思わぬ客
病室に来てから一週間。
その日、俺はああでもない、こうでもないと、ベッドの上でストーリーを考えていた。
「……」
最初にトカゲに襲われた話を書いて、次にネズミに襲われた話。
次に、クエストをこなしてって……
何か、書けそうな気がしてきたわ!
頭ん中で話しがまとまり始めた、その時だった。
ガチャリ、とトアノブが捻られ、扉が開いた。
俺は、ヒロハルかチズルだろうと思って、慌てて紙とペンを布団の中に隠した。
「この病室で合ってたか」
やって来たのは、流星。
まさかの訪問客だ。
「……お前かよ!」
痺れを切らして、とうとうこんな所まで来やがった。
俺は身構えた。
こいつ、俺を奴隷だと思って、殴る蹴るは当たり前だからな。
まあ、今は負ける気はしねーが。
「……コアは、まだ集められてねーよ」
「オードリーを介して、お前が何してんのか、ずっと見てた。 ……はっきり言うわ。 俺は、お前の冒険の続きが見てー」
……何だと?
「だから、コアのことはしばらく忘れろ。 今、オードリーがこの街を襲った奴らについて、調べを進めている」
「待てよ、一体、どういう風の吹き回しだよ」
「……お前の冒険は、俺の一番の退屈しのぎなんだよ」
退屈しのぎ?
何で、俺がこいつの退屈を紛らわさなきゃなんねんだよ……
でも、ずいぶん態度が違う。
前に会った時は、それこそ奴隷みたいな扱いだったのに、今は対等というか、そんな感じだ。
「魔物共がこの街を襲ったのは、コアの影響だけじゃねー。 シロクマは理性を保ったままだったし、恐らく、裏で糸を引いてる奴がいた」
流星は、オードリーに指示を出して、雪原地帯にある基地の穴を探るよう命じたらしい。
その穴は、入り組んだ下水道の様になっていたが、その先で、とある光景を目の当たりにしたとのことだ。
「ここよりずっと栄えた都市。 角を生やした奴らの都市だ」
角を生やした奴?
……そういや、気を失う前に、そんな奴を見た気がした。
「どうも、こいつらが地上に侵攻するために、今回の騒動を起こした可能性が高そうだ。 メロンパン、ヒロハルとチズルの3人で、角を生やした奴らの都市に行け」
そういうと、手に持っていた剣を、俺につきだしてきた。
「コアの塊から作った剣、十福神の剣だ」
「は? 待てよ、話を勝手に進めんな」
俺はまだ納得してねーぞ。
そもそも、そんな所に行って、何をどーすりゃいいんだよ。
「……頼む」
「……!」
驚いた。
流星のやつが、そんなことを言うとは。
「お前は俺の分身だ。 お前が活躍してるのを見ると、スカッとすんだよ」
……そういうことかよ。
要するに、流星は俺に自分を重ねて、ずっとモニターを見てたって訳だ。
「なら、お前の筋書きを聞かせろよ」
それ次第だ。




