災害
俺たちは一人ずつ、体重の軽い順にロープを登り始めた。
最初はヒロハル。
次に、チビかチズルかで揉めたが、盾の重量を考え、チズルが2番手となった。
弓を背中に担ぎ、登る。
「よし、次は俺だな」
俺は、両手両足を使って、シャクトリムシみたくロープをよじ登った。
幸い、高さは7.8メーターってとこで、学校にある登り棒くらいの高さだ。
「……ブタが心配だよな」
あいつ、ぜってー逆上がりとか出来ない運動音痴タイプだと思うわ。
まあ、剣術を習ってたみたいだし、腕の力がありゃ大丈夫か。
「っし」
俺は、ロープ伝いに崖の上へと這い上がった。
「後、2人だな」
崖の上のポ〇ョならぬ、崖の上のオードリーが呟く。
結局、下で30分くらい躊躇していたブタも、泣きべそをかきながら、どうにかよじ登って来た。
「ったく、世話の焼ける……」
最後に、おっさん船長が下から上がってきた。
「全員、無事だな」
一人も欠けていないのを確認すると、ようやく俺の緊張は解けた。
雪原に落ちたメタルの件だったり、ドラゴンを見世物にする話だったり、これからやるべきことはかなり多いが、まずは帰って眠りてーわ。
近くには、雪かき丸と似たような船が止めてある。
「これに乗り込めばいんだよな?」
オードリーに尋ねると、船の横にいた兵隊みたいな格好をした男が、小走りで近づいてきた。
「ミナト様、問題が発生しました」
……こいつ、何で俺の名前知ってんだ?
しかも、問題?
「何だよ、問題って」
兵隊風の男は、強張った表情のまま、口を開いた。
「数時間前、上空をメタルが飛来し、この地に落ちた影響で、街にいた生物が凶暴化、現在、未曾有の災害となっております」
……!
何だって!?
「街が、戦場に?」
「はい、凶暴化した生物は我々では手に負えず、死者は多数。 そこで、野党ゴブリンを倒したチーム・ミナト様の協力が必要です」
……そういうことか。
俺たちは、野党ゴブリンを倒したことで、多少なり有名になったらしい。
「ねぇ、ハナもスノーポイントよね?」
……そうだ。
駆けつけねーと!
「おめーら、街に急ぐぞ」
「う、うん……」
俺たちは、急いで船に乗り込み、スノーポイントへと向かった。




