魔法
街に入る手前で船を止め、俺たちは外に出た。
「っし、行くぞ、みんな」
向かう方向とは逆行して、街の住人が、悲鳴を上げながら走ってくる。
その中に、血まみれの兵隊が混ざっていた。
「はあっ、はあっ、ミナト殿! ミナト殿ならば…… ぐっ」
「おい、大丈夫かよ!? 状況はどうなってんだ?」
「街の住人の避難と、生物との交戦に分かれておりますが、とても我々では……」
敵は訓練された兵隊より強いらしい。
っつーことは、俺らも連携を取らなきゃ、倒せる相手じゃないってことだ。
「みんな、単独行動は避けろよ。 1匹に対して、全員で囲って戦うんだ」
「了解!」
街の中枢に向かうにつれて、状況が悪化していくのが分かった。
建物には火の手が上がり、そこら中に人の死体が転がっている。
それに、血の匂いも濃くなってる気がする。
この先だ。
この先で、悲鳴やら咆哮が聞こえてくる。
一旦立ち止まり、ブタに言った。
「敵を見つけたら、まずは俺たちで同時に斬りかかるんだ。 いいな?」
「わ、分かった……」
背中の剣を掴んで、俺は血の霧の中へと突っ込んだ。
「……!」
複数人の兵隊の亡骸の中心に、見覚えのある奴が立っていた。
身長は3メーターくらいの、全身真っ白い毛に覆われた生き物。
「……おや」
しろくまジャケットの、シロクマだ。
一瞬、俺の足が止まった。
「気をつけ……」
チビが後ろから叫んだが、遅かった。
俺はとっさに剣を前に構えたが、気づくと地面に横たわっていた。
シロクマは、俺を突破した後、チビを殴りつけた。
チビはどうにか盾でガードしたものの、上から無慈悲に殴り続けられる。
「ちっきしょ……」
肩を思いっきり爪でえぐられたっぽい。
感覚がねーけど、地面が血で真っ赤だ。
その時、ヒロハルがパチンコで白い粉の袋を飛ばした。
「やった!」
顔面に命中。
しかし、ダメージはなく、逆に相手を引き付ける結果になる。
「……小麦粉は食べ物ですよ」
「ヒロハル、逃げてっ」
チズルが、短剣を構えて前に出る。
ダメだ、おめーも逃げろっつの!
シロクマが爪を振り下ろしたが、猛スピードでオードリーがチズルの前に躍り出た。
ガアン、という音が鳴る。
「オードリー!」
「馬鹿野郎、お前らは逃げろ」
オードリーが体からスパイクを出し、突進しようとした時、動きが止まった。
「なんだ、ありゃ!?」
オードリーの体に、氷が付着して、地面に貼りついている。
「魔法、ですよ。 こんなこともできます」
シロクマの手には、氷の刃が握られている。
俺は激痛に耐えながら、前に踏み出そうとしたが、間に合わない。
「チズル、ヒロハル、逃げろーーーーーっ!」
氷の刃が振り下ろされた。
血が辺りに飛び散る。
「……」
チズルはヒロハルをかばっている。
そのチズルの前に、ブタが立っていた。
ブタが、2人を守ったのか。
ブタの体からは、血がシャワーのように吹き出し、その場に崩れ落ちた。
「ブタアアアアアアアッ!」
ブタを、殺しやがった……
ふざけんじゃねえ……
これ以上、仲間を殺されてたまるかよ!
「うおおおおおおおおおっ」
俺は、シロクマに斬りかかるべく、感覚のない手で剣を握りしめた。
刺し違えてでも、あいつを殺す。
だが、剣が相手に届く前に、氷から抜け出したオードリーが、俺の前にやって来た。
「さっき、メタル通りからコアを拝借してきた。 武装モード、いけるぜ」
……は?
なんだ、そりゃ。




