まさか、魔族と戦争をおっぱじめろってんじゃ、ねーよな?
「お前ら3人じゃ、魔族と戦うには戦力不足もいいとこだ。 オードリーの武装モードって手もあるが、もっといい案がある。 奴らが熱中しているスポーツ、トカゲに参加しろ」
「トカゲ?」
流星曰く、トカゲ、っつーアメフトみてーな競技があるらしい。
タンカー、キッカー、ゴーラーの3つに分かれて、トカゲの頭を持ってゴールラインを割れば得点っつー競技だ。
わざわざ、トカゲの頭をボールにする意味が分かんねーけど。
魔族っぽいからか?
んなことより、気になるのは役割だ。
「俺がタンカーで、ヒロハルがキッカー、チズルがゴーラーをやればいいって訳か。 リーグ戦みてーなのに参加すりゃいいのか? 人間がいきなり競技に参加できんのかよ」
「……わかんねー。 ただ、必ずしも奴ら魔族が、俺等のことに敵対感情を抱いているとは限らねーだろ」
……そいつを探せって話か。
何か、途方もねー気がすんだけど。
すると、流星は手にしていた剣をこっちによこした。
「手がかりがないわけじゃない。 こいつを使え」
それは、さっき見せてきた剣。
十福神の剣、っつったか。
「こいつは、俺が作った剣だ。 一礼してから素振りすることで、10ある縁起物のどれかが状況に合わせて出現する」
10の縁起物。
招き猫、銭亀、7福神、くま手、稲、升、小判、おかめ、小槌、かえる。
この内のどれかが現れて、助けてくれるとのことだ。
何か、神社にこういうおまけ付きのおみくじ、あったよな。
「俺のプランじゃ、魔族のチームといい試合ができりゃ、友好関係を築くことができんじゃねーか、って思ってる」
……なるほどな。
バトって戦争になるよか、そっちの方がぜってーいい。
もし、そのプランがうまく行けば、戦争は一時休戦だ。
「面白そーじゃねーか」
いきなり、室内に別の声が響いた。




